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Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

まろみが嬉しい自然な呼吸

2017-03-05 | 試飲百景
樽試飲会を回った。結局二件しか行けなかった。一件目のVDP会長クリストマン醸造所で蔵見学までして時間が掛かってしまったからである。ミュラーカトワール醸造所には行けなかった。それはそれで仕方がない。飲み代が無かったので2015年ビュルガーガルテンでも買い足ししようかと思ったからである。しかし結果的には2015年を購入するぐらいなら2016年の方が価値があると思った。

2015年のリースリングはやはり分厚過ぎてエレガントさに欠ける。なるほどザールなどではバランスが取れていたが、ラインガウなどではバランスが良くない。ナーヘの2015年もエレガントさからは遠い。リースリング好きにはあまり喜ばれない年度であろう。それに引き換え2016年のそれは凝縮度も高く、繊細さに欠けない。2014年は丁度その中間ぐらいだろうか。だから2013年よりも良さそうだ。2001年のようになるとは思わないが期待したい。2014年産もまだ市場には十二分にあり、2015年産よりも2016年産へとリゾースを集中させようかと思う。要するに2015年は赤の年で白の年ではなかった。

だから、クルストマンの2015年グーツリーングを試すがとても分厚くて話にならなかった。ギメルディンゲンなども雑味があってどうしよもない。それに比べると樽試飲の2016年の清楚なことは感動させるに足る。蔵見学で、ビオデュナミに関して農薬関連のことも重金属とケミカルも話題になっていたが、個人的には酵素と称して結局は発酵に足りなう分は補われることなどは原理主義者の醸造所の方法として興味深かった。更に興味深かったのは、手摘みの代わりに機械を使ってセレクションする方法に関してである。手摘みの場合は経験者の摘み取り手の采配が最も重要となるが、摘み取ってから下から光を当てて工場でやるようにアウスレーゼすることでより効果的に仕事ができるという説明で、今までは赤ワインでの選定作業として写真などで見ていたものの説明である。

この方法の欠点は機械で摘み取ることの傷みであろうか。バッサーマンヨルダン醸造所のウンゲホイヤーのような量があればセレクションするのも不可能となるが、傷みが激しくて収穫量が少ない時に機械で痛んだものも一緒に運び込むのもとても不経済である。結局は摘み取りの人出が集まらないということに尽きるのだろうか。

シュペートブルグンダーはお目当ての2015年はなかったが、2014年は予想以上に悪くはなかった。あの年はバイロイト詣でをしたので記憶にある。涼しい夏だった。そして熟成を待たなければいけなかった夏だったのだ。それでも2012年よりも色もあり、濃くもあるようだ。そして2013年のオェルベルクは今すぐにでも飲める状態になっていた。これは直ぐ祝い事にでも使える。寝かして楽しむ気は到底起こさせないが、2013年の特徴である薬草臭が嬉しい。

そしてここのシュペートブルグンダーがお得なのは、ゼーガー醸造所のピノノワールのベーシックと異なり100%木樽で熟成させていることである。2014年のシュペートブルグンダーを二本購入した。グローセスゲヴェックスでは50%の新樽なので、これは古いものになっているがそれでも自然な酸化をしたものはやはりまろみがある。

二件目は帰りにモスバッハ醸造所に立ち寄った。2016年産に関わらず下位のワインがなぜここまで甘くなるのかは分析値を教えてもらっても分からない。そして上位のものもミネラル風味からはほど遠い。それでも2012年シュペートブルグンダーを賞味させて貰った。2013年をまだ寝かしてあるのでとても参考になった。色は薄くて致し方が無いがまだまだ新鮮に繊細さを楽しめた。これならば2013年はまだまだ寝かせても大丈夫だと思った。

両醸造所とも先代と話すこともできたが、前者でもその年齢が気になっていたが元気そうで、奥さんを連れて車で買い物に出かけた。流石に年老いてから家庭を持つだけ若い。奥さんの方が大分若い筈だが旦那の方が元気そうだ。後者の「ジムフェルプス君」ことピーター・グレーブスは今しがたアンダルシアから帰宅して、疲れたので一杯飲もうと出てきたということだった。ゴルフ三昧で歩き通だったということで、帰宅日はワイン街道の方が温かかったとご満悦だった。



参照:
原発警備強化の物的根拠 2016-03-26 | ワイン
第二回ユングヴァイン試飲会 2016-03-10 | 試飲百景
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12本選択するとすれば

2016-09-26 | 試飲百景
秋晴れの気持ちよい試飲日和だった。例年ならばこれほど気温は低くないので、陽射しが丁度気持ちよかった。ラインの渡しでも例年とは異なる快適さがあった。ラインガウの湿り気も感じることなく、キードリッヒへと車を進めた。車を町に向けるとグレーフェンベルクの斜面が大きく剥ぎ取られて茶色に輝いていた。植え替えである。目指すロベルト・ヴァイル醸造所だけでなく近辺の地所と一緒に土壌改良へと動いたという事だ。グランクリュの15%ほどがそこに含まれている。今までの葡萄は40年ものだったようで、まだまだ上質の土壌を準備したものではさらさらなかったであろう。それどころか十二分に化学肥料などを沁み込ませていたに違いない。そのことは話さなかったが、ビオデュナミなどの素材などの話に及んだ。要するにラインガウでもそろそろビオヴァインでなければ勝負にならなくなってきているに違いない。

先ずは、グーツリースリングを試す。予想に反してミネラル風味があって清涼感がある。逆に言うと例年の酸が表に立たずに引っ込んでいるという事である。案の定、酸と糖が8g程度と半辛口仕立てになっているのである。そして階級が上がるにしたがって辛口へとその内容量が変わって来る。同じような傾向でオルツリースリングのキードリッヒも、予想していたように暑い夏の2015年にしてみると、それほど重くはないのである。アルコール12.5%であるから丁度良いぐらいである。そして酸もミネラルも明らかになって来る。

その次が黄土層のクロスターベルクである。これは流石に粉っぽいミネラルで、リースリング好きにはまるでラインヘッセンのようで若干げんなりする。それでもそれほど悪いとも思わなかったが、繰り返して試すことはなかった。そしてお目当てのテュルムベルクである。これはグラーフェンベルクの上部にあり、勿論風通しもよく気温などの点で暑い夏には有利である。前回このリースリングが良かったのは2009年産だった。傾向は似ているかもしれない。

そしてグローセスゲヴェックスのグレーフェンベルクである。これまた想定外の柔らかさである。例年ならばもう少し硬質で二年ぐらいは寝かしておかないと飲めないものである。要するに木樽による酸化で熟れ過ぎているような印象を受ける。それ故に期待されるミネラルの強さは感じられない。今年は前予約をしていないので無理して買わなくてよかったのだが、現時点ではリースリング好きには物足りなさを感じさせた。要するに柔らか過ぎる。

今年からは試飲会は一人12本を購入して初めて無料となるので、12本を選ぶ。先ずはキードリッヒかグーツリースリングかとなるが、六本買うならば前者で決まりだ。後者は飲み頃で飲みやすいが六本も開けているうちに飽きが来るだろう。そしてしばらくすると甘さが勝ってくるかもしれない。そして価格も割高である。もう六本は最もミネラルが確りしていて、例年ならば酸が充分にこなれていないテュルムベルクでいいだろう。安くはないが、今年の一本となるならこれだろう。その証拠にお替りを貰う常連さんもこの辺りに集まる。勿論飲みやすさではグレーフェンベルクなのだが、それは味が現時点で開いているということでは決してない ― もしそのようなことなら二年後には駄目になる。

