さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

闘う人の心

2009-03-10 18:50:51 | 辰吉丈一郎
辰吉、タイでの二試合目は7回TKO負け。世界戦以外では初の黒星となりました。

相手はタイ1位とのことですが、少なくとも国際的なレベルでどうこうという選手ではないはずですし、
往年の辰吉ならば、2、3回での片付け仕事、という試合になっていたことでしょう。

動画を見ていないのですが、ネット上で散見した写真で見た印象でいえば、
倒れかけた時の表情などは、本人の感覚ではよけたつもりのパンチがよけきれずに打たれ、
それによってよろめく自分の身体を制御出来ず狼狽している、という様子でした。
つまりは、典型的なオールドタイマー、ロートルボクサーの姿がそこには見て取れました。

以前も少し書いたとおり、今の辰吉が上位ランカーだチャンピオン・クラスだと言わずとも、
「まともなプロのボクサー」と闘って勝てる状態にあるとは、誰も思っていなかったでしょう。
そして今回、まさしくその通りの結果が出たわけです。
にもかかわらず、辰吉は「まだやるのかと思う人が大半やろう。けど、それが辰吉や」と、
なおも現役続行の意志を語っているそうです。


「闘い続ける人の心を 誰もがわかっているなら 闘い続ける人の心は あんなには燃えないだろう」


昔、こんな古い歌がありましたが、今回の辰吉のコメントは、傍目には理解不能です。
おそらくこれまで支援してきた周囲の人々が、なんらかの形で説得するのでしょうし、
時間が彼の心を、今とは違う方向へと導いてくれることを願いますが。


これまた以前も書きましたが、辰吉丈一郎の試合結果をTVの生中継でなく、
こんな形で知らされることがあるとは、かつてはまったく想像できないことでした。

若き日の、誰もを一目で魅了し、驚愕させたその才能は、眼疾と敗戦、引退と再起、
強いられた引退制約と海外渡航、その他諸々、嵐のように降りかかる苦難との闘いの果てに、
JBCの与えた、欺瞞に満ちた特例ライセンスの失効を待ってのタイ渡航という、
誰もが想像しなかった形で、その終焉を迎えようとしています。

彼がこのような形での再起を選んだ影に、様々な事情と、彼自身の譲れない思いがあったことは、
報じられている範囲の話だけでも充分に想像でき、ある程度は理解もしているつもりでした。
しかし、それでも、かつて彼の才能に魅了された全ての人々にとって、それはあまりにも悲しく、
受け入れがたい運命なのです。
その果てに敗れて、なおも「それが辰吉や」とは、誰も思ってはいないのです。
そのことだけは、辰吉丈一郎にもわかってもらいたいと思うのです、が...


「闘い続ける人の心」のありよう、その狂気とも言える凄まじさの前に、
私は無意味な言葉を連ねているに過ぎず、ただ、打ちのめされたような気持ちでいます。
コメント (5)
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