さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

さらば、テリーブレ

2006-11-20 23:51:54 | 話題あれこれ

ボクシングを好きになった頃、憧れたのはラテン、カリブのスターたちでした。
日本にも、辰吉みたいなトンデモを筆頭に、才能溢れるボクサーがいて、
散発的にではあっても、芳香を嗅いで、それを楽しませてはもらっても、
やっぱ本場モンというのは違うんですよね。当たり前ですけどね。

でも、ルベン・オリバレスやの、カルロス・サラテ、ルペ・ピントールに、
カリブの天才バズーカ・ゴメスが立ちはだかり、
それを心肺機能のお化けサルバドル・サンチェスが...とか言われて、
それをビデオで鑑賞しても、それをリアル・タイムで
楽しんだわけじゃない身にはやはり遠い話なんですね。

次は誰が誰とやるのか、いったいどうなるのかな、というワクワクを、
同時代に生きるファンとして感じて、それを見る楽しみ。
荒っぽくて、でも巧くて、でもやっぱどこかアブなくて、
火薬の匂いがする奴らの、くぐり抜けてきた修羅場のすごさを匂わせる闘い。
そういう興奮を、ボクシングファンになって以降、大いに楽しんできました。

ロサリオvsカマチョのプエルトリカン対決、
ロサリオvsチャベスの砂漠の決闘、
チキータvsカルバハルのチョーウルトラスーパー大逆転KO、
大橋秀行をずたずたにしたロペス師匠にも痺れ上がりました。

で、その後に王国メキシコを引っ張ってきたチャンピオンの末裔が、
マルコ・アントニオ・バレラと、昨日負けたエリック・モラレスなんですね。
国境の町ティファナから出た「エル・テリーブレ」恐怖の男。

辰吉を二度破ったダニエル・サラゴサの腹を「ぐりっ」とえぐり取ったような
切れ味より痛みを表現した右ボディストレートでのKO勝利。
川嶋郭志を苦しめたホセ・ブエノを叩き伏せた相打ちの右のかぶせ打ち。
メキシカンの観衆の野蛮な興奮のど真ん中で、
猛毒ジュニア・ジョーンズをすっ転がして勝利、
そして宿敵バレラとの、律儀にもことごとく階級を変えての3試合。
パッキャオ初戦での、懐の深さを生かしたポイントアウト。

本当に、どれもこれも面白い試合ばかりでした。
サラテやサモラ、ゴメスにサンチェスといった70年代の英雄を
「体験」していない私は、彼とバレラを中心に回ったフェザー級近辺の
トップシーンを、大いに楽しませてもらいました。

別にモラレスの大ファンってわけじゃないんですけどもね。
ぎくしゃくしたスタイル、懐の深さと体格に対する依存度が
高いといえばいえるボクシング。
でも、モラレスとバレラは、私がボクシングファンになりたての頃、
伝説的に語られていた70年代の興奮を
いわば疑似体験させてくれたような気がするのです。


今日、放送された試合を、情報シャットアウトで見ました。
3Rの最後のダウン、もう立とうとしなかったモラレスの姿を見て、
普通なら腹の立つところかもしれないのに、そういう感情はありませんでした。
もうええよ。充分や。ただ、それだけを思いました。

コメント (3)
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