非国民通信

ノーモア・コイズミ

自主性を強いられるのは嫌なもの

2014-08-12 23:20:56 | 雇用・経済

若者応援企業:24歳女性「パワハラ」提訴 賃金など求め(毎日新聞)

 厚生労働省が勧める若者応援企業に就職したがパワハラなどがあったとして、神奈川県在住の元会社員の女性(24)が7日、会社と派遣先などを相手取り、賃金や慰謝料など約500万円の支払いを求め東京地裁に提訴した。代理人の弁護士は「厚労省が推奨するから若者は信用する。企業の登録はもっと慎重であるべきだ」と話す。

 女性が訴えたのは、コンピューターのシステム設計などのIT会社「LIFECREATIONS」(東京都港区)と派遣先の「富士ゼロックスシステムサービス板橋事業所」(同板橋区)など3社。

 訴状などによると、女性は2013年11月、若者応援企業のL社に1カ月の研修を受けて入社、別の会社経由で富士ゼロックスに派遣された。研修中の休みは1日で、270時間行われたが賃金は支払われなかった。L社は代理人らに「研修は任意の参加」と話しているという。

 また、女性は研修後すぐに富士社に派遣され、高度な知識の求められるシステム開発の仕様書作成を命じられた。具体的な指導はなく、パワハラやセクハラ発言を受け、長時間労働も続いた。2カ月勤務した後、適応障害で働けなくなった。

 

 ここで名前の挙がっている「若者応援企業」とは、結局のところハローワークの求人なんですよね。マトモな仕事を探したかったら、ハローワークは使っちゃダメです。「若者応援企業」は、企業が正社員の求人をハローワークに出す際、教育制度があることや労働法に違反していないことを条件に認定されるものということですが、ハローワークは求人の内容の真偽など確認したりはしないものです。時には業務内容が普通に非合法である求人もあれば、ハローワークに紹介された就職先で金銭を騙し取られたなんて事例も普通にあります。ハローワークは、失業給付の受け取り以外で利用してはいけません。

 正直なところ虚偽の認定をしたハローワークにも責任は問われるべき、責任者の処分や業務停止などの措置が取られてしかるべきものと思われますが、まぁ原告にとっては高い授業料となったようです。ちなみに他紙の報道によれば派遣先での基本給は18万円で、200時間まではみなし残業とされたとのこと、こんな就業環境であろうと「若者応援企業」という認定を与える公的機関って、いったい何なのでしょうか。利用者を陥れるような自浄能力を欠いた公的機関こそ解体の対象として真剣に検討されても良さそうなものです。

 ちなみに研修期間は1ヶ月、研修中の休みは1日で270時間行われたが賃金は支払われなかったと伝えられています。これに関して「若者応援企業」の回答は「研修は任意の参加」なのだとか。なんと言いますか、何かに連れ日本という国は「強制」とは考えたがらない、何事も「任意の参加」であったことにしたがる性質があるように思えてきます。それは誰がどう見ても強制だろうとしか言えない事例でも、日本人の口を通すと「強制はなかった、自発的なものだ」ということになってしまうようです。果たしてその任意、自発的な行動を取ったとされる当人に選択の自由は与えられていたのでしょうか。あるいは募集の段階で騙しはなかったのでしょうか。その辺から目を背けたがるのが日本の文化だとしたら、何とも嫌なものです。

 

すき家、最大940店舗で深夜営業休止 ワンオペ解消へ外国人採用拡充も(フジサンケイビジネスアイ)

 全国で2000店舗あるすき家で、現時点でワンオペがある店舗は、半数近い約940店舗もある。近隣の店舗から応援を出したり、アルバイトの勤務店舗を変更したり、外国人留学生の採用を拡充させたりといった手法をとる予定だ。「それでも(940店の半分の)460~470店は深夜営業を休止することになる」(小川会長兼社長)という。最悪の想定では、940店舗で深夜営業を休止するという。

(中略)

 小川会長兼社長は「すき家ではクルー自らが生産性を上げようと努力し、その結果、牛丼最後発企業が外食産業のトップになった」と分析。その中で、「ステージは変わった」ことを実感し、「企業としての社会的な責任を果たし、あるべき形を作っていく」ことを打ち出した。従業員の自己啓発を支援するための福利厚生の見直しなどの検討に入った。

 

 ……で、こちらは牛丼業界最大手のゼンショーの話、人手不足解消に外国人採用を拡充するとのこと。日本人を絞り尽くしたら今度は外国人を食い物にするつもりでしょうか、吐き気をもよおす邪悪といった趣ですけれど、そういう手法で店舗数№1に上り詰めたのですから、それも日本の社会に適したやり方だったのかも知れません。願わくは、遠からぬ内に破綻して欲しいものです。安倍内閣も外国人労働者の受け入れなどと称してこの手の企業が延命できるような環境作りに走るのではなく、日本の恥とも呼べるような企業が淘汰されるような路線を取ってもらいたいですね。

 上の画像は映画「十二人の怒れる男」からの一幕です。一方、上に引用しましたゼンショーの社長に言わせれば「すき家ではクルー自らが生産性を上げようと努力し」云々とのこと。このところは折に触れて言及してきたわけですが、日本ではアルバイトや派遣社員のような報われない末端の労働者までもがマネジメントの視点を持って働いています。労働者だからと言って給料分だけの働きしかするつもりはない、上から命じられたことを処理するだけ――それでは済まされないのが日本の職場です。時給1000円にすら満たないアルバイトでも、経営幹部と同じ視点に立って組織のことを考えていかなければならないのです。

 こうした文化のせいか、日本では「上」に行くほど頼りにならないところもあるように思います。上の人間は命じるだけ、要求するだけ、結果を出すのは「下」の仕事になっている、本当に頭を使って努力するのは下の人間ですから。「下」が頭を使わないで「上」から指示されただけのことしかやらないような社会では、当然ながら「上」の采配能力が問われます。しかし「下」が頭を使って何とかするのが当然視される日本社会では「上」の能力が問われる場面は必然的に少なくなるわけです。どこの会社でも「この人の言う通りにしておけば何でも大丈夫」と思えるような上司には巡り会えないもの、逆に「自分で何とかしなくちゃ」と覚悟を決めなければならない場面の方が普通なのではないでしょうか。頭は会社なんかのためではなく自分のために使いたいものですが。

 

 ←ノーモア・コイズミ!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする