非国民通信

ノーモア・コイズミ

西側諸国は証拠なんて求めていませんでしたが

2022-06-22 23:48:19 | 政治・国際

ウクライナ国会、人権オンブズマンを解任 国連ミッションが注意勧告(ウクルインフォルム)

ウクライナ最高会議(国会)は5月31日、リュドミラ・デニーソヴァ人権問題全権を解任した。
最高会議ウェブサイトにて、解任投票の結果が公表された。

解任を支持したのは議員234名(過半数は224)。反対は9名、留保は28名だった。

フロロウ最高会議与党「人民奉仕者」会派議員は、解任の理由は、人道回廊組織、被拘束者保護・交換、被占領地からの住民追放への対抗などにおける権限の体系的不履行、ロシア占領地において行われたとされるも証拠が確認されていない「不自然な手段で行われた性犯罪」「児童への強姦」事例の詳細のメディアへの拡散を指摘した。また、デニーソヴァ氏が2月24日以降、業務とは関係なく長期間国外滞在をしていたことも指摘した。

(中略)

さらに、国連ウクライナ人権監視ミッションは、本件につきフェイスブック・アカウントにて声明を出し、今回のデニーソヴァ氏の解任は、国際基準に反するものだと指摘した。

 

 ウクライナの国営通信社であるウクルインフォルムによると、先月末に同国の人権オンブズマンであったデニーソヴァ氏が解任されたそうです。いつものウクライナ大本営発表とは方向性が異なる報道ですけれど、いったい何があったのでしょうか。我が国では常にフェイクとして扱われるロシア側の発表として、こうしたウクライナ側の信用を損なうニュースが出てくるのであれば納得できるのですが、今回は真逆ですから。

 ともあれ「過半数は224」のウクライナ最高会議にて、賛成234名、反対9名、留保28名で解任が決まったことが伝えられています。過半数が224と言うことは全体で447か446の議席があるはずで、そうすると180程度の賛成でも反対でも留保でもない票が残っている計算です。180票はどこに消えたのか、ウクライナでは一部野党の活動を禁じる翼賛体制が敷かれていますので、そこはゼレンスキー体制で権利を奪われた議員たちの分なのかも知れません。

 解任の理由として"ロシア占領地において行われたとされるも証拠が確認されていない「不自然な手段で行われた性犯罪」「児童への強姦」事例の詳細のメディアへの拡散"が挙げられています。実際のところデニーソヴァ氏の発信によるロシア軍の性犯罪は日本でも広く伝えられ、氏の主張を根拠にしてロシア非難の声を上げるメディアや論者は少なくありませんでした。しかるに、ロシアではなくウクライナ側から、解任に相当するレベルの疑義が突きつけられているわけです。

 その類いの行為は、戦争が始まればどこの国の軍隊でも発生する話です。アメリカ軍でもドイツ軍でも日本軍でも韓国軍でも、戦地での民間人虐殺や性暴力ぐらい、探せば必ず見つかります。戦争とはそういうものであって、今回のロシア軍が希有な例外となることはないでしょう。ロシア軍の非道を探して見つけることは出来たはずですが──それでもなおウクライナ側から見て、デニーソヴァ氏の発表は無理筋であったのだろうと推測されます。

 そもそも日本と欧米諸国は、ウクライナ側からなされた告発に証拠など必要としていませんでした。ウクライナによるロシアへの避難に裏付けなど求めていなかった、ウクライナの訴えを真実とし、ロシアの主張をフェイクとして扱う、それが西側陣営の同意事項だったわけです。だからウクライナ側は自国に都合の良いことを言い募りさえすれば済む話だった、デマであってもロシア批判に結びつくなら十分だったはずですが──それでもなおウクライナ側にとって、デニーソヴァ氏は切り離しておきたかったようです。

 日本国内の報道を見る限りは挙国一致のゼレンスキー体制ですけれど、実際には内部での路線対立や権力闘争もあるのかも知れません。その一環としてデニーソヴァ氏が「失脚」したという推測も出来ます。いずれにせよ、真偽の疑わしい事項を拡散したとウクライナ議会が認定している人物の主張に基づいて、日本を含む欧米各国はロシアを非難してきたという事実は残ります。事実かフェイクか、何事も自陣営にとって都合が良いか悪いかで決められるのが常ですが、それでも反省すべき点がないとは言えないでしょう。

 なお国連ウクライナ人権監視ミッションは、このウクライナ最高議会の決定を「国際基準に反するもの」として批判していることが伝えられています。国連機関とウクライナの意見対立は今に始まったことではありませんけれど(参考:国連 vs ウクライナ)、日本は国連とウクライナのどちらに付くのでしょうね。まぁ、それ以前にデニーソヴァ氏の解任は日本の大手メディアでは伝えられていない模様ですので、都合が悪い以上は沈黙を貫くのかも知れません。

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