非国民通信

ノーモア・コイズミ

こうなったらダム建設ルネサンスだ

2011-08-16 23:10:06 | 社会

太陽光、強引商法…玄関居座り・即日契約強要(読売新聞)

 東京電力福島第一原子力発電所の事故や中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の全面停止で再生可能エネルギーが注目を集める中、訪問販売業者による住宅用太陽光発電システムの強引な営業が相次いでいる。
 
 この間、国民生活センターと地元の消費生活センターに愛知、岐阜、三重、静岡の東海4県から寄せられた相談件数は前年同期の約1・9倍に上った。即日契約を強要するなど悪質なケースもあり、国民生活センターは注意を呼びかけている。

 求人の多さを見る限り、やっぱり押し売り業界の二本柱はマンション投資と通信回線のようですけれど、ソーラーパネルの押し売りもまた昔から根強く生き残っていますね。昨今の電力危機に加えて、太陽光発電に妙な期待が寄せられていることを鑑みれば、まぁ将来有望な世界なのかも知れません。あまり良心に悖る仕事はしたくありませんけれど、あまり仕事を選んでもいられない身としては視野に入れておかねばならない分野でしょうか。ともあれ強引な営業は元より、営業の売り文句通りの性能を発揮しない、実際の発電量が事前の説明と大きく異なるなどと震災前から消費者センターに苦情が寄せられることも少なくなかったのが家庭向け太陽光発電というものです。消費者センターや国民生活センターの仕事も増えそうですね。

 家庭向け太陽光発電もさることながら、もっと規模の大きい風力発電でも期待通りの結果が出ることは稀なようで、これまた「事前の説明と違う!」と訴訟に発展することもありました(参考)。適度な日照が得られるか、適度な風が吹くかは原子炉と違って人間がコントロールできるものではありませんので、ほとんど運任せにならざるを得ないところもあるわけです。まぁ不安定な発電手段でも、これまでの常識を覆すような革新を期待して投資を続けるのは悪いことではないのかも知れません。ただ将来に期待ができるかどうかと、「今」の段階でアテに出来るかどうか、その辺は分けて考えてほしいと思います。

 一年中を通して同じような風が吹いていれば、もうちょっと具合は良くなるのでしょうけれど残念ながら日本の気候は変動が激しいです。あるいは多国間で送電網を共有することで「風が吹いている地域」と「風が止んでいる地域」をトータルで扱うことができるのなら安定性は格段に増すはずですが、困ったことに日本は東日本と西日本ですら電力の融通が難しい地産地消型となっています。最後の手段として隣の原発大国から電力を送ってもらうことで不安定な発電をカバーするという手がありますけれど、日本の隣の原発大国とは海によって隔てられています。結局のところ、お天気任せの発電手段は日本には向かないと考えざるを得ません。

 そもそも、風力や太陽光などの「再生可能エネルギー」は不安定さの故に必然的にバックアップとなるべき安定した発電手段を要求するため、化石燃料発電を減らす役には立っていないとの指摘もあります。「再生可能エネルギー」はビジネスチャンスにはなっても化石燃料発電の代替にはならない、風が止んで日も射さなくなったときでも電力を賄うためには、結局のところ火力や原子力などの安定したエネルギー源を残さなければならないわけです。輸出向けの「商品」として電力を扱うなら、発電できたときに売却して利益が上がれば良しということにもなるのかも知れませんが、国内の住民や産業にとってのインフラとして電力を見るのなら「常に必要量を賄えること」が求められます。そのためにはどうしても、安定したエネルギー源を選ぶ他ないのです。

 俄に太陽光や風力が持ち上げられている昨今ですが、むしろ思い出されるべきは水力発電ではないでしょうか。何も「新エネルギー」に拘る必要はありません。むしろ従来からある確立された技術を再評価してみるべきです。水力であれば、大規模かつ安定した電力が得られますし、水資源が豊富で河川の落差も大きい日本の地域特性にもバッチリ適合します。もう開発され尽くして水力発電所を建てる余地は少ないとの意見もありますが、その辺は石油やレアメタルと同じで、投入可能なコストに応じて開発の余地は増えるはずです。ちょっと掘るだけで出てくる石油資源が枯渇して石油価格が上昇すると今度は地中や海底深くから汲み上げた石油が市場に現れたように、たとえ低コストな水力発電所の立地が開発され尽くしていたとしても、原子力発電「以外」の発電手段であれば高めでもコストをかけることが許されるようになれば、水力発電所に使える用地は増えることでしょう。