その他で印象に残ったのはやはり甘口テュルムベルクのシュペートレーゼで、これも甘口グレーフェンベルクよりも酸が効いていて良かった。その他ではシャルタを試したが、苔臭いような感じで明らかに健康に熟成した葡萄というのからは遠い感じだった。若摘みだろうか。その他は試す価値もなさそうで、常連さんの人気も全く無かった。



参照:
ヴィルヘルム・ヴァイルのワイン 2010-09-05 | 試飲百景
素晴らしい投資相応の価格 2012-09-11 | 試飲百景
ラインガウへの途上で 2015-09-27 | 試飲百景
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検問逃れの試飲会帰り

2016-09-11 | 試飲百景
眠い、連日の疲れが取れていないようだ。そこに通常より少し超えたアルコールが入っただけで、分解能力が追い付かなかったようだ。まるで二日酔いの朝のような寝起きなのだが、それほど飲んでいる訳でもなく、夕食が遅くなったことぐらいだ。それでもムズムズする。どうも最近はあまり飲まない体質になったようで、以前ならば飲んでいるうちにスイッチが入って、止まらなくなってしまうというものだ。このようなことは無くなって、その前に感覚が鈍ったようなところでブレーキが入るようになって来た。理由は分からないが、飲酒運転の規制が厳しくなってきたので、少なくとも感覚が麻痺してくるような時点で自然に止めるような習性が身についてしまったのだろう。昔一緒に飲酒していて同じようなことを語っていた女性が居たように記憶するが、それが誰だったかは定かではないが恐らく学者だったと思う。なるほど感覚が鈍るような麻痺状態になると一種の不安に陥ってしまうというのは最近よく分かる。

試飲会に出かけるのに車を走らせると、バイパスの乗降口ごとにパトカーが停車していて、いつでも検問を始めれるような態勢だった。ヴルストマルクトでこのようなことはなかったので、流石に驚いた。飲酒運転規制か、テロ防止かは一向に分からないが、調べてみるとやはりテロ防止対策だったらしい。それでも帰り道つまり会場から離れる方向へは怪しい運転は止められると思い、帰り道を考えておいた。

先ずはいつものように発注したグローセスゲヴェックスを引き取りにデーノッフ醸造所に出向くが、少し17時を回ってしまって、態々自宅から出てきてもらうことになった。その妹さんに話を聞くと、雨量もそれほどではなく天気予報の様に晴天が続くと可成り健康な葡萄でよい年度になりそうだという事だった。何とか無事にワインを受け取り、お目当てのシェーンレーバー醸造所に向かう。

今回は自宅増築のこともあるのか、地下ではなく上での試飲だった。買い付け葡萄ものの「ナーヘリースリング」は特徴的なアルコール臭さと言うか如何にも造り込んだ不自然な味筋で、グーツリースリングの方も2015年特有の味の強さが感じられて興醒めだ。昔はそれでも食中酒として楽しんでいたのだが、もうこの手の酒は要らなくなった。同じような傾向はあっても流石に「ミネラール」は甘みを上手に効かしてミネラルと酸とのバランスが取れている。そして、「ハルガンツ」と比較すると、今度は逆にその雑味などに物足りなさを感じた。そして今年から初めてフリューリングスプレッツヘン産が「フリュータウ」と名付けられていた。全く同じものであるがあの長めの名前が無いと有難味が薄れる。勿論それはVDPの御意向である「グランクリュの名前はグローセスゲヴェックスとしてしか名乗れない」という方針に従っただけに過ぎない。そのお蔭かフリューリングスプレッツヘンは試飲は出来たが業者に全てが買いつくされてしまっていた。

さて、その「フリューリングスプレッツヘン」と「ハレンベルク」を比較する。毎年出来不出来があるが、今年は「ハレンベルク」でも悪くはないと感じた。理由は明らかで充分に味が強いので、態々雑味感の広がりまでは待つ必要が無いと思ったからだ。その点、オークション物の「アウフデアライ」は地所も冷却があって土壌の砂利が多く、涼しいリースリングとして秀逸だった。要するに高級リースリングなのだ。これならば充分にグレーフェンベルクなどと比較可能である。

そして古い年度の「ハレンベルク」、つまり2014年、2013年の「ハルガンツ」と2011年、2008年、2007年の六種類の同じワインを垂直試飲する。2014年は秀逸で、2013年は蜂蜜香、2011年は例の過熟性が厳しい。2008年もそれほど広がることが無く悪くはないが、個人的には2007年が好みである。若旦那に言わせると2007年は部分的にはそれほど良い年ではなくて、2013年と比較するが、あの独特のスマート感がいいのだ。

結局2015年産に関しては結構寝かせるワインである一方、つまりグローセスゲヴェックスで数年、「フリュータウ」でもまだ開かれていないのでもう少し置いておきたいという事になった。結局、高級リースリングばかり飲むとなると、溜めとかないと駄目なので、幾らあっても飲み干してしまうようなことではいつも在庫が足りなくなるのである。

帰りには、バイパスをバイパスする道に入った。以前はマンハイム方面に出かける通勤道路だったところで馴染みがあるのだが、なぜか賑やかだった。多くの人が同じことを考えたようで、その道を通って、ダイデスハイム方面へも車が流れていた。皆が検問を避けて車を走らせていたのだった。



参照:
土産になる高品質甘口ワイン 2016-05-30 | 試飲百景
飲み頃を探る試飲談話 2015-09-15 | 試飲百景
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土産になる高品質甘口ワイン

2016-05-30 | 試飲百景

週末には予定ではいけなかった試飲会に出かけた。丁度日本からのお客さんもいて価値があった。それでもなによりも価値があったのは昨年より今年の方がナーヘのデーノッフ醸造所がVDPのテロワールを強く押し出しようになったことを確認したことである。

今まではグローセスゲヴェックスの三種類の地所と土壌は光っていたのだが、それ以下の地所では充分にプレゼンテーションが出来ていなかった。これを明白にすることで、テロワーの描き方に以上に配慮することになる。

正直、グローセスゲヴェックスに比較するとそれ以外の地所では魅力が薄過ぎるので、2014年産などはグランクリュ以外は一本も買えなかった。しかし2015年は違う。それでも、甘口のブリュッケなどを除く、カーレンベルク、ホェーレンプァートなどは今後ものになるかどうかは分からない。可能性あるのは、土壌の組成によるシリーズ化か、ナーヘリースリングなどの広域化だろうか?

その中で二週間前にホッホハイムで試飲した時には酸が足りないと思ったトーンシーファーが素晴らしかった。なるほど酸は足りないが葡萄の熟成度と清潔さが気に入った。少々酸が薄くとも食事に楽しめるだろう。ライステンベルクの炭素分の多い灰色のスレートが美味い。

グランクリュでは、フェルツェンテュルムヘンはグーツリースリングのようにイガイガ感があって、如何にも果実の健康に問題を感じた。その意味では昨年の綺麗さが無かったのもヘルマンスホェーレも長く熟成させる価値はなかった。その意味からはデルヒェンは清潔感があり瓶熟成が楽しみだ。

そしてとても興味深かったのはこの醸造所を超一流にする甘口のリースリングである。適当に何種類か試してみた。昨年試飲して、所謂昨今流行の甘口もしくは殆ど飲まれない甘口の中でもある程度の国内市場もある軽い甘口がとても上手に造っていたのに感心した。軽快ではあるのだが土壌感やミネラルなどテロワーが表現されていたからだ。

その流れでアイスヴァインなどで有名なブリュッケやラーゲンヴァインを試して、アウスレーゼなどを試して、断トツに素晴らしかったのはヘルマンスホェーレ2015年のシュペートレーゼだった。価格もアウスレーゼなどよりは高価な27.50ユーロだったが、これは見事にそのテロワーが楽しめる。甘さよりもミネラルを感じる甘口である。

