まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ山復活させ隊 NEWSLETTER 912

2014年05月20日 |  マツタケの林地栽培 

 マツタケ山づくりの科学を連載していますが、早松と呼ばれるマツタケ(地域によってバカマツタケと呼称)について初めの頃に書きましたが、今年も4月21日に熊本県天草で市場に登場(熊本日日新聞).13g19000円で落札.
 同じ頃愛媛県しまなみ海道ものが東京に出た、キログラム当たり100万円である(写真1:朝日新聞デジタル 長沢美津子).京都錦のかね松さんにも愛媛ものが店頭を飾っている(5月19日).今年は、エルニーニョ発生で、冷夏予想が出ている.寒冷地で作物が育たないほどの冷夏は困るが、さほどでもないとすると、異常な秋にならないかもしれません.

1)
 
 5月23日(金)は、まつたけ山復活させ隊第440回活動日です。本日は、千葉大学 院生の小林 弘和さんが参加.

気温が高くなって来ました。熱中症やマダニなどによる虫刺され、そして事故に気をつけて、マツタケ山づくりを楽しみましょう! 各地で山火事が発生。私たちも昼食の準備に火を使います。火の後始末には十二分に気をつけて下さい。 
 
 午前10時に京都市左京区岩倉 村松 香川山(自称:下記の§活動拠点へのアクセスを御参照下さい)にお集まり下さい.本日の活動の様子は,三輪新造さんが当日夜に報告します。

 地元の岩倉村松保育園児童達が、散歩の途中、香川山BCに寄った.若い子供達は、見る物が珍しいらしく多いにはしゃいでいた(2,3).もう少し大きくなったら、マツタケ山づくりに参加下さい.

2) 3)

 BCの後の山では、新しい鹿の食害がなかったが、被害に遭ったアカマツは無惨である(4).ザイセンチュウ病の枯損は、一定の割合ですすんでいるが、最近穂先が虫害に合うケースが多い(5.フラスが見える).

4) 5)

 
 ジャガイモの花が美しい(6).昼食を準備ありがとう(7)! それをいただく皆さん(8)!

6) 7) 8)

まつたけ山復活させ隊の仲間である大月 健さんが、17日に癌でお亡くなりになりました.18日に通夜、19日に告別式が執り行われました.冥福を祈る.
 

マツタケ山づくりの話16

      <マツタケは、人による原生林の破壊によって登場し、人による里山林の破壊によってその生を終わろうとしている> 
 
 マツタケとはどんなきのこであるのか、次いでその生息地であるアカマツ林が含まれる里山林の危機と進み、日本ならではの発想「マツタケの生活する里山林」づくりを担う市民の運動を紹介して参りました。
 
 前回まで、マツタケの出ている(orだろう)林を確保しよう! その特徴をまとめてみよう! と話を進めて参りました。では手入れを!とはやる気持ちを抑えて、もう少しマツタケ山づくりの科学を学びます。急ぐ方は、トロント刊行の「マツタケ山のつくり方」を御覧ください。多くの図書館で購入戴きましたのでそこでお探し下さい。
 
 今回も、(株)トロント刊行(03-3408-1521)の「マツタケ山のつくり方」と岩泉まつたけ研究所の実践と大学の講義資料などを参照しつつ、その実際を書き進めます。
 少し退屈で堅い話が続きますが、マツタケとアカマツのことをよく知って作業することが間違いのないそして早道です。目を通してください。

マツタケ山づくりの科学
2)菌糸とは
形態的特徴
マツタケの胞子が発芽しやがて二核性の二次菌糸となる.一般的にいうと、二次菌糸の量的な増加(栄養生長)は質的な転換(生殖生長)を引き起こし子実体の形成となる.この過程がシイタケやエノキタケのように生物遺体を自分の必要とする養分に変換する酵素を産生するキノコ(腐生性キノコ)とマツタケのように有機物を分解する酵素を持たないキノコとでは異なっている.

