さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

心が無いから悲劇が起こる

2009-03-24 22:25:25 | 関東ボクシング
日本ミニマム級1位の辻昌建選手、今朝、亡くなられたとのことです。
ご冥福をお祈りします。

先日の試合、辻選手の様子を見ていて、9R終了で棄権すべきだと感じました。
そして、セコンド陣がそういう決断をしないだろうこと、
レフェリーが試合を終了させないであろうことも、同時に予想しました。
加えて、10Rの悠長なレフェリング。結果は悲劇となりました。

恐ろしいことを敢えて書きますが、見慣れた光景でした。
私はあの試合をTVで見ていて「またこんなことやっとるわ」と思ったのです。

JBCのレフェリー達の中には、いつも、赤コーナー側(=主催者側、大手ジム側、日本側)の選手が
劣勢に陥り、ダメージを負っていても、ぎりぎりまでその選手の勝利の可能性を探る者がいます。
そしてその選手は、余計なパンチを受けてさらにダメージを受け、その試合は壮絶な終焉を迎え、
時に深刻な事態を招きます。

日本人同士の試合を例に引くと「また地方依怙贔屓の奴が、中央のボクシングに文句つけとる」と
思われてしまうので、日本人対外国人の試合の例を挙げますが、
私が会場で直に見たなかでもっとも酷かったのが、宮城誠vsロデル・オライス戦。
映像で見たなかでいうと、フェデリコ・カツバイvs藤掛真幸戦です。

共に、レフェリーがダメージ甚大な日本選手に対し、ぎりぎりまで試合を続行させ、
そして試合は目を覆いたくなるような「昏倒」で終わりました。
側頭部にオライスの左ストレートをモロに受け、目線も定まらないまま追撃される宮城。
相手と正対出来ず、自らコーナー際へふらふらと後退したあと、打ちまくられた藤掛。
悪夢のような光景でしたが、当該のレフェリーが何か処分されたとか、公式に注意を受けたとか、
そういう話は一度たりとも聞いたことがありません。

つまり、JBCという組織は「それでよし」という認識の元、日々の試合を管理運営しているのです。
そして、その心無さがまたしても悲劇を生んだ。そうとしか言いようがありません。


組織を批判しても、レフェリーやセコンドを批判しても、仕方がない。
そういう意見もあると思います。それは、人の気持ちとしては、わかる話です。

しかし、それだけでは済まない話もあると思うのです。
この10数年だけでも、何度、こんなことが起こっていますか。
結果が事故になっていないだけで、このような危うさを感じる場面が、何度あるでしょう。
事は単にストップのタイミング云々、棄権すべきタイミングの話だけではありません。
公正に、厳密に、情実なしに正しい試合運営をしようという意志の希薄さが、
こういう悲劇を招いているのです。

先の試合において、もし、ダメージ甚大で劣勢だったのが、辻選手ではなくて
対戦相手の方だったら、あの試合は早々にストップされていた、と、私は確信しています。
問題はレフェリーの判断の正誤にはありません。それ以前に問題があるのです。
そこから目を背けていては、この問題の本質を見落とすことになります。


日本のボクシング界は、多くのボクサー、関係者の、膨大な献身によって支えられています。
しかし、頭数で言えばごく一部の、しかし業界の「支配体制」の人々による、
あまりに心無き数々の所業によって、日本のボクシングは、日々痩せ細っているように思えます。

悲劇から、人が何かを学ぶことは大切なことでしょう。
しかし、人ひとりに人生はひとつ、辻選手の命は、もう戻りません。

ボクシング界は今度こそ、根本的な転換を実現しなければならないでしょう。
繰り返しますが、単にレフェリングの基準云々だけの話ではありません。
辻選手への追悼のためではなく、せめてもの「償い」として。

コメント (13)
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