要するに昨今流行のそれほど甘くなく軽いアルコールの甘口もそれだけならば清涼飲料水と変わらなくカロリーばかり高くて、コーラよりは健康的かもしれないが、アルコールが入っているだけキッチンドリンカーになりやすい。

そうした炭酸飲料類のものとは全く対極にあるのがこの甘口で、これならば食事によれば合わせるかもしれなく、決して甘いとは思わせない味わいが楽しめるのだ。勿論単体としても食前酒としても食後のデザートワインとしても楽しめる。そして何よりもミネラルを吟味して、香りなどを楽しむことで、本格的なリースリングを嗜む切っ掛けにもなるようなものだ。エゴンミュラーのシャルツホフベルクなどよりも土壌も明らかに優れている。女性三人もいる家庭へのお土産には文句無しだ。通常瓶も直ぐに空いてしまうだろう。

 

参照:
石橋を叩いての樽試飲 2015-06-08 | 試飲百景
これもリースリングの神髄 2016-01-06 | ワイン


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聖霊降臨祭明けの再訪

2016-05-18 | 試飲百景
聖霊降臨祭に続いて、予定通り火曜日もミュラー・カトワール醸造所に試飲に出かけた。やはりなかなか面白いという感じだ。理由は、程度の高い2014年産が余っていて、試飲出来るからだ。試飲出来る機会を逃さないことは経験の積み上げにとても重要である。

2015年に関してはどこも苦労している。正直2014年以上には期待できないと思っている。しかし、一年前は青白くとも薬草風のスパイシーな2013年産が良いと思っていた。傾向としてはしり上がりに分厚いワインになってきている。その意味からも2014年産はそんなに悪くないと気がついた。少なくとも当初から予想されたように時間が経つことが要求された年度で、今ものによっては初めて真価を表しているものもある。

その代表格が2014年オルツリースリング「ハールト」であり、酸が引っ込んだ感じがするのは結構なミネラルがあるからで、それによって感じる苦味的なものはミネラルである。正直二三年前まではあまり評価していなかったのだが、ラーゲンヴァイン「ビュルガーガルテン」の小ぶりなものとしてその価格12ユーロでとても楽しめる。若干通向きなのだが、食事にはとても合わせやすい。

勿論試飲会で出されたツナの刺身と海藻の胡麻和えには、2014年ヘーレンレッテンのグラウブルグンダーが格別だったが、こちらは価格18ユーロとあまり瓶熟成を期待できないピノグリには若干高価である。同じヘーレンレッテンからの2014年のリースリングも華やかさがあり、酸も効いていて良いのだが、好みは石灰質のリースリングに関する見解で分かれるだろう。決して悪くはないのだが、18ユーロを個人的には石灰質リースリングには投資出来ない。瓶熟成の可能性があまり無いからである。

他のブルグンダー種に関しては充分に残糖を抑えてはいるのだが、特別な魅力はなかった。ビュルガーガルテンに関しては2015年はやはり2014年の魅力はなかった。レープホルツが苦労しているのと同じような状況がここにもあった。

面白かったのはフランツェン親方と話していて、リースリングの瓶熟成の局面の話が出てきたことで、所謂谷と山議論である。勿論サイン波のように綺麗にはなっていない。そこが面白いところであるが、彼に言わせると、ビュルガ―ガルテンで落ちてきて、ガールトで上っているということは次にビュルガーガルテンが上ることを指している。この辺りの感覚は造る方にも愛好者にも重要な時間軸での思考である。

それが、ブリュクリン・ヴォルフ醸造所では、2015年グーツリースリングを完全辛口に発酵させて、つまり残糖値を4gほどにして、重量感を避けた賢明な醸造が行われていた。これならばレープホルツ醸造所の「オェコノミラート」とまではいかないが、結構楽しめるワインになっていた。そして2014年産のオルツリースリングが今漸く真価を発揮しだしてきた。グローセスゲヴェックスは50ユーロ以下では入手困難になって来た今、そのテロワーを楽しみつつ、瓶熟成を期待できる20ユーロ以下のリースリング、これは貴重なのである。同価格帯のロベルト・ヴァイル醸造所のキードリッヒとは比較にならない品質である。



参照:
最後のグレーフェンベルク 2016-02-21 | ワイン
三つの醸造所を比較する 2014-11-04 | ワイン
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全然飲み飽きないワイン

2016-05-10 | 試飲百景
金曜日にレープホルツ醸造所に向かった。翌日はフライブルクに行かなければならなかったからだ。いつものように裏口から入ると静まり返っていた。挨拶してどうしたことかと思っていると、試飲の瓶はいつもと違うところに並べられていた。理由は試飲本数が18本しかなかったからと分かった。収穫量の問題があったのだろう。

リースリングから始めてみる。予想通り酸の効き方が弱いのか苦味がいつもよりも強い。それでも問題のある苦みではなく、酸が弱いことのアンバランスである。個人的には酸が弱いと苦味を感じやすいので、酸が効いてくれているのに安心して、リースリングしか飲まないのだが、少しバランスが変わるとブルグンダーのようになってしまう。

それでも「オェコノミラート」から「フォムブントザントシュタイン」となっていくとバランスが良くなって来る。どうしても糖を落としたリースリングであると酸が効いていないと物足りない。我家のスタンダードリースリングである「オェコノミラート」単体で試飲会で美味しいと思ったことはないのだが、これが丁度食事時となると止まらないのである ― これをVDP支部長のレープホルツ氏は「全然飲み飽きない」ワインと呼ぶ。

例年ならば酸が強すぎると感じて、それに拮抗する深浸けの味とミネラルを楽しむリースリングであるが、2015年産に関してはバランスが若干異なるということだ。それでも2015年の酸は2003年に比較するようなものではないということである。その代り、若干甘みを感じるムスカテラー、青いソーヴィニオンブラン、苦味のゲヴルツトラミナー、グラウブルグンダー、そしてヴィスブルグンダーなどはそれどころかヴァニラの味がする。

さて恒例の講話である。2010年ロゼのゼクトから始まる。60ヶ月の熟成を経てのゼクト化である。肌理もそこそこで悪くはなかった。これと2015年ブランデュブランの比較、1990年の単純なリースリングと2015年のオェコノミラートと、1990年を一つの比較対象としている。要するに2015年の酸はそれほど悪くはないということである。2009年フォムロートリーゲンデンと2015年との比較でも、2009年よりは質が違うのだ。2012年ムスカテラーと2015年との比較、2012年ヴァイスブルグンダーと2015年の比較、そして2013年産シュペートブルグンダーで締めた。

ご本人にも褒めたが、こちらが最初の試飲で気になっていたことを全て答える感じで比較対象試飲が講話として行われて素晴らしかった。これで個人的にも我がスタンダードワインを今年はどれぐらい楽しめるだろうかという疑問を解いてくれた。2015年の成果として、加糖には一切関係してこなかったレープホルツ醸造所が自信を持ってアルコール11.5%の超辛口を提供しているのである。



参照:
素晴らしい変わり者の味 2014-06-02 | 試飲百景
忙しかった週末を回想 2013-05-14 | 試飲百景
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ホッホハイムで初試飲会

2016-05-01 | 試飲百景
初めての試飲会だった。ラインガウ入り口のキュンストラー醸造所は一度試飲したことがあるがそこでの試飲会は初めてだった。お隣のヴェルナー醸造所の関係で土地には馴染みがあるんだが、昨年デーノッフ醸造所の試飲会でゲストで来ていたキュンストラー醸造所の親仁に出会ってから案内を貰っていて、今年はその試飲会の方へはいけないので、こちらを訪問した。デーンノッフ醸造所の方はお母さんが来ていて、若旦那とは会えなかった。こちらは仕切り直しとした。それでも2015年産は期待していたほどではなく、酸が弱い分若干ス暈け気味で若干ミネラル由縁の苦味が出ていた。やはりここの持ち味は甘口とグローセスゲヴェックスにあると改めて確認した。辛口はシェーンレーバー醸造所の方が明らかに上だ。