 そんなわけで、原子力ルネサンスがダメというなら今度はダム建設ルネサンスを提唱したいところです。少しばかり高コストでも(太陽光発電のコストを考えれば何だって安いものです)脱原発のため、新たにダムを造って水力発電所を建てましょう。今後ますます争奪戦が激しくなるであろう化石燃料への依存度を減らし、かつCO2排出量も減らし、加えて原発まで減らすというのなら水力発電の増強は避けて通れません。これからは、ダム開発ルネサンスです。

 でもまぁ、ダム開発みたいな大型公共事業を伴う政治は今なお国民の最も嫌うところだとしたら、先行きはなおさら難しく思えます。「(古い)自民党をぶっ壊す」と称して小泉が喝采を集め、その後に台頭した民主党もまた「古い自民党」を敵視することで支持を得てきた、そういう時代にダム開発を進めて古い自民党の象徴とも言える大型公共事業・土建型再分配を再開しようなどとあらば、どの政党であれ次の選挙で惨敗を喫するであろうことは想像に難くありません。まぁ土建型の再分配だって非効率であったり、不平等な部分もある、批判の余地は相応にありましたけれど、かといって「不十分な分配」を批判した結果として「再分配の否定」みたいな状況に陥っているのが現在ではないでしょうか。それに比べれば「不十分な分配」に立ち戻るだけでも少しはマシになるように思うのですが……

 加えて八ッ場ダム建設でも原発の誘致でも、今は反対派に譲渡してもらう対価として補助金などの「旨み」を持たせてやるようなやり方が「札束で頬をひっぱたくやり方だ!」と言って声高に糾弾される時代でもあります。その代わりに、反対の立場を抵抗勢力だの利権を守ろうとしているだのとレッテルを貼り、相手の意見には一切耳を傾けないような振る舞いが好まれてはいないでしょうか。反対派を悪玉として一蹴する、ある意味で「正義の拳を振りかざす」手法が近年の主流だとすれば、まぁダム開発を進めるにしても近隣住民との軋轢は過去のそれと比しても大きなものになりそうです。もうちょっと上手に利害調整しようと、そういう志向を持った政治に転換してくれないと可能なものも不可能になってしまいます。もっとも反対派にも旨みを持たせるような、そういうやり方に対する反動勢力が政権を握って久しいだけに、今さら望みを抱くのすら贅沢なのかも知れません。

 

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13 コメント

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Unknown (やすお)
2011-08-17 07:00:51
内に、そして外に敵(非難点)を見出だす・・・(そして、進まない!
そんな政治手法、世界の人たちはどう思ってるんだろう。
日本には政治をやる人たちがいないのではないか、と思われても仕方ないと思います。


ベストよりベターを目指すだけでも進歩してるだけマシだと思うんですけどね。(それができないからでかい声だけが通るのかな。
領土問題でもそうですけど。
なんで極端なんだろうなぁ。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-08-17 11:10:46
>やすおさん

 何と言いますか、世間が政治に求めるのが「利」ではなく「正義」になっているような気がしますね。結果、(その人なりの)正義を振りかざし、何か悪者を見つけて断罪するのが政治の役割になってしまい、実利の方が蔑ろにされてしまうわけで。
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Unknown (シトラス)
2011-08-17 19:06:14
少なくとも、「原発のせいで水力発電が殺されている」と主張している人には受けるかもしれませんね。
それはともかく、愛国の根拠の一つに「日本には美しい四季がある」という言葉があります。
これは裏を返せば日本では自然エネルギーの安定供給が困難であるという欠点だと言えるでしょう。
やはり何事にも一長一短があるものですね。
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ダムというだけで・・・ (ヘタレ一代)
2011-08-17 19:34:33
水力発電もかつての古い設備をもつダムを建て替えたりするだけで、結構な発電量の増加が見込める気がするのですが、多分ダムの名を出すだけで
ダム=無駄=排除
となり、多くの人がそこから先は意見に耳をかしてくれない可能性がありそうですね。
逆に砂が詰まって動かなくなり、かつもう使用の見込みがないダムを自然に還すことも、無駄をなくせて結構大きな公共事業になりそうですが、それもダムがらみは全部無駄だからだめとか言われそうです。
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裏があります? (Mary-Jane)
2011-08-17 20:35:52
非国民さんが、自然エネルギー推進に豹変するとは!  

