田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

日光植物園

2007-11-02 15:21:49 | Weblog


11月2日 金曜日 曇り
●裏見の滝の帰りだった。桟道が終わり、山道となった。そこでドングリを見つけた。背中にまだ相生の滝と裏見の滝を観てきた感動があった。ドングリには思い出がある。童謡の中に出てくるドングリではない。子供の遊び、オモチャとしてのどんぐりではない。悲しい話だ。食糧としてのドングリを昭和一桁生まれのわたしたちは、雑木林でよく拾い集めた。

●つややかに光る茶色の宝玉。まるで鋼のような光沢の皮の中に食べられる実がはいっているなんて信じられないかもしれない。このドングリの実で空腹を満たしたのだった。六十有余年ぶりで拾い集めるドングリはしかし、飢えをしのぐための木の実ではなかった。

●すこし艶をなくしたドングリから芽がでていた。ながく大地にあったので艶をうしなっている。そのかわりといったらおかしいが、発芽していた。
「ごめんな。せっかくここで自生しようとしているのに」
つまみあげた。ポシェットに入れた。わが家の庭にまきたい。芽がでているから
まちがいなく根をはって成長するだろう。

●おまえさんが大木になるまでは生きていられない。でも何年かは一緒だ。そんなことをドングリに話しかけていた。滝を観てきた達成感にわたしはこころが清涼となっていた。

●そうだ、日光植物園に寄ろう。唐突にそう思った。滝に触れ、ドングリを拾いこころがますます優しくなっていた。植物、とくに樹木に触れてみたい。

●イロハモミジの紅葉の写真で始まるパンフレットを買った。広大な敷地内を全域散策することはできなかった。木や草花に名札がついているので勉強になった。憾満ヶ淵をこちら側から観ることができた。三週間ほど前に、あの地蔵尊をカミサンがなんどもむきになって数えていたものだった。時が流れる。なにか老いると時間の流れが早すぎるようだ。

日光植物園から 憾満ケ淵 化け地蔵

        

日光植物園から 憾満ケ淵 霊庇閣