さて、キュンストラー醸造所の方は、グーツリースリングから試した。悪くはないが、9ユーロ90であるから、当然といえば当然で過激な競争の中で頭角を現すものではなかった。次のヘレンベルクは心理的に良いぐらいだろうか?しかし流石にキルヘンシュチュックになると明らかにテロワー感があり、お隣のヴェルナーで慣れ親しんだものである。若干重めのねっとり感と果実の皮の風味は本格的なホッホハイマーである。それに比べてヘーレの方は、華やかで、かんきつ類やオレンジの風味であり、如何にもこの醸造所が売りにしてきた傾向である。

それに比較するとルューデスハイムのローゼネックはお馴染みの梨系の風味で明らかな土壌に違いを感じさせる。ホッホハイムの土壌は基本は石灰であるのだが、なぜかここのものは嫌味が少ない。理由は分からないのだが、マイン河がラインに流れ込むところの斜面で深く抉られた下の斜面つまりマインの右岸であることが特徴的な土壌としているのだろう。そのような理由で英国でもホックと呼ばれてビクトリア女王が崖下に地所を持っていたように、リースリングも決して悪くはないのである。

そこで、ラーゲンヴァインのシュティールヴェークのアルテレーベンを試す。これは収穫量が少ないのか酸と糖を均衡させているような濃い造りで、些か個々の醸造所の売りからは遠い。お待ちかねのドムデカナイは流石に透明感のあるミネラル感が嬉しい。しかし昨年買えなかった2014年物と比べると渋味もあり感動しない。そこで幸運にもあった2014年物を試すと明らかに繊細で美しい。アルコールで1%も異なり、13.5%は上げ過ぎだが、それが2015年の特徴だということだ。要するに皆が期待するほどに2015年は素晴らしいとはならない。

2012年産や2013年産が売れ残っていて、試すと明らかにビッショッフベルク、ドラッヘンシュタインなどリュ―デスハイム物はミネラル成分が山椒や胡椒などあまり上品ではない。この周辺の土壌はミッテルラインなどに通じるところが少なくない。初心者には面白いかもしれないが、リースリング通を唸らせることはない。

ここでグローセスゲヴェックスへと向かうと、2012年から2014年までが様々残っていた。そして何よりも興味深いと親仁に言ったのは、コルク栓とスクリュ―の二種類を出していることである。顧客の中にはスクリューに感動している者もいたがどうも辛口の瓶熟成を知らないようだった。恐らくドイツでもそれが分かっている者は少数エリートのようだ。勿論コルクでないと、木樽熟成でないと五年の熟成は期待できない。この醸造所は木樽を使っているが、コルクを使っていなかったり、まだまだ収穫量を落とした葡萄の扱いになれていなかったりとVDPの中でも上位の基準をクリアーできていない。そこに天然酵母、更に天然酵母の扱いなどとピラミッドの頂点へと基準が増えて空気が薄くなっていくのである。案の定、2012年のロートラントなどは苦味が出ていて、如何にこの地域では健康な葡萄でグローセスゲヴェックスを醸造するのが難しいかを語っている。

親仁が面白いことを突然言い始めた。加藤がどうの塚原がどうのと言い始めたのだ。一体何処の加藤かと思ったが、直ぐに体操の加藤だと分かった。どうも親仁は体操をやっていたようだ。知ってるかと聞かれれば、ムーンライトこと塚原サルトーは先日やったばかりだとまでは言えなかった。次ぎ会うときは監物の話か?



参照:
美味すぎるリースリング 2015-07-31 | ワイン
とんでもないことになる 2015-06-27 | 歴史・時事
刃物要らずの親方殺し 2015-06-11 | 試飲百景
馬鹿に捧げるリースリング 2009-06-24 | ワイン
不都合な交通システム 2008-10-05 | 生活
F・芸術家と名乗る醸造所 2008-10-04 | 試飲百景
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第二回ユングヴァイン試飲会

2016-03-10 | 試飲百景
VDPの第二回ユングヴァインプローベに出かけた。最初はミュラーカトワール醸造所に行って、ビュルガーガルテンを買い足すつもりでいたが、事前に自宅で開けてみると酸が突出していて、その他が引っ込んでいたので今回は止めにした。瓶熟成が始まるまでどうしようもない。要するにMCは酸の突出で苦みを抑えていたのだろう。ドイツトップクラスの酸であった。

そこで久しぶりに会長のクリストマン醸造所に出かけることにした。昨年ナーヘのシーェンレーバー醸造所で2014年産の評判を聞いたからだ。2014年も比較で試飲できた。樽試飲の2015年のグーツリースリングの色目の黄色さは異常なほどだった。漬け込みが強いのか分からないが、それでもまだ瓶詰めされていない分、新鮮さと酸が際立って重みは全くなかった。この点でも若干醸造法で変化があるようだ。比較すれば、2014年の蜂蜜香のような明らかな葡萄の健康度と2015年のそれでは後者に明らかに長所があった。ヴァイスブルグンダーも万人向きに出来上がっていた。それ以上のものは試さずに赤に移った。

2013年の標準シュペートブルグンダーは可成り酸が立っていて、赤としては駄目だった。それに比較すると2012年のギメルディンガーと称する嘗てのSCは中々香味が面白かった。十分なミネラルもあり、若干石灰土壌も感じられる。17ユーロならばフランスもののフィクサンなどと比較して、これはこれでよいと思う。フランス独特のベリー系の香りはないが薬草風のそれは決して悪いものではない。都会的な繊細さがクリストマンのシュペートブルグンダーの良さである。

序に聞いてみると買いそびれていた2011年物のオェールベルクもあるということで一本貰ってきておいた。2009年に似ているようなので試飲しなくても大体分かる。2009年産を開けてから飲み時を考えればよいが、あと二年ほどが良さそうだ。

その足でこれまた久しぶりにフォルストのゲオルク・モスバッハ―醸造所に向かった。そこでも新酒と樽試飲をしたが、流石にグーツリースリング程度では価格は安くとも全く楽しめなくなってきた。新し過ぎることもあるのだろうが、落ち着いてくると今度はそのミネラルや深みに欠けるということで、我々にはもはやあまり楽しめない。更にかなり甘く感じるので、お婿さんに尋ねると酸が弱い分そのように感じるだけでなにも糖を残したわけではないと言った。2015年はやはり酸が弱い。それでも上位のリースリングになるとなかなか酸が効いている。健康度で2015年の方が2014年より良い分、間違いなく悪くはない年度のようだ。

バッサーマン・ヨルダン醸造所の親方がやって来て挨拶して、更に外回りのケラー氏夫婦まで来ていた。ウンゲホイヤー機械摘みの話をしてやろうかと思ったが、基本的にはお忍びであり喧嘩になってはいけないと思って遠慮した。そして耳を澄ましているとムーゼンハングに評価が集まっていた。柑橘類のその強さは最近この地所が温暖化だけでなく注目されてきている所以である。嘗てのヘアゴットザッカーに求めていたものの上のものがここにある。瓶詰めされたらもう一度試飲しなければいけないものだ。

そして2015年は赤ワインが期待である。2003年、2005年、2009年、2011年と並ぶかどうか?二年後が楽しみである。



参照:
スローフードの塩辛さ 2015-03-09 | 試飲百景
神の膝元のリースリング 2015-06-02 | 試飲百景
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デキャンテ―ションしようよ