裏があるでしょう?

水力は現実的ですね。

なるほど! 日本人は、無いものねだりが出来るほどぜい沢になってきたので、
目の前にある解決策にも自分で手を縛ってしまっているのですね。

私も、「正義」と「実利」の両方が欲しい!!のは確かです。 

 



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Unknown (非国民通信管理人)
2011-08-17 23:34:13
>シトラスさん

 そうなんですよね、四季がある=季節によって気候の移り変わりが激しいと言うことで、これは風量なのかも知れませんけれど、残念ながら風力や太陽光発電を考える上では不安定さを増す要因ですから。

>ヘタレ一代さん

 実際、今でも水力の発電量は原発のそれに比肩するのですが、どうしてもダム開発となるとイメージが悪いんですよね。ダム開発にも負の側面はあるのでしょうけれども、それで全否定されるようなことはあって欲しくないものです。

>Mary-Janeさん

 別に私は、風力発電や太陽光発電に妙な夢を抱いている人々に批判的なだけで、自然エネルギーには否定的ではありませんから。発電手段にしても「流行」があって、それが風力や太陽光でもあるのですが、ただ流行りでなくとも有効性の高い解決策はある、その一つが水力発電だと思いますね。
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太陽光発電も補助金が (白髪仙人)
2011-08-18 06:00:18
ダムは金がかかりますが、太陽光発電も現状では補助金や買取価格の引き上げがなければペイしないんじゃないでしょうか。ですがダムは補助金を出すと非難され、かたや太陽光発電は補助金を中止したのでドイツなどに遅れをとったと非難されているような、ちゃんとした理由があるのかもしれませんが、私にはよくわかりません。税金にしろ電気代に転嫁にしろ国民の負担になるのは変わらないような気もしますが、特定の業者なんかにまず金が出されるのが気に入らないんですかね、自分が負担するのは我慢するがアイツらに金がいくのは我慢ならんみたいな。それと海外ではこんなに進んでいるとか言われるとキャッチアップしなくちゃいかんと思うのかなぁ
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Unknown (やすお)
2011-08-18 12:18:30
最近、国民負担って言葉を聞くと意識的に顔を背けたくなります。
おそらく「ヒステリー」があるんでしょうね。実体のないやつ


政府が積極的にアピールすれば少しは、・・・どうなんだろう水力は。
地元の反発とかもあるだろうから。
でも現実的にこういったものしかないような気もする。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-08-18 13:28:17
>白髪仙人さん

 風力も太陽光も、補助金あっての世界ですから。しかるに、やはり流行ってしまえば許されるのか、ダム建設に投じられる金は無駄な金、太陽光に投入される金はよい金ということになりがちです。でも、ちょっと立ち止まって考える必要があると思うんですよね。

>やすおさん

 ダム開発となると、むしろ積極的にネガキャンを張ることで支持を集めてきた政治家の方が今は多数派の気がしますので、何とも厳しそうです。もうちょっと有権者サイドにも色々と考えて欲しいところなのですが、世論に媚びる政治家と流行を追いかける有権者とで負のスパイラルを形成しているような……
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2011-08-24 00:04:07
「なにわ忠臣蔵伝説」という本を読みました。(正確には絶版になって長いということで著者のサイトで無料公開されていたものを読みました→http://noriminebook.web.fc2.com/syousetu/naniwamokuzi.html

その中に「ほんとに吉良はどこにいるんでしょうか。ほんとに吉良なんているんでしょうか。
」という下りがあります。著者の意図がどこにあるのかは分からないのですが、著者の意図は別として確かに何かあるたびに吉良上野介を探して止まない人は多いのでしょう。でも私は吉良なんていないと思いますね。悪役として生まれ、悪役として劇中の役割を全うするのが役割の全てである忠臣蔵の吉良のようなものは。

PS:フジテレビを矢鱈非難している人はフジサンケイグループがむしろ大手の中では右志向が強いことを知らないのですかね?と思っていたのですがだからこそ「裏切られた」という気持ちがあるのかも、ということに今更気付きました。
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