非国民通信

ノーモア・コイズミ

賃金の上がらない国に未来は無し

2018-07-15 23:02:06 | 雇用・経済

「日本より中国のほうが待遇いい」と中国の介護現場
「外国人の介護人材争奪戦」に「賃金低すぎて集まるわけない」の声(キャリコネニュース)

人手不足の介護現場で、アジア人材の奪い合いが起きている。介護人材は7年後の2025年には34万人不足するとみられており、積極的に外国人を採用する介護施設が急増している。

7月11日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)がその現状を紹介すると、視聴者からは「人材争奪戦と言いながら待遇改善しない(できない、やらない)」などと落胆の声が上がっていた。(文:okei)

(中略)

一人っ子政策で高齢化が急激に進む中国は、やはり介護人材は貴重な存在だ。中流層が入所している中国・上海の介護施設では、介護スタッフの月給は8~10万円で、上海市の平均と同じ水準だという。しかも、食事と住居は無料で提供される。中国の施設責任者は、「日本の介護士の給料は低いと聞いている。中国の方が待遇の水準が良いと思う」と語った。耳の痛い話である。福祉の専門家は「貨幣価値の差がだんだん無くなれば、(中国人材の来日は)難しい」とコメント。今後日本は、職場として選んでもらえない恐れがあるのだ。

 

 日本人がやりたがらない低賃金の仕事を負わせようと、外国人労働者の受け入れを企む人々は少なくないですが、その将来はどれほどのものでしょうか。現状を見るに、いつの日かベトナムの日本大使館前に実習生像が建てられたりしてもおかしくないような非人道的待遇も目立ちますし、流石にそれを恥じる人も増えてきました。権力を持った人々ほど外国人労働力の受け入れに積極的な傾向があるものの、上記引用元でも語られている通り「中国の方が待遇の水準が良い」ケースは今となっては珍しくありません。「(日本が)職場として選んでもらえない恐れ」とは当然です。

 かつては中国の「親日派」ブローカーが自国民を騙して日本に売り飛ばすことも多かったのでしょうけれど、そうした人々に取ってすら日本は魅力的な市場ではなくなってきていると言えます。外国人実習生の主要な供給元は中国からベトナムへと既に推移したわけですが、ベトナムにしても経済発展は続いている、ベトナム国内で働くことで得られる給与も増え続けていますから、いずれは「ベトナムの方が待遇の水準が良いと思う」みたいな認識が広まる可能性は高いです。

 そこでさらなる(日本より)賃金水準が低い国を、新たな人材の供給元として開拓していくのが日本の一つの将来像なのかも知れません。未開の地平を切り拓き、より安価な人材という資源を発掘するわけです。実際、中国やベトナムが発展しても、まだまだ貧しい国はあります。ウナギ資源が枯渇する都度、新たな調達先を探し続ける商社マンのように、人的資源をもまた新たな採掘先を見つければ良いのだと、実質的にそう考えている財界人は多いのではないでしょうか。

 90年代以降の日本の「改革」モデルは、人件費削減こそが事実上の終着点となっているわけです。一見すると90年代以降は(日本より)人件費の安い国に急追され(一部は追い越され)た時代ではあります。ならば日本経済が復活するには、「後進国」に負けないように人件費を安くしてしまえば良いのだと、結果的にはそう考えられてきたと言えます。ところが人件費抑制を続けた日本経済はその世界的地位を低下させるばかり、一方で人件費の上昇が続く国は今もなお発展が続いているのです。

 まぁ海外植民地の安い労働力を酷使することで利益を得る、そうしたビジネスモデルが成立していた時代もありました。とはいえ21世紀に発展している国家/経済圏が採用しているモデルは、今や全く別物です。しかし沈み行く日本は――相変わらず安い労働力を求め続けるのでしょうか。その国における賃金水準の低さは、海外から見た魅力の低さでもあります。賃金の上がらない国が優秀な人材を外から確保できることはないでしょう。言うまでもなく賃金の上がらない国では消費者の可処分所得も増えませんから内需も増えません。賃金の抑制がもたらすものは、緩やかな死だけです。


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