2015-10-27 | 試飲百景
午後には試飲会に出かけた。今年最後になるだろうか。ミュラーカトワール醸造所である。前日にネットを覗くと、ここでけなすことばかりの英国人ピゴ・シュテュワートが書いてあるものが目に入った。どうせくだらないことを書いているのだろうと思うと、春に試飲していて、私と殆ど同等の感想が綴ってあった。要するに、ビュルガーガルテン、ヘーレンレッテンなどに見る2014年産の出来はドイツで注目されるに当たるということだ。

特に上手に表現していたのはヨード味のビュルガーガルテンのミネラルの表現と飲み頃に関する記述で、私と同じように熟成を期待する旨の言及である。これは我が意を得たりだったので、直接其のことなどをマイスターに話してみた。写真まで写されて、取材はされていたわけだが、BLOGに書いてあることを読んでいたかどうかは確認できなかったが、どうもやはり専門家はこの英国人の評価をあまり信用していないような印象を受けた。これもわたしと同じで、この物書きがまともなことを書いていることは殆ど無いからだ。

そして、飲み頃や熟成に関しては若干異なる感じをマイスター自体は持っているのを感じた。先ずはっきりしていることは、必ずしもこのリースリングが開いているが、更に開いていくという意識は持っていないようだった。

実際に、ビュルガーガルテンのこれとグローセスゲヴェックスの「イムブロイメル」を比較した時に、やはり後者のミネラルや酸や香りなどは明らかに鮮やかだ。そしてアルコールの13%がとても軽く感じる。これを本人に話すともともと比重の高いリースリングは過去のものだとなるのだが、個人的にはこの軽やかさこそがここのリースリングに求められたものだ。理由はビュルガーガルテンの土壌自体が重いからである。

そして2014年はプファルツのみならずナーヘやザール、ラインガウなどどこも果実風味よりもミネラルの年度であったことになる。つまり、リースリング通にはうけるのだが、大衆にはあまり美味しいとは思われないかもしれない。2013年も明らかにハーブ香や香味の年であった。なるほど2014年の方はボディー感があるので本格的なリースリングとなるが、2013年のような香りには乏しい。

それ故に我々は瓶熟成すると開いてくると期待しているのだ。若干鼻をつまんだ感じのリースリングであるが、これで終わるはずがないというのが愛好家の気持ちである。今回の試飲で確認したかったこともそこにあって、同時にご進物用のものを頼まれたので見ず知らずの人にも勧められるものかどうかが課題であった。

グローセスゲヴェックスは予想外に繊細で、これで決まったと思ったが、顧客さんの各々に聞くと、やはりビュルガーガルテンに人気があった。酸が静かで落ち着ている分、酸が前面に出るヘッレンレッテンの方に軍配を上げる向きもあった。しかし個人的には深みと落ち着きがここのリースリング土壌の特徴であり、18ユーロとなるとキードリィヒャーやフォムブントザントシュタインなどの二年かけた瓶熟成の方を取る。酸が丸くなっていくだけの熟成はいただけないのである。

そして最終的には、予定通りグローセスゲヴェックスをご進物にした。決め手は皆がまだ飲み頃ではないというからだ。その中には、ビュルガーガルテンを新鮮なときに飲み干すという人もいたので、要するにミネラルとかそうしたものに無頓着な顧客も交じっている。つまりご進物で貰った人がリースリング通ならば飲み頃を考えるか、マイスターが言うように「試してみるのもよいだろう」ということになる。そして、早くクリスマスにでも開けようとするとするならば、マイスターのお勧めで「デキャンテーション」させるように言づけるのだ ― ナーヘのデンオッフ醸造所のようにクリスマスに飲めるというような早飲みのグローセスゲヴェックスはプファルツにはなかなかないだろう。2014年者は木樽は使っていないようだが、これだけでリースリングのグローセスゲヴェックスに対する意識が誰にでも生じる筈だ。VDP会長自称スポークスマンとしてはこれで満足である。グローセスゲヴェックスを自分用と合わせて八本、ブリュガーガルテンを四本追加購入した。



参照:
還元法は十五年も前のこと 2015-05-06 | 試飲百景
石橋を叩いての樽試飲 2015-06-08 | 試飲百景
猛暑が予想される今日この頃 2015-07-01 | 暦
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ヴァッヘンハイムでの試飲

2015-10-20 | 試飲百景
先週お客さんを連れてビュルクリン・ヴォルフ醸造所で試飲をした。2014年産はこの醸造所で一ダースも購入していない、そして秋の試飲会にも行かなかった。理由は簡単で、ストレスの苦みとそれに関して十分な見解が示されていないからだ。そしてなによりも昨年に続き先行予約割引が無くなり、こちらの欲しいものが売り切れてしまえば購入意欲が薄れる。毎年三ダースほど購入しているが、今年は頑張ってもそこまではいかない。なによりもドイツで最も高価であり、その質は高くともそれだけの価値があるかどうかが問題である。我々通の人間は絶対名前には一銭も出さない。それだけだ。

それでも、割引になるグーツリースリングはバイエルンのクライミングキャムプに持っていったように誰にでも勧められる。我々リースリング愛飲家からすると若干甘めだが、そのミネラルはそれほど悪くはない ― デーンノッフ醸造所のテロワー物ぐらいミネラルが分かる。それを先ずは試してもらうのが一番安全な推薦だと思ったからだ。

実際試してみる、と割引価格でこれと勝負できるリースリングは何処にも無い。そしてそれなりに熟成してきているが、それでも物足りない。何故ならば物足りなくなるような作り方がVDPの方針で、物足りなさと同時に上位のクラスに関心を持ってもらえるからだ。これはフランスのブルゴーニュシステムのビジネスモデルもそのまま習っているのだ。アプラーションコントローレで楽しんでしまえると、誰もより高価なワインは買わないからだ。要するに不味く造っているのだ。

そして次にオルツリースリングのダイデスハイマーを試す。そのテロワーの優雅さと薫り高さがあるが、割引が効かない。そこでヴァッヘンハイマーも試してもらう。大分柔らかくなっているが、まだまだ愛飲家向きのアイテムだ。そこで開いてきたゲリュンペルを試す。私も初めてだ。なるほど酸は大分丸くなってきていて、ミネラルの粉っぽくミルキーな感じが気持ちよく吟味できた。直ぐに予約確保した。

それに続いて割引が効くので、ヴァッヘンハイマー・ゴールトベッヒャエルも試す。これも今年初めて試す。例年ならば夏の間に数本消費しまっているアイテムで、私のハウスワインなのだが、今年は何本購入するかまだ決めかねている。それでも糖が抑えられていて、同時に薄つくりなので万人にミネラルウォーターのように清涼感がある。アルコールは十分だが、これとレープホルツ醸造所のオェコノミラートを比較すれば価格が勝負にならない。それならば、同価格帯になる競争激しいリースリングの数々と比較するとどうなるか?二年後その後の可能性に関しては同じ程度だ。勿論コルク栓で、二年以上の熟成の可能性を残してはいるのだが、同価格のゲルンペルの十年熟成するリースリングではないのである。五年はもってもその価値が無い。それは、この価格帯のリースリングの例外ではない。

なるほどその清涼感は楽しめるが、2014年のキードリッヒ、アルテレーベン、ビュルガーガルテン、フリューリングスプレッツヘン、フォム・ブントザントシュタインなどのラインガウ、ザール、ミッテルハールト、ナーヘ、南ワイン街道などの銘酒と比較すると個性が弱いだけでなく、二年以内の熟成が期待できないのである。たとえ天然酵母で都会的にクールで麗しくともこれでは価値に限界がある。それでも一二本試すだけならこれで十二分だ。

2013年のアルテンブルクは相変わらずで、2014年のグローセスゲヴェックスのガイスボェールも2013年以上には良くなかった。もう少し期待してよい筈だが、まだ今の時点では2013年の方が出来が良かった。理由は分からない。

