今頃こんなことに気づくのは遅すぎるのだろうが、自分には大きな発見だった。
林氏の「東亜百年戦争」の理論に立つと、日本の歴史が一本の糸で繋がる。敗戦後に語られるようになった「軍国主義日本のアジア侵略」とか、「天皇制独裁国家の野望」などという批判がいかに的外れなのかも分かる。
先の大戦を、連合国側は太平洋戦争と言い、日本の保守は大東亜戦争と言うが、普通の日本人なら林氏の理論を正として考えるのが妥当ではなかろうか。
なぜ日本はあんな無謀な戦争をしたのか。日本の指導者たちは、なぜ国を破滅させるような戦争に突入したのか。
その理由は、「ライシャワー史観」や、まして左翼の「毛沢東史観」や「スターリン史観」では説明できない。
幕末の薩英戦争以来大東亜戦争まで、一貫して日本は、欧米列強の植民地化と戦ってきた。最後は無残に敗れたが、日本の戦争は常に「自衛のため」だった。日清、日露の戦争にしても、日本には一か八かの勝負だった。勝敗を度外視し国運を堵し、一丸となって戦争に突入した。
少し考えれば分かる話だが、いずれも運良く勝利した戦争というのが事実だった。
戦後の左翼系知識人や、アメリカに与する評論家たちが解説するように、大東亜戦争の敗因を、「無謀な戦争をした一部のバカな指導者たち」に求めるのは正しくない。
日本の歴史を一貫して眺めれば、「東亜百年戦争」という考え方が、日本の戦争を語る一番適切な理論ということだ。これが、一つ目の発見である。
二つ目の発見は、「日本の外交は、過去の失敗を学習しない。」ということだ。
外国人の永代借地権の撤廃が、やっと昭和17年に叶った。幕末に列強と結んだ不平等条約のため、87年間を費やしている。国内での反対を押し切り、鹿鳴館外交を進めた井上が失敗し、片足を爆弾で失った大隈が失敗したのはなぜか。
林氏が明快に説明している。
・井上と大隈が、「西洋植民地主義者」と「アジア征服者」の中に、「友人を求めようとした欧化的思考にあった。」 ということだ。
・列強は日本の友人でなく、話せばわかる相手でもなく、どこまで話し合ったところで植民地主義者であり、征服者だった。もっと赤裸に言えば、彼らは「有色人種」を蔑視している、白人だということである。
・不平等条約がなくなったのは、富国強兵で力をつけた日本が無視できない存在となったからに過ぎない。誠を尽くせば「改正」できるという考えが、甘かったのである。
・岡倉天心の言葉通り、「シンガポール沖における英国東洋艦隊の撃滅」のほかに方策は無かった。
平和外交推進者として称賛される幣原外交も、「ねこ庭」から見れば、井上・大隈と同じ轍を踏んでいる。軟弱外交と罵られようと叩かれようと、彼は欧米との協調路線を推し進め、更には敵対する中国にも協調した。
彼についてはよく知らないが、博愛主義の紳士だったのでないかと想像する。彼は結果として日本の国益より、他国との協調を優先したから私には認めがたい。
保守の人間は彼について人間性も軟弱だと酷評するが、軍人を相手に「軟弱外交」を推し進めたのだから、強い信念の政治家だと私は思う。そこは評価するが、他国に誠を貫き協調するというのは、歴史から何も学んでいない政治家ということになる。
幕末の政治家や思想家たちは、「日本を第一」と考え、国益のためにのみ他国との妥協をした。
幣原氏は井上・大隈の外交の失敗原因を手本にせず、「敵」に「友人」を求めた。欧米がどういう国なのか、中華思想の中国がどんな国なのか、日本を対等に扱う可能性があるのか。
つまり彼は、「過去から学習しない」政治家だったという発見だ。他国との折衝で心がけるべきは、「国益第一」で、誠や友誼や誠実は優先度の低い理念となる。国益に合致すれば、昨日の敵と握手し、国益に反すれば同盟国でも足蹴にする。良いも悪いも、これが国際社会の歴史的現実である。
今回大統領に当選したトランプ氏も、「アメリカ第一」を宣言している。国益に合致しないと判断したから、彼はTPPの破棄をした。前任のオバマ大統領が、関係国を無理やり加入させ、成立寸前まで持ってきていても、トランプ氏は簡単に切り捨てた。
政治家には、自分の考える「国益」が何にも優先するという見本だろう。
幣原喜重郎氏の間違い外交が、現在の政治家に受け継がれ、敵対国と協調し、敵の中に友人を見つけようとする外交がそのまま続いている。・・、これが二つ目の発見だ。
最後の発見は保守の誰が弁明しようとも下記の事実は、日本の中国への侵略行為であることだ。
1. 大正四年の「対支二十一か条の要求」
・北京の袁世凱政府に、日本が力づくで調印させたもの。
・日支親善も大アジア主義も、これで吹き飛んだ。
・火事場どろぼう的な居直り文書で、ここから中国の対日不信感が決定的なものとなった。
2. 昭和三年の満州奉天における張作霖の爆殺。
・関東軍参謀の河本大作大佐が実行し、田中内閣が総辞職した。
3. 昭和六年 柳条溝(湖)事件 満州事変の勃発
・関東軍参謀の石原莞爾中佐と板垣征四郎大佐が首謀して行い、満州国の設立につながった。
内容としては3項目だが、私はこれをひとくくりにして「中国侵略の事実」とする。つまりこれが、三つ目の発見だ。
中国はありもしない「南京問題」などをあげつらわず、堂々とこの三点を「日本による中国侵略」の証拠として、攻撃すれば良いのにと思う。江沢民も習近平も、なぜこれを歴史の争点として日本と争わないのか。
それには単純な理由がある。
こんな事件で日本と争えば、「抗日戦での大勝利」、「共産党による日本撃滅」という大ウソが、国民にばれてしまう。当時の共産党は日本軍から逃げ回っていたので、口が裂けてもこの問題を持ち出せない。
米国が東京裁判ででっちあげた「南京問題」に悪乗りし、捏造のウソで日本を攻撃しているのだから笑うしかない。
林氏の本を読んで、以上のことを教えられた。
「ねこ庭」では3番目の「中国侵略の事実」を発見しても、左翼政治家や学者、「お花畑」の日本人たちのように、反省したり詫びたり、日本を攻撃したりしない。悪かったと言わないし、言う必要もない。
「他国侵略の事実」を歴史から学べば、日本のしたことの何千倍もの事例が並んでいる。自分の国がした「他国侵略」を、どこの国が日本のように反省しているのだろう。どこの国が卑屈に腰をかがめているのか。
日本以外に、どこにもない。国際社会の常識が「相互主義」であることを思えば、日本外交が間違っている。
林氏の著作に接するまで、「ねこ庭」では「日本の悪業」「日本の間違い」について迷ってきた。40年間朝日新聞の読者だったお陰で、中国や韓国への贖罪意識が常にあった。
しかしやっと気がついた。敗戦後の日本は、米国の占領下で国への愛を捨て、日本人の魂と誇りを捨てた。たった一度の敗戦で、反日左翼勢力が日本の失敗を針小棒大に語っていたに過ぎなかった。
オーム真理教の信者たちの洗脳を笑ってきたが、そっくり同じことを敗戦後の自分たちがしてきたとやっと目が覚めた。
目が覚めたところで、夜が更けた。これから風呂に入り、床に入り、明日の朝「本物の目覚め」をしよう。
きっと爽やかな目覚めとなるはずだ。