ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 43 ( 不思議な国インドと日本の比較 )

2022-04-07 21:55:43 | 徒然の記

 200ページ、「南アジア諸国の民族紛争」に関する続きです。

 〈 パキスタン  〉

  ・カラチを中心にシンド州に住むシンド人と、北のパンジャブ州を中心に政治・軍事の実権を握るパンジャブ人との間に、根深い対立がある。

  ・シンド州では、インドから移り住んできたイスラム教徒のモハジール人が、政治勢力の拡大を目指し、シンド人やバタン人と対立している。

  ・バチスタン州にはアフガニスタン系のバルチ族も住み、分離独立運動を起こしている。

 シンド人、パンジャブ人、モハジール人、バタン人と、耳慣れない民族の名前が次々と出てきます。どういう民族なのか知らないため、読んでも頭に入りません。氏の説明を読みますと、民族が同じなら宗教が違っても同じ土地に住み、一緒になって独立運動をしています。

 対立は宗教の違いから生じると思っていましたが、異民族間にいさかいが生まれる方が先で、過激派活動になるようです。同じ国に住んでいても、民族が違うと、ほとんどが独立自治を目指しています。

 東南アジア諸国も南アジア諸国も、そもそもどうして異民族を包含したまま国を作ったのでしょう。力の強い民族が武力で支配し、有無を言わせず弱い民族を国民にしたとしても、長い間に融和しないのでしょうか。それとも険しい山岳地帯や、人の入らない密林の奥で暮らす少数民族が、知らぬ間にどこかの国に編入され、その強権に反抗しているのでしょうか。

  風俗習慣の違いや、言葉に強い方言があっても、日本に住んでいるのは日本人ですから、一つの国にまだら模様で異民族が点在している状況が、自分の経験にありません。在日朝鮮人の人々が60万人いて、いざこざが時に生じるとしても、彼らは過激派武装集団でありません。

 安い労働力を求める経済界のため、安倍総理が「移民法」を成立させ、アジア諸国から大量の移民を受け入れるようにしましたが、50年、100年経った時、国の安全を脅かす因にならないのかと、心配はやはりここにきます。他民族を排斥する心の狭い日本人と、冷笑されますが、子々孫々の不幸を考えますと、心の狭さとは違った問題であると思えてなりません。

 バングラデシュ、ネパール、ブータン、モルディブには、取り立てて言うほどの問題がないのか、氏の説明はここで終わっています。201ページ以後は、軍事面から見た南アジアです。

 「インド洋方面で、軍事的な脅威となりうる戦力を保持しているのは、」「インド、パキスタン、イランの3ヶ国だけである。」

 バングラディシュは人口が1億2千万人なので、日本とほとんど同じですが、世界の最貧国の一つであるため、国防予算も限られており、近代化も増強もできないと言います。

 「当面強力な軍隊を必要としない要因も幸いし、この国にとって最大の脅威は、」「今のところ自然災害である。」

  同国にはこれ以上深く言及していませんが、次の説明が心に残りました。

 「しかし注目すべきは、バングラディシュ軍の装備が、ほとんど中国製であることだろう。」「必要とあれば中国が、バングラディシュの基地を使用したり、」「補給支援を期待できることを意味する。」

 「ミャンマー、バングラディシュ、そしてイランと、」「中国は、これらの国との関係を親密化することによって、」「インド包囲網の完成と、通商路の安全確保を着々と進めている。」

 タイトルは「南アジア諸国の民族紛争」ですが、内容は隣接するパキスタン、イランによって引き起こされる紛争の影響にありました。

 南アジアでの唯一の大国はインドで、インドを脅かしている唯一の国が中国です。中国と軍事的に対抗するため、インドが頼ってきたのが旧ソ連でした。核開発について、米国とカナダが支援していますが、初期段階で協力したのはソ連でした。米英仏の兵器も購入していますが、陸軍と海軍の兵器はメインがソ連製です。

 今回のウクライナ侵攻について、ロシア非難の決議に加わりませんでしたが、インドは不思議な国で、米英とも対立せずソ連とも協調しています。日本も真似をすれば良いような気がしますが、それは無理です。

 インドは南アジアで唯一の超大国で、自国を守る軍を持ち、核兵器を所有しています。日本は東アジアの小国で、アメリカの従属国で、軍隊もなく核兵器も持っていません。国際社会での発言力は、インドに及ばないというのが現実です。

 米国とEUは、大国であるインドを自陣に引き入れたいと機を伺っていますが、日本にはその必要がなく、むしろ軍事的には役に立ちません。江畑氏は、ここまであからさまに説明していませんが、言外のメッセージとして受け取れます。

 次回は「超大国インド軍」と、「バキスタンの核開発」に関する氏の意見を紹介します。

コメント (3)
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