先に書いたベルリナーフィルハーモニカーのアルブレヒト・マイヤーのリサイタルが、やはりブュリクリン・ヴォルフ醸造所のコンサートホールで開かれる。前日の教会でのものに続いて、昼飯つきで50ユーロとなっている。前の晩に泊まって、朝もう一仕事のようだ。醸造所にどんなピアノがあったか知らないが、スタインウェーのフルコンサートものがあったような記憶は無い。なるほどグライボーンのようにオペラを開催していた時期があるので、それようのピアノはあったのは違いないが、どうなのだろう。



参照:
あり得ない理想の達成 2015-06-01 | アウトドーア・環境
フェアートレードなあじ 2015-05-28 | 雑感
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ラインガウへの途上で

2015-09-27 | 試飲百景
ラインガウへと向かう途上、ラディオは伝えていた。VWがディーゼル車のリコールをするということだ。グループ全体で一千百万台ということはドイツ市場でも可也の数になるのだろう。そのなかで多くはVWの銘柄のようだ。

本来ならばEURO5で車検も通っているのだから、大都市圏でも問題なく進入でき、リコールなどの必要は無いのだが、政治筋がそれを求めたとある。これで、ドイツをはじめ多くのVWオーナーは落ち着き、満足するだろう。

そもそもあまり整備をしないからディーゼルが煤を吐くので、無料で調整や新たなカタライザーを付けて貰うならば、文句を言う者は殆どいないだろう。間違いなくクリーンになる。

それにVWやAUDIのネッツは本国ではとても充実していて、どこでも手軽に車を持ち込める企業力がある。近所の整備工場に持ち込むことで更なる販売網の充実ともなるのである。この辺りがVWグループの強さである。

今回の件は、EUのNoxよりもCO2の環境政策戦略と合衆国のそれとの代理戦争であることが分かる。TTPI交渉の前にパンチを食らわせておこうという反則技で、当然のことながら合衆国の盗聴やスパイ行為の一つの結果である。そして日本からの反響をそこに被せると、一体日本社会の特にマスメディアはワシントンの手先となってなにをしようとしているのかと思わせる。

さて、ロベルト・ヴァイル醸造所での試飲は、これまた価値があった。最近は年二回通うことで内部情報を得やすくなって来ている。彼是二十年以上のお付き合いだから、古い常連さんということでもあるので当然だろう。

先ずは、グーツリースリング、最初からデザートの甘いものを口に含んでいたので、酸が口の中の成分を溶解して薬臭い感じがしたのだが、春の鋭い酸が感じられない。裏エティケットをみると50となっていた。尋ねてみると、三回目の瓶詰めのようで、その分樽の中で熟れている。それと、次のキードリッヒのオルツリースリングを代わる代わる比較する。こちらの方がこなれた酸が効いていた。しかし同時に2014年の特徴である苦味も奥にあるような感じはある。それでも春の時に出来損ないの感じは全く無い。こちらも55なので三度目だろう。

感心したのは、クロスターベルクとテュルムベルクで、前者は最初に口にしたときにこれほどこの地所で好印象を受けたことが無い感じだった。しかし、後で戻ってくるとやはりこの地所のミネラルは鈍くて、田舎臭い。テュルムベルクの方もとても熟れていて、酸がむしろキードリッヒよりも丸い。いよいよ予約していたグレーフェンベルクである。流石に若いが、それでもその透明なミネラル感は予想以上であった。50%の木樽はとても成功している。

一方、期待していたシャルタの方は、雑味が気になった。出来上がりはキードリッヒよりも完成していたが、ストレートなミネラルの出方などを比較するようになると、薄つくりの「カビネット」とか称するものなどと同じで、今後とも醸造されていくのかどうかはとても疑問に思った。なるほどアルコールの低い「カビネット」などは日本などのアルコールに弱い地域向きに出されるのかもしれないが、その程度のワインはネゴシアンものにしていくのではなかろうか?しかしワイン産地では、スーパーで購入した人の評判も悪く、春も今回も口すらつけなかった。

結論は、2014年産は二年ほどかけて楽しむリースリングが良い。キードリッヒも先二年ほどは間違いなく楽しめるだろう。フォム・ブントザントシュタイン、ビュルガーガルテン、フリューリングスプレッツヘン、キードリッヒはとてもよい勝負をしている。グーツリースリングの13ユーロもとても微妙な価格で、「オェコノミーラート」のような個性は無いのだが、食事の合わせる幅が大きく、熟成してきたので可也良くなってきた。



参照:
木樽とその不可欠な効力 2015-05-24 | 試飲百景
我々のライフスタイルを代表 2014-09-30 | 試飲百景
血祭りに上げられるVW 2015-09-22 | 生活
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反動で動き出す週末

2015-09-21 | 試飲百景
足がしびれてから初めて走った。ゆっくりとゆったりと走るようにした。だから日曜日によく走るコースよりも、沢沿いの往復にした。雨がちだったので乾いてはいなかったが、躓くことも無く、滑ることも無く無事に走れた。復路では禿の親仁さんと擦れ違った。まだあの親仁よりは速いペースだろうか?走ったことで心理的には楽になったが、歩くとなると躓きそうになる。歩くよりも走る方が細かな調整をしなくても反動で足が進むということらしい。

週明けにはザールからリースリングが届くので、その前に先日のレープホルツ醸造所での試飲を記録しておかねばなるまい。先ずは、グーツリースリングで、これは我が家のスタンダードワイン「オェコノミラート」に比べると丸いのだが石灰的な酸味が嫌いだ。価格は殆ど変わらないが、その差は大きい。

さて、今年最も量を飲む「オェコノミラート」であるが、足り試飲に比べるも無く、春と比べても大分酸が収まってきていて、ミネラルの深みさえ出てきた。この価格帯における、2014年のドイツのリースリングにおける最高峰に違いない。

その上の「フォム・ブントザントシュタイン」も予想通りで、今も楽しめるがやはり二年先が楽しみだ。ミュラー・カトワール醸造所の「ビュルガーガルテン」とのよい勝負となるが、価格がやや高い分だけ当然かもしれない。これに対して、ビュルクリン・ヴォルフ醸造所のPCやロベルト・ヴァイル醸造所のシャルタヴァインなどがどれほどの勝負をするかである。

フランクフルター・アルゲマイネ新聞にヴィースバーデン試飲会での成果として触れてあった「ガンツホルン」であるが、今年が特別よいわけではない。それでも若干の貴腐感とともに甘みが残っている分、長持ちの可能性があると思って三本予約したのだった。その判断は正しかったであろう。

その他、ロートリーゲンス系土壌もそれほどではなく、石灰系はその特徴が強く出ている。その新製品「ビエンガルテン」は綺麗にその特徴が出ていて、角の立ったリースリングには不慣れな向きには美味しいだろう。その他では酸の綺麗なシャルドネのバリックなどそれらしいものがあった。

結局初めて「フォム・ブントシュタイン」を六本買いして、「オェコノミラート」も少し加えた。今後の購入量によっては最後のものを追加補給しないといけないか。いずれにしても、本年はプファルツと同じぐらい他所の地域のリースリングを購入することになるのだろうか。

合衆国が難民の一部を受け入れるというが、連邦共和国だけで年内の試算は百万人といわれる。せめてその数倍は受け入れるか、金を出せというのが、イスラム国の父イラクにもシリアにも手を出さなかったドイツの世論であるのは当然だ。手を出した日本がその一割ぐらいは受け入れても当然なのである。今後は年に百万人単位の難民を受け入れる責務を持つようになるのが日本である。



