Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

汗と涙のチーズ味

2005-03-27 | 料理
フォア・アールベルク地方のチーズ、ベルク・ケーゼを試す。フォア・アールベルクは、オーストリー連邦の最も西に位置する州である。チロル地方とはアールベルクと云う山塊を挟んで峠越えを余儀なくされるので、言語文化的に西に開くボーデン湖に面するスイスやドイツに近いといわれる。アルマン語に含まれる。

アールベルク山塊は、アルペンスキーヤーのメッカ、ザンクト・アントンなどを有する。ここのスキー学校は、山の中腹にあるザンクト・クリストフの連邦スキー指導者養成所と並んで世界中から求道者が集まる。このスキー学校アールベルクは、近代スキーの祖ハーネス・シュナイダー氏によって1921年に開校された。初心者から深雪フリークのオールランダーまでがここで技を磨く。特にボーデン湖の水気をたっぷり含んだ重く分厚い深雪と、トリッキーな斜面は変化に富んでいて腕自慢たちを飽きさせない。毎朝九時過ぎに行われるクラス分けテストでの教師の見極めも流石で、的確な指導が受けられる。ドイツ語圏だけでなく世界中から集まる老若男女の生徒が繰り広げる、雪上の切磋琢磨と人間模様はお楽しみである。何日か同じ顔ぶれで滑ると、何時の間にか旅行同行者の存在を忘れて授業に興じてしまう。昨日の筋肉痛を気にしながらのバスや徒歩での毎朝の通学風景と新入学テスト風景は圧巻である。

空いている時期には、指導者養成所の名人が滑っているのを見かける。ファルガ頂上直下の岩に囲まれた細い樋を、ヴィデオ等で見かける有名デモンストレーターなどが見事に滑っている。そこから最も下の谷の町へと一気に降りるピステは、結構長く地形が素直でない。雪面の状態によっては手応えがある。頂上岩壁を回りこんで、春先のオフピステの重い雪を滑っていくのも骨が折れる。いたるところ癖のある斜面は、冬でも実力を如実に映し出して誤魔化しが利かない。

町へ至る峠の道や、トンネルの入り口でチェーンを着脱する風景や、夜の雪景色、吹雪の中の授業、和気合い合いの昼食風景が思い浮かぶ。青春時代の回顧の様である。その麓のチーズの方は、ベルク・ケーゼにしては油性勝ちで柔らかく、少しアッペンツェーラのように周りのカビが匂う。それを齧りながら、何度も通ったフォア・アールベルク地方の日々を懐かしむ。汗と涙のスキー学校の味である。今日も多くの新入生達が集っているだろう。
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