 マツタケなどは生きた宿主植物の根を通して物質を摂取する.これらのキノコは菌根性のキノコと呼ばれる.マツタケも子実体を形成するためには、宿主の根は必要とするが、二次菌糸がホストの細根に感染して作られる菌根の増大抜きにはあり得ない.マツタケの生産量は春から秋にかけて増加したこの菌根量に左右される.
マツタケの培養細胞の形状は細くて長い(1~3×60~100μm)で、細胞と細胞は隔壁で区切られているが、担子菌類の特徴の一つであるクランプ(かすがい嘴状突起)を欠いている.ホストと一緒に育てると、クランプコネクションの形成が見られる.

栄養要求性
キツネタケという菌根性のキノコでは、アカマツの光合成の結果生産される糖類を摂っていることはアイソトープを用いた実験で確かめられている.マツタケは、アカマツの根にグルコースやフラクトースが存在するのでそれらの糖類を使っていると考えられる.マツタケの菌糸は、その生育にアカマツの根に存在しない物質も要求するので、そういった養分はその他の微生物の代謝産物として土壌中に存在するものを利用していると思われる.

 室内の実験では、グルコースやフラクトースやマンノースの資化能が高いがサッカロースのそれは低い.アカマツの根に豊富にあるセルロースやヘミセルロースやリグニン、菌糸中に多いキチンなどの資化性は全くない.有機酸も分解しない.このことは、菌根性キノコに共通な現象である.

 窒素源として、アンモニウム態チッソ特に酒石酸アンモニウム、アミノ酸の仲間のアルギニン、グルタミン、シトルリンやセリンを利用できる.微量要素として、ヴィタミンB1やB類の混合物が有効である.マツタケの系統間に多少の差は見られるが、その栄養要求性は関西のものにも岩手のものにも共通である.

生長温度
菌糸の生長に温度も大きく影響する.マツタケの近代的研究の祖 濱田 稔の実験がある(1974).京都市左京区岩倉 尼吹山で採取されたマツタケ(ストレイン No.54S)を用いたものである.

 菌糸の生育する温度領域は5~28℃にあり、7℃で生育させると菌糸が1mm伸びるのに48日を、20~24℃で3日ほどを、28℃で18日を要し、30℃ではほとんど伸びない.岩手県岩泉町で採取したマツタケを培地の成分を色々に変えて、初期pH=5.0、温度23℃で培養しても菌糸の生長は0.3~1.5mm/日程度であった.

 アカマツの根や葉や土壌の抽出物の添加はマツタケの生育を少し促進する.マツタケの菌糸の死滅温度は、35℃に3時間さらされると死滅し40℃ではたった8分で死んでしまう.胞子播種作業で、マツタケの胞子懸濁液を秋の強い直射日光に数分さらすことは非常に危険ですべての作業を徒労に帰すことになるので注意が必要である.

野外の土壌条件とは違った試験管のような閉鎖系の純粋培養の実験結果がマツタケの菌糸の本質を表しているかどうかは微妙な問題である.しかし、フィールドでの多くの観察の結果、知識が集積するに連れても室内実験が明らかにしたマツタケの生理に今のところ矛盾は見られない.

マツタケの二次菌糸はその子実体発生までの生育が宿主植物の存在に「絶対的」に依存しているように思える.

3)菌根の形成とは
菌糸が根に感染すると菌根
 直径0.5~1mmくらいのアカマツ細根の存在する土壌中にマツタケの胞子は雨水などによって運ばれる必要がある.あるいは、マツタケ子実体に群がる小動物の体表面に付着して移動することも可能であろう.

 落葉落枝層もしくは腐植層の中で、マツタケの胞子が発芽し原形質を融合、宿主の根に感染力のある二核性二次菌糸になったとすると感染可能なアカマツの細根ははるか下の土の中にある.そこまで菌糸を伸長させねばならない.林床に住む生物達はその大きな障害となるはずである.