参照:
ネゴシェーションの政治力 2015-09-19 | 歴史・時事
飲み頃を探る試飲談話 2015-09-15 | 試飲百景
スローフードの塩辛さ 2015-03-09 | 試飲百景
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飲み頃を探る試飲談話

2015-09-15 | 試飲百景
金曜日の試飲について書き留めておこう。道すがら立ち寄ったデーノッフ醸造所では試飲できなかった。今年もリースリングは売り切れていた。余程、個人客ではなくて業者を通じた販売を心がけているのだろう。一種のネゴシアン制のようなものだ。もしかするとナーヘの古い醸造所の伝統なのかもしれない。そうなると春に目利きをつけなければいけないので、数年間は付き合わないとわからないだろう。当主と話していると、デルヒェンなどはこのクリスマスに十分楽しめるということで、三本も購入したのは間違いではなかったようだ。どちらかというと早咲のグローセスゲヴェックスの代表的な醸造所のようだ。確かに、春の樽試飲でも芽が出ていたので、パイロットとして目を付けたのだった。

それに比較するとフェルツェンベルクなどは瓶熟成などが前提となってようで。試飲会の時に話題となったことである。今年の正月に楽しめたということは2013年産はあまり熟成しないタイプであったということでもあるかもしれない。ここのグローセスゲヴェックスは基本的には五年ぐらいまでだろう。その意味からは、2014年産のヘルマンスヘーレは熟成が期待できる。2015年産も期待できそうで来年の試飲会までにはもう少し造詣を深めておかねければいけない。

試飲もないということで、シェーンレーバー醸造所の空箱を若旦那に見せてそそくさと車を出す。幹線道路に戻って予定よりも早くモンツィンゲンに着く。試飲して買う予定だった分のリースリングをそこで補うことになるので予算が増えた。最初からフリューリングスプレッツヘンは買える予定で、空箱をお母さんに渡して、蔵に降りていく。息子がいるべきところに先代がいて挨拶する。

またまた、アデナウワー醸造所の親父が酌をしていたが、キュンストラー醸造所にヴィルシング醸造所などと一緒に出掛けていると思っていたので驚いた。出張販売の多い醸造所のようだ。その親父とは、その後奥で垂直試飲つまり、古い年度のグローセスゲヴェックスを一緒に楽しんだ。2012年はまだ若すぎたが、甘みなどが分離してきているのでこれまた先が期待できる。まだ全く出来上がっていなかった。それでもあの甘みは最初にはなかったものなので、熟成の時を待っているものだ。

2010年産は、思っていたよりもかなり良かった。石灰も全く感じなく、色もそれほど黄色くない。酸の新鮮さが際立つ、今まで開けた2010年ものの最上位に入る。2009年は流石に酸が落ちていて、飲み干すべきだと感じた。2008年産は独自の酸が広がっていて皆の評判は良かったようだが、鼻に来る糞土の匂いは頂けない。それからすると2005年産のそれは微かであって、今まで開けた2005年産の中では最も綺麗に熟成していた一つだ。それでも十年は、流石に長過ぎるようで、大体この醸造所の瓶熟成の限界だった。

さて、2014年産は2012年と2013年の中間ぐらいか。それほど清潔な葡萄ではないが、PC相当のフリューリングスプレッツヘンで少しポトリティスを感じるぐらいだ。その点では2013年よりも質は高い。十分に楽しめるリースリングである。一方ヘレンベルクの方は若干苦味があって、上部のミネラールも麓の新しいハルガンツも苦味が交じる感じで、これも2014年の特徴であろう。要するにストレスがあるのだ。戻ってきた息子に聞くと、水に関しては古い木なら問題なく、新しいものには手を施ししたので、むしろ日焼けということらしい。オークション向けのアウフデアライも同じ傾向だ。

するとどうしても僅かの蜂蜜感があるフリューリングスプレッツヒャンのグローセスゲヴェックスもそれほど悪くはない。そしてヘレンベルクの2012年産リザーヴが久しぶりに面白かった。健康な葡萄からの残糖の残った古酒が楽しみになる。

一通り決めてからチーズを頬張っていると、どこかで見かけたチリチリの髪の親仁がいる。しかしどこで会ったか思い出せない。先方の方があまり意識していなかったので挨拶もせずに買い物を済ませて、ワインを抱えて車の方へと戻ると、ワイン街道ノイシュタットのナムバーの車が後側に停まっていた。そこでピンときたあの夫婦は山仲間の元大家さんで、ヴァッサーマンヨルダンの試飲会かで紹介されたのだった。そこで急いでワイン蔵に戻って話しかけてみた。奥さんこそ、となり町の出身でその土地をシェーンレーバー醸造所に貸しているのだった。またまたとてもインサーダーのお話になって、先代がそれを聞いていた。



参照:
石橋を叩いての樽試飲 2015-06-08 | 試飲百景
非常用の日常ワイン 2015-04-23 | ワイン
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刃物要らずの親方殺し

2015-06-11 | 試飲百景
バッサーマン・ヨルダン醸造所の醸造親方兼取締役員に思いがけない所でであった。久しぶりだった。ナンタルチア・サンタルチアだ。よりによってナーヘのデーノッフ醸造所の試飲会で会うとは思わなかった。私がしばらく顔を出していないことは知ってるか知らぬかは知らないが、久しぶりだということになった。当然だろう。どうもそこでの試飲は初めてであったようで、私も同じだ。少し話しているうちに、話は木樽の方へと向かった。私自身はそれを話題にしようとは思わなかったのだが、親方の方が私の顔と木樽は強く結びついているようだった。まるでこのブログを訳して熱心に読んでいるかのような錯覚にこちらが陥るほど、私の考えていることが分かっている。流石に当事者であり、専門家だ。私は初期のころから、なにも彼の仕事振りに関してはそれほど厳しい判断を下していなかったのだが、親方の方は我々従来からの顧客に裁かれているような気持ちは持ち続けていたのだ。そしてしばらく顔を見せないとなると、こちら以上に気にしている感じ察せられた。

親方も友達らと来ているようであり酒も入っていて、私も入っているので、機械摘みの話はしなかった。すると喧嘩になる可能性があると感じたからであり、そこまで立ち入る気持ちもない。しかし、トニー・ヨースト醸造所で彼の同僚のハウク取締役の話が出たことなどをした。そのような醸造所に出入りしているのかとか思ったかどうかは分からない。そして、瓶の栓の話へと流れていく。全て木樽の酸化工程と繋がる所謂瓶熟成の奥義へと話が流れる。「うちは10%ぐらいしかいかない」と吐き捨てる。それは「あなたのワイン哲学だから」と彼の就任当時のことを思い出しながら一定の理解を示す。

その横には、ゲスト醸造所のキュンストラー醸造所の親仁がこちらを見ている。先ほど試飲しながら「お隣のヴェルナー醸造所の顧客で、お宅にも十年ほど前に出かけている。」と話すと、「ご近所の付き合いで、町全部が一体になるのが大事だから」とその醸造の協力体制の話をしてくれる。これも彼にとってみれば町の古い醸造所の顧客となると自分がどのように見られるかがとても気になるようだった。

そしてそこにおいてあるリースリングにカビネットと書いてあるのを見つけて質問すると「うちの顧客はどうしてもそれに拘る傾向があって」と説明するので、「私はワイン街道から来ているのでね」と言うと、「どういう意味か分かるよ」と答える。その後の親方との出会いと話だったのだ。

ここで冗談めかして書いているが、これではまるでそのままどこの醸造所に出かけても「会長私設の隠密」と思われても致し方あるまい。ワインコンサルタントでもなんでもない私の発言がとても重い意味を一流醸造所のオーナーや醸造親方に投げかけていることを改めて気がつくのだった。

