ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 47 ( 外交と軍事力と、氏の意思)

2022-04-19 13:03:38 | 徒然の記

 「尖閣諸島の問題について台湾と国交のない日本は、領土交渉ができない立場にあるが、」「さりとて中国との交渉を、台湾を差し置いて行うこともできないだろう。」

 日本の報道を見ている限り、江畑氏のような意見は出てきません。

 「尖閣問題で日本を脅迫しているのは、中国だ。」

 おそらくこれが99%の日本人の考えで、台湾が関係していると思う者はほとんどいません。敵対国は中国であり、台湾はむしろ友好国として胸に刻まれています。だから中国と台湾を同じように説明する氏に、意外感を持ちました。

 「しかも日本は、基本的には、こうした外交上の問題を武力で解決することをしないと宣言している。」

 武力で解決するにも何も、日本中が「平和憲法」の海ですから、行使する武力がありません。しかし氏は軍事評論家なので、自分の考えを述べます。

 「だが国固有の自衛権まで憲法が否定するものでなく、それは自然権であるとする考え方もある。」「〈降りかかる火の粉は、払わねばならない〉、とする政策もあるだろう。」「問題は、どこまでの事態を〈火の粉が降りかかってきた〉、と解釈するかである。」

 依然として私の頭にあるのは、領海侵犯を繰り返す中国で、台湾のことはありません。

 「尖閣諸島で言うなら、他の国によって軍事的に占領され、」「それが継続している状態なのか、それとも単に海上保安庁の船を接近させたら、」「相手の軍艦に阻止されたり、攻撃を受けたりした場合なのか。」「その状況になってみないと、想像することは難しい。」

 著書が出版されてから26年たった今、氏の予想の正しかったことを教えられます。

 「ただこれだけは、予想できる。」「ある国が尖閣諸島の周辺に、強力な戦闘力を持つ軍艦を常に配置すれば、」「それは海上保安庁の巡視船で排除することは、不可能である。」

 かっては中国公船が領海を通過するだけでしたが、現在は武器装備の艦艇が、2隻、3隻、尖閣の海に常時浮かんでいます。海上保安庁の巡視船は遠巻きに眺めるだけで、排除できません。

 「日本がそれをするべきと言うものではないが、」「もし日本が強力な戦闘能力を持つ艦艇  ( 海上自衛隊の艦艇以外にないが  ) を、尖閣諸島の周辺に配置する意思を持ち、」「その態勢を作れば、実際に常日頃から戦闘艦が配備されていなくても、」「他国はそう簡単には、尖閣諸島領有を既成事実化することはできないと言うことである。」

 平成21年に始まった民主党の鳩山政権は、沖縄の基地に反対し日米同盟に亀裂を作りました。菅政権では、海上保安庁の巡視活動を体当たりで妨害した中国船を、捕らえていたのに釈放しました。800万人と言われる中国民兵の一部が、漁船を動かしていたのですが、菅総理は国民に事実を隠しました。

 野田氏が尖閣を国有化しましたが、その後安倍政権になり、媚中の二階幹事長が中国に拝跪し、現在の状況作りに協力しました。それでもマスコミは反日左翼の民主党を応援し、安倍政権を叩き続けました。平成21年に難病のため、60歳の若さで亡くなった氏は、どんな思いでこの事態の推移を眺めていたのでしょう。

 「このような行為は当然ながら、外交政策と一体であり、」「外交のために軍事力を利用することに他ならないが、外交力が軍事力に根差すことは、」「今日なお、厳然たる事実である。」

 氏の意見が素晴らしいのでなく、これが世界の常識で、言わない日本が異次元の世界なのです。

 「日本が軍事力を外交の道具として使わなくても、相手が使用した場合、」「こちらは、有力なカードが一枚不足してテーブルにつかねばならないことを意味する。」

 現在の日本外交はカードが一枚不足していると言うより、外交そのものがなくなっています。馬渕氏のような憂国の士もいるのかもしれませんが、大勢としては「害務省」です。「平和外交」「全方位外交」では、日本の独立を諦めたことになると、氏は言外に述べています。

 「軍事力を外交の場でちらつかせなくても、力を持っていると言うだけでも、」「ある程度のカードとしての、意味を持つ。」「だが相手が、その相手がカードをテーブルに出すことはないと高をくくったら、」「カードを持っていても、意味をなさない。」

 自衛隊はカードなのに、出さないのだから意味がないと氏は言っています。憲法で動けなくしているから、自衛隊はカードにならないと私は拡大解釈して、息子たちに伝えます。

 「日本は尖閣問題をなるべく棚上げし、先送りしたいと考えているようだが、」「いつかは必ず直面せねばならない問題である。」「東シナ海における不審船による襲撃事件のように、一部は既に現実に動き始めている。」「覚悟しておかねばなるまい。」

 氏の説明はここで終わっていますが、覚悟の意味するものはなんなのか。それはただ一つしかありません。

 「憲法を改正し、自衛隊を他国のような普通の軍隊にする。」

 自分に都合よく解釈しているのでなく、これが私たちに伝えたい氏の意思です。

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