 林床で発芽した胞子は途中で死滅するに違いない.マツタケの菌糸の寿命はこの状態では1日と考えられ、菌糸の1日あたりの生育速度を見てもアカマツの根への到達は寿命時間内では無理であろう.

 マツタケの二次菌糸は常に宿主の根にのみ接触できるわけではなく色々な植物の根に出会うはずである.両者の細胞壁に存在する認識機構が働き互いに親和性か不和合性かを判断するであろう.マツタケの菌糸は宿主の根にすんなりと感染侵入するのか激しい抵抗を受けるのか全く分かっていない.ネズの根の細胞にマツタケが感染した様子では、宿主が傷害を受けると酵素反応により抗菌性物質を遊離するタンニン化が皮層に激しい(黒っぽく見える).それを見てもマツタケは宿主から厳しい抵抗を受けていると思える.
続く

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ブログ左欄ブックマークのNIKONオンラインギャラリーを左クリックしてギャラりーに入り、活動風景を御覧ください.
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

§活動場所:京都市左京区岩倉村松町138-20 香川山 (京都バス停留所「岩倉村松」から北東へ450m徒歩6分) 
 活動開始は午前10時頃から、終わりは午後4時頃.自由参加可能 ただしコアータイム昼食時は必ず参加のこと.
アクセス:
京都バスの「岩倉 村松行き」に乗車.
このバスに乗車するには、
ア)JR京都駅七条口から(バス停「C6」番、所要時間約60分)
イ)阪急京都線四条河原町駅から(四条河原町交差点河原町通り北へ上ル東側)40分
ウ)京阪本線出町柳駅から(加茂大橋東詰め北へ上ル西側、約30分)
エ)京都地下鉄烏丸線国際会館から(3番出口からバスターミナル1番)約15分
(地下鉄烏丸線はJR京都駅、烏丸四条、烏丸御池、国際会館などに停車)

§参加費は無料;ただし、消耗品費は皆さんの浄財カンパで成り立つ、或いは必要に応じて徴收.メンバー参加者には、現在、食材費+消耗品費として400円を徴収.登録外参加者・見学者などは要500円(施設利用代などを含む).

§参加や見学希望の方は、ブログ画面左にあるカテゴリーから「まつたけ山復活させ隊とは」を左クリックでご覧下さる様にお願いします.
内容
まつたけ山復活させ隊の活動について 
§1 我々のまつたけ山再生運動とは? 
§2 まつたけ山復活させ隊に参加するには 
§3 私達のマツタケ山造り(作業方法の特徴)
§4 こんな活動をしています! 
§5 今年の予定と目標?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
まつたけ山復活させ隊活動日

予定日  2014年5月~6月
回  開催日  報告担当者  男厨シェフ

440 5月23日 金 三輪
441 5月31日 土 宮崎 京都精華大学 地域環境学(板倉 豊教授担当)受講生25名参加
442 6月06日 金 内田
443 6月14日 土 吉村   川崎
444 6月20日 金 榎本
445 6月28日 土 三輪

    11月7日(土)             京都造形芸術大学 環境学受講生 マツタケ山づくり体験 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
§カンパありがとう!  

§カンパお願い: 運営は皆さんのカンパで成り立っています!
         みやこ松茸・里山復活! 京都の文化・景観を守るために、里山林整備に努力しています.
   
カンパの振込先
 氏名:  まつたけ十字軍 代表 吉村文彦
 銀行名: 京都銀行 山科中央支店 口座No. 普通預金 3698173

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

§主 催
まつたけ十字軍運動
代表 吉村 文彦(マツタケ生態学)
京都市山科区御陵岡ノ西町38-27
090-6227-4305 matsutake10@gmail.com

香川理化学研究所
代表 香川 晴男

§共 催
京都大学マツタケ研究会
代表 大石 高典

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« まつたけ山復活させ隊 NEWSL... | トップ | まつたけ山復活させ隊 NEWSL... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

マツタケの林地栽培 」カテゴリの最新記事