醸造親方は、オーナーの死去と相続後の状況についても肯定的に説明していた。そして尋ねると、ウンゲホイヤーがよいのではないかとも話していた。それなら近々伺うよと話した。勿論そこまで親方直々に推薦されたなら飲まずには入れないだろう。たとえそこで機械摘みの証拠ヴィデオを写していたとしてもである。勿論事情を質す事も必要になろう。

そして話を終えて様子を伺っていると、キュンストラーの親仁のところに行ってドムデカナイを幾らだと譲ってもらっている。隠してあったリースリングだ。そして尋ねている、「木樽の比率は?」と親仁は「60%」と胸を張って答える。

その後、これはと思って私も購入しようとするとそれが最後だったようだ。結局他のものを貰おうとすると現金がないことに気がついた。「送金してくればよく、ドムデカナイも送ってあげる」と言うが、先ずは「また近々ホッホハイムに伺う」ということで三本だけ持ち帰った。

キュンストラーのワインに関しては改めるとして、バッサーマン・ヨルダンの親方が面白いことを漏らしていた。ワイン街道と比較して、ナーヘの摘み取りは難しいことを向けると、「果実の成熟が遅いので、それはそれで利点もある」と答えた。これはとても意外だった。つまり開花から何週間か時差があることで、秋を長く使えるということになる。つまり酸の分解に功を奏するというのだ。勿論それは貴腐の入った甘口のリースリングを醸造する場合は通説であろうが、天候によっては2012年のように健康な果実から息の長い辛口も醸造できるということにもなる。



参照:
現場を掴んだ証拠写真 2013-10-13 | ワイン
F・芸術家と名乗る醸造所 2008-10-04 | 試飲百景
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石橋を叩いての樽試飲

2015-06-08 | 試飲百景
ナーヘのデンノッフ醸造所の試飲会にはじめて参加した。予想通りの賑わいで、明らかにシェンレーバー醸造所よりも顧客数が多そうだ。理由は知らないが評判がよいのだろう。ケルンやその他方々から来ているようで、専門家も沢山来ていたようだ。レープホルツ醸造所と勝るとも劣らない賑わいであり、あの山中にあれだけの人が押し寄せる権威は大したものだ。

ワイン街道からは100KMもないのでロベルト・ヴァイル醸造所に行くよりも近い。偶々工事でアウトバーンが込んでいて、回り道をしたが、それでも80分は掛からなかった。帰りは50分ぐらいだった。道を覚えてしまえばシェーンレバー醸造所よりも大分身近である。

さて、リースリングばかりを集中して試飲した。初めて口にするグーツリースリングは、その価格8,90ユーロが安いか高いかはなんともいえない。ただはっきりしているのはその価値相当のリースリングであることで、決してそれ以上のものではなかった。その意味からして少々肩透かしだった。シェンレーバー醸造所のグーツリンスリングの価値はまだあるだろう。

要するにVDPの進めてきたグーツリースリング、オルツリースリング、PC、GCはもはやブルゴーニュのそれとなんら変わらなくなった。リースリングもピノノワール同様それなりの質や満足感を得ようとすれば最低11ユーロ以上は出さないと愛飲は出来なくなったという事である。比較は難しいが、これならばモスバッハー醸造所のヘアゴットザッカーやビュルクリン・ヴォルフ醸造所のグーツリースリングの方が価値があるだろう。ワインの地所の質が全然違う。

次に「トーンシファー」と称する12,50ユーロを試す。これは土壌の名前を名乗るだけにそれなりにミネラル風味があって、だからといってトニー・ヨースト醸造所などのミッテルラインの下品さもない。2014年産はシュペートレーゼ系であると語られているが、漸くこの価格帯になって楽しめるうリースリングとなっている。しかし、この価格ならばザールの醸造所の品のあるミネラルや酸の方が価値があるだろう。

その次のクロイツナッハの「カーレンベルク」も更にコクがある。そしてその酸が結構前に出てくる。時間を置けばよくなるのかもしれないが、現時点では16,80ユーロの価値はないと感じた。これならば間違いなく、将来性もありそうなミュラー・カトワール醸造所のビュルガーガルテンがよい。

ロクスハイマーの「ホェーレンプファート」は、やや丸い感じで18,80ユーロの出来を感じさせたが、残糖が多めで、ペーター・ラウワー醸造所のアイラークップのウンターステンベルクと比較したい。実際の残糖は少ないのだろうが、酸が丸過ぎるのだ。どうも雑食砂岩ということだが赤みのあるということでは南ワイン街道にも似ている。そのとんがり感を隠すような醸造なので殆ど評価できなかった。

そして、先代や代替わりした息子そのお母さんなどの話を聞きながら、グローセスゲヴェックスの価値定めをしていると、そんなことなら試せばよいと先代がのたまう。こちらは樽試飲ができることなど知らなかった。さて、ここからが本番である。要するにその三つの地所がこの醸造所の本当のワインである。正直それ以外はどうでもよいと感じた。

さて最初は、昨年ただ唯一購入できたフェルツェンベルクの「フェルツェンテュルムヘン」である。これは正月に一本開けたが火山性の土壌とはいいながら決してどぎつい味とはならずにスパイシーさと可也繊細な酸が楽しめたのであった。それに比較すると2014年産は酸も荒く、スパイシーさがないようで、樽試飲とはいいながら物足りなかった。他の顧客もそう感じたようで飲み頃を尋ねていたが、「時間が掛かる」と息子が言い訳するので、私は「13年物は一概に楽しめた」と反論した。14年物はクラッシックという説明であったが、その違いも比べてみないと分からない。今年は一本あれば十分だ。

二つ目は「デルヒェン」で、ポルフィールということで、それなりの繊細さや構築感もあったが、気に入ったのは最後に立ち上る果実の幻で、これはとてもチャーミングだと思った。先代もそれは認めていたので、瓶熟成も上手くいくかもしれない。三本パイロットワインとして注文しよう。

三つ目は、この醸造所最高の地所「ヘルマンスへーレ」で、そこの醸造所も有名であるが、鞍部のような場所に広がる地所である。作業効率はよさそうだが、それだけの価格を取れるのは何故か。グレー系のスレート土壌らしいが、そこに隣の火山性のそれが混ざることから複雑性を獲得しているようで、丁度プファルツに当てはめるとキルヘンシュトックの複合性のようなものらしい。実際に樽試飲すると、瓶熟成で広がってくるものは可也ありそうで、シェーンレーバー醸造所のヘレンベルクなどとは比較にならない複雑味がある。しかしその価格39,50ユーロは2014年産にそこまでの品質があるかどうか分からない。先ずは二本位確保しておいて瓶熟成をさせてみよう。

甘口もゴールトカプセルと称するアウスレーゼを試したが、9Gと僅かな酸で糖もそれほどではなかった。アイスヴァインの収穫できなかった2014年産であり、甘口に関しては特筆すべき年度ではなかったろう。但し、ヘルマンスヘーレのテロワーが綺麗に出ていて、流石に安物の甘口とは一線を画している。但しそれほどのパワーがあるわけでないのでハーフサイズで27,50ユーロもするなら、グローセスゲヴェックスの方がはるかに価値が高い。

その他のゲストやゲスト醸造所については改めて述べる価値がありそうだ。思いがけない人にも出会う。それにしてもナーヘ川に掛かる古い石橋を渡って町に入るその鄙びた雰囲気は、試飲会の招待状に静かな環境で試飲と書いてある通りだ。そこに足を運ぶことが必ずしも億劫ではない醸造所、但し購入するワインの在庫があればということになる。2014年もそれほど収穫量は多くはないようだった。



参照:
氷葡萄酒の名匠のお屠蘇 2015-01-03 | ワイン
ナーヘの谷へ戻る旅 2014-08-14 | 試飲百景
還元法は十五年も前のこと 2015-05-06 | 試飲百景
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