非国民通信

ノーモア・コイズミ

脱原発無罪な人々

2013-11-16 23:07:42 | 社会

甲状腺がん「地域差見られず」(NHK福島放送局)

福島第一原発事故を受けて福島県がすべての子どもを対象に進めている「甲状腺検査」で、これまでにがんがみつかったりがんの疑いがある子どもの割合が、原発周辺の避難区域などとそのほかの地域とで大きな差がみられないことがわかりました。

原発事故で放出された放射性物質は甲状腺に蓄積してがんを引き起こすおそれがあるとされ、福島県は、事故当時18歳以下だったおよそ36万人を対象に検査を進めています。

12日開かれた「県民健康管理調査」の検討委員会で、県立医科大学の担当者は、これまでの検査でがんがみつかったり、がんが疑われる子どもが59人にのぼることを明らかにしました。

これについて、政府が避難指示を出すなどした原発周辺の13の自治体と、福島市や郡山市などそのほかの13の自治体を比較すると、がんやがんの疑いのある子どもの割合はいずれも全体の0.03パーセントで、担当者は、これまでの検査結果からは、地域によって大きな差はみられないとしています。

一方、甲状腺がんは通常、自覚症状が出てから検査を受けるケースがほどんどで、今回のように症状の有無に関わらず実施した検査の統計は過去にありません。このため、調査を行った県や県立医科大学では、これまでにがんのみつかった子どもの数について、「原発事故が影響したものかどうか判断ができない」としています。

 

 まぁ、NHKもドキュメンタリー番組となると酷い歪曲報道も目立つところですが、上記は「普通」にメディアとしての役割を果たしていると言えるでしょうか。原発事故の影響が大きく避難指示が出された地域の子供も、避難指示を出す必要がなかった地域の子供でも「がんやがんの疑いのある子どもの割合はいずれも全体の0.03パーセントで、~地域によって大きな差はみられない」ことが伝えられています。まぁ、癌が見つかるレベルに育つまでには年数がかかるもので、この時期に発見された癌であれば原発事故「以前」に起因するものと考えるのが当たり前ですし、幾重にも測定された被曝量を鑑みれば今後も有意な差が現れることはないと言って間違いはなさそうです。

 

子の甲状腺がん、疑い含め59人 福島県は被曝影響否定(朝日新聞)

 【野瀬輝彦、大 岩 ゆ り】東京電力福島第一原発事故の発生当時に18歳以下だった子どもの甲状腺検査で、福島県は12日、検査を受けた約22・6万人のうち、計59人で甲状腺がんやその疑いありと診断されたと発表した。8月時点より、検査人数は約3・3万人、患者は疑いも含め15人増えた。これまでのがん統計より発生率は高いが、検査の性質が異なることなどから県は「被曝(ひばく)の影響とは考えられない」としている。

 県は来春から、住民の不安にこたえるため、事故当時、胎児だった約2万5千人の甲状腺検査も始める。

 新たに甲状腺がんと診断されたのは8人、疑いありとされたのは7人。累計では、がんは26人、疑いが33人。がんや疑いありとされた計58人(1人の良性腫瘍〈しゅよう〉除く)の事故当時の年齢は6~18歳で平均は16・8歳。

 甲状腺がんはこれまでで10万人あたり12人に見つかった計算になる。宮城県など4県のがん統計では2007年、15~19歳で甲状腺がんが見つかったのは10万人あたり1・7人で、それよりかなり多い。ただし、健康な子ども全員が対象の福島の検査の結果と、一般的に小児は目立つ症状がないと診断されないがんの統計では単純比較できない。

 ただ、チェルノブイリでは、原発事故から4~5年たって甲状腺がんが発生しており、複数の専門医は「被曝から3年以内に発生する可能性は低い」と分析している。県は被曝の影響とは考えにくい根拠として、患者の年齢分布が、乳幼児に多かったチェルノブイリと違って通常の小児甲状腺がんと同じで、最近実施された被曝影響の無いロシアの子どもの検査でも4千~5千人に1人がんが見つかっていることなどを挙げている。

 

 ……一方、マトモではない報道機関の手にかかるとどうでしょうか。報じている対象は同じなのですが、随分とニュアンスが異なって見えると思います。署名記事の著者は大岩ゆり、一貫して甲状腺等価線量と実効線量を混同させる記事を書き続けてきた人です。見出しにもあるように甲状腺癌の(疑いを含めた)数を強調したいようですけれど、事実は冒頭のNHK報道が伝える通り、被曝量が多かったはずの地域と、そうでない地域とで差はないことが分かっているわけです。ただ朝日新聞が、それを伝えることを嫌がっているだけで。

 比較対象を出さない、あるいは不適切な比較対象を並べるのは日本のジャーナリズムの鉄則です。典型が「非現業の正規職員(公務員)の給与平均」と「パート・アルバイトを含めた全業種(民間企業)の給与平均」の比較あたりですね。そして今回の朝日記事では、福島県の調査結果と「宮城県など4県のがん統計」を並べています。有無を言わさぬ全数検査で発見された件数と、自ら検診を受けに行った結果として発見された件数を比較することに意味があるのやら。典型的な印象操作の臭いがぷんぷんします。

