今回は、憲法改正後に金総書記が行った米国非難演説の全文 ( 青色表示 ) を紹介します。
「米国は韓国と共謀して、共和国に対する核武器使用を目的とする核グループを稼働し、明らかに侵略的性格の大規模核戦争合同軍事演習を再開した。」
金総書記が国名を省略していますが、敵対する「核グループ」の中には日本が含まれています。彼が大規模核戦争軍事演習と言っているのは、4月3日と8月21日に行われた日米韓3カ国軍事演習のことです。日本では「大規模核戦争軍事演習」と言わず、次のように言っています。
「朝鮮有事を想定し、原子力空母と原子力潜水艦が参加して行われる、米軍・韓国軍・自衛隊が参加する大規模な軍事演習」
日米韓の国民は政府とマスコミが発表する通り、朝鮮有事を想定した軍事演習と思っていますが、金総書記の演説を聞く北朝鮮の国民は、北朝鮮を狙う日米韓の悪辣な「大規模核戦争軍事演習」と信じます。金総書記が自国民を煽っていると言う人がいますが、むしろ逆でないかと思いました。演説の続きを読みますと、彼自身が日米韓の動きを恐れ、危機感を抱いているのが伝わって来ます。
「我が共和国が社会主義国家として存続する以上、自主と社会主義を抹殺しようとする帝国主義者たちの暴挙の核が地球上に存在する以上、( 我々は ) 核保有国としての地位を絶対変更することも、譲歩もせず、むしろ核武力を持続的に強化しなければならないと言うのが、我が党と政府が下した厳正な戦略的判断だ。」
社会主義者特有のまわりくどい表現なので、一般国民が即座に理解するとは思えませんが、言葉に込められた危機感は伝わって来ます。演説について、李氏が解説しています。
・金正恩は、今回初めて演説の中で明言した。
・核弾頭をできるだけ早く増やし、核打撃手段の多様化を実現し、多くの軍種に実践配備する事業を強力に実行していくと強調。
・つまり彼は、アメリカが持っている4000発以上の核を無くしたら、私たちも核を無くしますと言っている。
過激だけれど抽象的な彼の演説から、どうしてこのような具体的な事実が分かるのか。どうやら氏は、私の知らない多くの事実を韓国側から得ているようです。
・2023年1月、韓国国防研究所が発刊した「北韓の核弾頭数量推計」によると、ウラニューム・プルトニュームの核弾頭数は
* 現 在 ・・・80~ 90発
* 2030年 ・・・166発 ( 中国が現在所有しているのは240発なので、大変な数になると言える )
・2021年4月、米国レント研究所の「北韓の核弾頭数量推計」によると、
2027年までに ・・・
* ウラニューム・プルとニュームの核弾頭数は200発
* 大陸間弾道ミサイルは、数十発
* 核弾頭搭載ミサイルは、数百発 となっている。
・日本も対応を考えないと、ダメになるのではないか。
以上、金総書記の対米非難演説と李氏の解説を紹介しました。日本政府と防衛省・自衛隊がこうした事実を知らないと思えませんし、何の検討もしていないとも考えられませんが、大手メディアの報道は何もありません。
ここで私は、「ねこ庭」で7月に取り上げた伊藤貫氏の意見を思い出します。息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に、再度紹介します。
・韓国の世論調査では、国民の7割が核保有に賛成していると言う。
・このような状況を作り出したのは北朝鮮であるから、アメリカは北朝鮮を責めるべきで、韓国を責めてはならない。
・韓国は最近、SLBMつまり潜水艦からのミサイル発射に成功している。潜水艦からのミサイル発射は、韓国を威嚇する核保有国に対する一番の抑止力になる。
・私は30年前から、日本は核を持つべきで、その時は地上に置くのでなく、潜水艦に設置すべきだと言っている。何百回も言ったり書いたりして来たが、まさに韓国政府がその方向に進んでいる。
・僕は韓国という国については、慰安婦問題などで喧嘩を吹っかけてくるから辟易しているが、核の保有問題に関しては正しい認識をしていると思う。
危機対応のためには「憲法改正」が不可欠なのに、一足飛びに核保有を言う飛躍した意見に首をかしげました。岸田総理も、外務省も防衛省も、自衛隊の幹部もおバカさんだから核の危機について頭が回らないと罵倒するので、失礼な彼を「日本人のクズ」と言いましたが、危機意識は共有しています。
・日本も対応を考えないと、ダメになるのではないか。
李氏の心配も当たっていると思いますが、北朝鮮や中国の核の現状を報道しない不思議なマスコミを指摘することも重要でしょう。昭和62 ( 1987 ) 年に来日し、以来35年日本で暮らしているのですから、聡明な氏がGHQが残した「トロイの木馬」について知らないはずはないと思います。
今まで氏のことを在日コリアンの一人と誤解していましたので、この際もう一度最新のウィキペディアの情報を紹介し、訂正させていただきます
・1959 ( 昭和34 ) 年、中国黒竜江省の生まれ 中国出身のメディア史学者
・龍谷大学社会学部教授。本名は竹山相哲。
・両親は韓国出身で、1930年代に中国に移民した朝鮮族系中国人
・1982 ( 昭和57 ) 年7月、北京・中央民族学院(現・中央民族大学)を卒業後、中国共産党機関紙「黒龍江日報」記者となる。
・1987 (昭和62 ) 年に来日
・1998 ( 平成10 ) 年、日本国籍取得
李相哲氏の略歴を訂正し、複雑な過去を知るとなぜか気持ちが落ち着きました。なぜそうなるのかは、いつか機会があれば述べたいと思います。日本に関する沢山の課題はこれからも考えていきますが、とりあえずこのシリーズは終わりにいたします。