昼休みの喫煙所。
非常階段で紫煙を燻らせていると、元気な声が聞こえてきた。
先輩N課長が
「あ、クソガキどもはひょっとして今日から春休みなんじゃねぇのか」
と指摘。
下の道路をお道具箱などを持って元気に走る、赤白帽を被った少年少女たちがちらほら。
「羨ましいですね、クソガキ。私も休みたいです」
と紫煙をふかす。
春休みというと必ず思い浮かべるのが中学2年生から3年生に上がるときの春休みだ。
教科ごとの教諭が変わるかもしれなくて、私の幼い胸はドキドキ高鳴っていた。
当時私は、2年生から教わった英語の先生(男性)が好きだった。
あれほど人を好きになることは今後ないだろうというぐらい好きだった。実際、卒業後もずっと好きだった。
2年生の初め、私の英語の偏差値は42だった。でも先生を好き過ぎて2年の学年末テストでは60に達する努力も厭わないぐらいに大好きだった。ストイックで妥協を許さない、15歳年上の銀縁眼鏡を掛けたの先生。神経質そうに咳払いをするときに揺れる喉仏が絶賛思春期中の私を刺激した。心を震わせつつ、先生をびっくりさせたいがために、日々勉強をしていた。
授業中、雑談で話す彼のプライベート(ジブリ作品では何が好きか、など)を逐一メモっていたことはここだけの秘密。
彼はあの春休みの前、事件を起こして新聞に名前が載ってしまった。
「先生、異動しちゃうのかな。もう彼に英語を教わることはないのかな」
2年生から3年生になるあの春休み、私の胸はその不安でいっぱいだった。
しかし、辛うじて3年の英語も受け持ってもらえることになり、その後一年間は受験生だったにもかかわらず、ひたすらハッピーであった。
時々思い出す、あの、思いつめた春休みを。
春休みの淡い思い出は、昼休みの煙に消えていった。


非常階段で紫煙を燻らせていると、元気な声が聞こえてきた。
先輩N課長が
「あ、クソガキどもはひょっとして今日から春休みなんじゃねぇのか」
と指摘。
下の道路をお道具箱などを持って元気に走る、赤白帽を被った少年少女たちがちらほら。
「羨ましいですね、クソガキ。私も休みたいです」
と紫煙をふかす。
春休みというと必ず思い浮かべるのが中学2年生から3年生に上がるときの春休みだ。
教科ごとの教諭が変わるかもしれなくて、私の幼い胸はドキドキ高鳴っていた。
当時私は、2年生から教わった英語の先生(男性)が好きだった。
あれほど人を好きになることは今後ないだろうというぐらい好きだった。実際、卒業後もずっと好きだった。
2年生の初め、私の英語の偏差値は42だった。でも先生を好き過ぎて2年の学年末テストでは60に達する努力も厭わないぐらいに大好きだった。ストイックで妥協を許さない、15歳年上の銀縁眼鏡を掛けたの先生。神経質そうに咳払いをするときに揺れる喉仏が絶賛思春期中の私を刺激した。心を震わせつつ、先生をびっくりさせたいがために、日々勉強をしていた。
授業中、雑談で話す彼のプライベート(ジブリ作品では何が好きか、など)を逐一メモっていたことはここだけの秘密。
彼はあの春休みの前、事件を起こして新聞に名前が載ってしまった。
「先生、異動しちゃうのかな。もう彼に英語を教わることはないのかな」
2年生から3年生になるあの春休み、私の胸はその不安でいっぱいだった。
しかし、辛うじて3年の英語も受け持ってもらえることになり、その後一年間は受験生だったにもかかわらず、ひたすらハッピーであった。
時々思い出す、あの、思いつめた春休みを。
春休みの淡い思い出は、昼休みの煙に消えていった。

