翔太を喰ってやる イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

３

中島と言い争っているうちに、バカだな。
あいかわらずだな、マグロだな。
と昔のアダナでいわれた。

そのことばに触発された。
こんどこそ誠のトラウマが鮮明に浮かんできた。
誠は全身が鳥肌の立つおもいだった。
中島を殴り倒したいのを必死でこらえた。

「バカはおまえだ。
同僚への配慮より、生徒のことをかんがえろ。
こんな遅くまで平気で生徒を立たせておくなんて、暴力とおなじだ」

……いまでもここに。
この教室に。
触れられるほど間近に存在している。
悪意。
嘲笑。
害意。
暴力の世界の住人。

この埃の微粒子にとけこんでいる。
暗いモノは生きている。
冷笑。
かぎりなく冷たい笑い。
刺をふくんだ笑い。
暗い、周囲を闇に閉ざそうとする暗いエネルギーの波動。

わたしを待ってものの気配をいまこそ感じる。

マグロ……おまえまだ生きていたのか。
おまえの、心は食いつくした。
よく自殺もしないで、生きているな。
おまえと結婚するような物好きな女がいたのか。
これが、おまえの息子か。
バカだな、マグロ。
まだわからないのか。
おまえは、おれには逆らえないのだ。
……逆らえないのだ。
おれはいつもおまえを見ているからな。
いつでもおまえのそばにいくことができるのだぞ。

こんどは翔太だ。
翔太を食ってやる。
翔太も食い殺してやる。

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