 もっとも最後の段落は、一応の良心がそうさせたのか、甲状腺癌が発生するまでの期間やチェルノブイリとロシアでの事例も触れられています。結局、「被曝影響の無いロシアの子どもの検査でも4千~5千人に1人がんが見つかっている」とのこと。例によって比較しにくいように単位がバラバラになっていますが、福島の調査では「10万人あたり12人」そしてロシアでは「4千~5千人に1人」、どのレベルの個体差を「疑い」の対象にするかの差はあるにせよロシアの調査では「10万人あたり20~25人」ということになるわけです。少なくとも福島で有意に癌が増えているとは考えられない、とだけは言えるでしょうか。

 

無断放置のセシウム木材チップ「クリスマスプレゼントで東電前に」と嘉田知事…市長「冷静さ欠いている」(産経新聞)

 放射性セシウムが検出された木材チップが滋賀県高島市の鴨川河川敷に放置されている問題で、嘉田由紀子県知事は13日、早期の撤去を求めた福井正明市長に「クリスマスプレゼントとして、トラックに積んで東京電力に持って行きませんか」と持ちかけた。福井市長は「冷静さを欠いている」と批判しており、嘉田知事の発言は波紋を呼びそうだ。

 福井市長はチップの撤去について今月25日までに具体的な工程を示すよう要請したが、嘉田知事は「関係法令の中でどんな手続きがあるか探っているが、出口がみつからない」と説明。さらに「排出者に処理責任がある。(原発事故を起こし)セシウムをばらまいた東電に責任があるのは明らか」と怒りの矛先を東電に向けた。

 木材チップは県外から持ち込まれて無断放置された。福井市長は会談後、「市民は不安に思っているのに、県では真剣な議論がなされているのか」と困惑した表情で話した。

 

 産経は朝日に比べればかなりマトモな部類ですけれど、今回の見出しは酷いですね。曰く「セシウム木材チップ」だそうで。ではこの「放射性セシウムが検出された木材チップ」とは、どういうものだったでしょうか。

参考、中日新聞社のカレンダーの1年は何日あるんだろう?

 何でも9月に琵琶湖湖畔に放置されているのを発見されたもので、最大で1キロ当たり3千ベクレルの放射性セシウムが検出されたとのこと、なお国の放射性廃棄物処理基準は1キロ当たり8千ベクレルであり、まぁ放射性物質に関しては問題のない範囲と言えます。例えばヒジキはヒ素を多く含む食品ですが、小鉢のヒジキを食べたからと言って健康を害する虞がないのと同じことです。また廃棄物付近の平均の空間線量は毎時約0・24マイクロシーベルトだったそうで、材質次第では石畳の上の方が放射線量は上回るレベルであって、特に懸念される範囲ではないでしょう。この線量で健康被害が出るなら、放射能の強い花崗岩で作られた国会議事堂で働く方々は被曝で深刻な事態に陥っているはずですから。

 まぁ結局のところセシウム云々は話題作りの域に止まると言いますか、要するに単純な不法投棄の問題なのですけれど、ちょっと頭の沸いている人の手にかかると事態はあらぬ方向へ動き出すようです。なんでも滋賀の嘉田知事曰く「クリスマスプレゼントとして、トラックに積んで東京電力に持って行きませんか」「セシウムをばらまいた東電に責任があるのは明らか」だそうで、お得意の被害妄想を披露しては現地の福井市長を大いに困惑させていることが伝えられています。

 もちろん前述の通り、放射線量の面では何も問題がないのは既に明らかなことで、セシウム云々は気にかける必要がない、ただ不法投棄物をどう処理するかの問題なのですけれど、どうにも現実に向き合えない人が、あろう事か県のトップに居座っているわけです。検出された基準値を大きく下回る放射性セシウムをネタに東京電力を罵っておけば、有権者のウケは悪くないのかも知れません。しかし、そこに精神的な満足感を覚える人がいたとしても不法投棄された木材チップがどうにかなるはずもないのですが――往々にして上にいる人ほど責任感に乏しいようです。

 この頃は脱原発論に関して小泉純一郎が幼稚な精神論を連呼しており、それに社民党や共産党が尻尾を振っているわけですが、トップの下らない思いつきに振り回されて困窮するのはいつだって現場の人間です。上の人間が威勢の良いことを打ち上げて、それを実現するために現場の人間が無理難題を押しつけられる――会社で働いていれば誰もが経験のあることではないでしょうか。小泉は「方向性が決まれば、誰かが知恵を出してくれる」と無責任なことを宣い、それを社民党や共産党が拍手喝采していますけれど、そこで責任を負わされる、お調子者達の面倒を見る「誰か」って誰ですか? 小泉改革のツケを払わされたのがどの層であるのか、社民や共産のバカどもは思い起こすべきでしょう。

 嘉田知事としては、東京電力のせいにすればいい、東京電力のせいにして、それでお終いという魂胆なのかも知れません。全てを東京電力のせいにせよ――そんな姿勢を貫いた民主党政権の悪夢が終わったとはいえ、とりあえず東京電力が悪いと言ってさえ置けば許される、そんな風潮はまだ続いているのでしょうか。しかし、東京電力を罵って「そうだ、そうだ」と取り巻き連中が賛同してくれたとしても不法投棄物が消え去るわけではありません。残された不法投棄物の処理に直面するのは県知事ではなく市長や現地の職員達の方、知事の無責任の結果を負わされそうになっている市側には同情するばかりです。

 

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