OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

古い鉱物標本(その4)

2013年02月02日 | 鉱物・化石組標本
古い鉱物標本(その4)
An old set of mineral specimens: part 4



Fig. 10 標本11-15 scale: 5cm
Specimen 11-15: tuff, fusuline limestone, coral limestone, crinoid limestone, marble.

11 凝灰岩 伊豆國加茂郡澤田 (静岡県賀茂郡河津町沢田)
伊豆半島の下田の北に河津町がある。伊豆半島はほとんどが第三紀中新世頃の火山性の地層でできている。これもそうだろう。写真は西伊豆の松崎に見られる凝灰岩角礫岩の露頭。


Fug. 11 松崎海岸の凝灰角礫岩 2012年10月撮影。
Tuff breccia exposure at Matsuzaki, Shizuoka Prefecture,

12 フズリナ石灰岩 美濃不破郡赤坂 (岐阜県大垣市赤坂)
13 珊瑚石灰岩 美濃國不破郡赤坂 (岐阜県大垣市赤坂)
14 海百合石灰岩 美濃不破郡赤坂 (岐阜県大垣市赤坂)
これら3標本は、大垣市の金生山のペルム紀石灰岩。標本を販売した矢橋製作所はその麓にあるから、このあたりが充実しているのも当然。各標本も割合に良い化石が入っている。金生山は日本の古生物学研究の発祥の地ともいうべきところで、石灰石の採掘のため年々その形がかわってしまった。新幹線から見ると中央の鞍部が南北に大きく切り通されてしまった。金生山は陸貝(カタツムリ他)の生息地として県指定の天然記念物になっているし、ヒメボタルが市の指定天然記念物だから、石灰岩台地として保護されなければならないはずだが……。


Fig. 12 最近の金生山 2012年12月8日、新幹線から撮影。
A recent view of Kinshozan Quarries from the Shinkansen (2012.12.08)

フズリナを多く含むのは鮫帯と呼ばれる灰色の石灰岩である。珊瑚はもちろん四射珊瑚で、金生山から8種ほどの四射珊瑚が知られる(ほかに床板珊瑚もある)。うち6種類はWaagenophyllum 属のもので、標本もそう見える。一緒にフズリナのヤベイナが入っているから上部層のもの。海百合は白い霞帯の石灰岩。
ところで、フズリナと記してあるのは興味深い。現在の教科書でどうなっているか知らないが、戦時中にはおそらく英語を避けた「紡錘虫」を用いたであろう。戦後、「生物名はカタカナで」という変な原則のために「ボウスイチュウ」という表記をしたのは笑止。この組標本のころは、まだ「フズリナ」だったんだ。
私は、1957年8月に父と金生山に行った。名古屋から東海道本線の枝線である「美濃赤坂線」で終点に行き、そこから歩いたと思う。石切り場には立ち入らず、金生山神社の近くでウミユリを採集した。夏休みの最後で、ツクツクボウシがやかましいほど鳴いていた。その時の標本が今もある。初めての化石採集だったから、今でもその標本を見ることができるのはうれしい。56年前のものである。当時は上の写真のように中央部は抜けておらず、木の茂った稜線が左右続いていた。


Fig. 13 1957年採集の金生山ウミユリ化石 scale: 5cm
Fossil crinoids of Kinshozan limestone, collected in 1957

15 大理石 常陸國久慈郡真弓山 (茨城県常陸太田市真弓山)
常陸太田市の真弓山は、大理石で有名。「寒水石」と名づけられ、江戸時代から採掘されているという。標本は、明らかに板状にカットされた石材を割ったもので、切断面が3面もある。茨城から運搬された材料の不要部分で作ったものだろうか。金生山では、ビル装飾の石材生産もされている。矢橋製作所とは別の会社だが、矢橋大理石の工場が、駅の東にあった。広い敷地に多くの石板を積み上げていて、お願いしていくつかの板をもらってきたことがある。石材のほとんどは外国産であった。
(つづく)


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