のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

あぶらを自らつくるという提案(のらやま244/1503)

2016年04月28日 | グリーンオイルプロジェクト
三月中旬の三日間東京ビックサイトで健康博覧会というイベントが行われました。そこに農業生産法人ちゃちゃちゃビレッジが「土活で畑から健康経営をサポートします」というテーマで出展。「土活」とは土に親しんでいただき、都会生活で疲れた身体も心もリフレッシュし、明日からの創造的活動をしようというもの。すぎのファームと農産加工所かしわかあさんも協賛しています。
国内最大級の健康産業BtoB商談展と銘打っているイベントでなにするの?って感じですが、企業の福利厚生のひとつとして都心から近い柏で農作業体験はいかがでしょうか。体験だけでなく収穫したものを加工することもできます。それを御社のギフト商品にできたらどうでしょうっていうイメージです。社員を受け入れる畑はチャチャチャビレッジが準備。小ロットの農産加工はかしわかあさんが担当。すぎのファームは具体的な栽培作物としてヒマワリを提案します。<地あぶらで体も地域も健康に>というキャッチで、農地活用や耕作放棄地解消できる上に、景観形成やミツバチの蜜源を増やすことにもなりますよと呼び掛けました。
先日、健康博覧会主催者より来場者数が報告されました。連日、1万数千人ずつの方が来場され、農業生産法人ちゃちゃちゃビレッジには三日間で数十社から商品としてのヒマワリ油を求めたいという打診や、生産過程に関わることでオリジナルのギフト商品を作らないかという仕組みへの興味が示されました。予想以上の手応えです。

会場ではヒマワリ油をバケットの小片につけて試食してもらいました。「オリーブ油より癖がないね」とか、「心地よい余韻の残る油だわ」ってわざわざ印象を伝えに戻って来てくれた方も。「パンはいいからそのまま舐めさせて」とか、ヒマワリの種を常時、健康食品として食べている方からは「確かにヒマワリの香りがしている」とか、これまで食用油にこだわっていないものやヒマワリの種を食べていないものにとっては予想外の反応もありました。「モンゴルでもヒマワリは咲くかしら」というモンゴルからの方もいらしたし、「化粧品の原料とするほど大量に供給できる?」という香港からいらした方も。
以前はヒマワリ油というとリノール酸が高いということで敬遠されがちでしたが、リノール酸は少なく、酸化しにくいオレイン酸を多く含むよう品種改良されたヒマワリであること。オレイン酸はオリーブ油と同程度含まれていて、そのうえビタミンEはオリーブ油の10倍も含まれていること。何より、自分が食べる油の作る過程に自分が関われるんです。食用油国内自給率3%から脱却しましょうよ。
皆さん、初めて会ってお話するわけですが、もともと健康に関心をお持ちの感度の高い方々です。むしろ教えていただくことの方が多かったように思います。
マスコミ系の来場者から仕組みの提案に関心を持っていただいたことから、ビジネスモデルとしても可能性があるのかもしれません。こりゃあ、今年はヒマワリ油を増産しなければなりますまい。

君に託したい畑はいっぱいある(のらやま通信243/1502)

2016年04月28日 | グリーンオイルプロジェクト
まとまった耕作放棄地を解消して借用しようという“もう少しで還暦プロジェクト”。耕作放棄地の開墾作業が予想以上に手間取って、いつの間にか冬休みになっていました。
農家の知人には3人の男の子がいるのですが、なぜか中学生の3番目の子だけが農業に興味があるようです。夕方、友人宅をたずねると、その子が薪と思われるスギ木片にカンナをかけています。何しているのと聞くと、なんかかっこいいからという答え。これは期待がもてます。開墾地にまだクリの大木が残っていましたので、切り倒しにおいでよと声をかけました。チェーンソウで切り込みを入れて、最後の倒すところだけのこぎりをひいてもらいました。木が倒れた後はお約束のひとときの“樹上生活”
高い枝の上から彼は何を見ているのでしょうか。君に託したい畑はいっぱいある。

ようやく耕作放棄地の開墾作業の前半が終わりました。地表の樹木や草を持ち出し、あとは抜根、天地返し、整地と機械任せの作業となりますが、時間も費用も想定していた倍もかかりそうです。地主さんの理解をいただいて新しくできた畑を長くお借りしなければなりません。耕作放棄のままでは農地とは認められず、税金も雑種地扱いになるということは理解いただけますでしょうか。農地として管理しているだけで地主さんには利益があるということです。10年、20年、できれば30年といった期間お借りしてナシ畑にでもしたいと考えています。これまでも先輩たちから話しに聞いてはいたのですが、自ら40年あまりのナシ栽培の経験をしてきてナシの樹と栽培棚等の施設の寿命は同じということを実感してきました。ナシ畑の一部を全面的に改植するためには、栽培面積の他に、苗木を育成するような生産の上がらない畑が必要です。所有地ギリギリで栽培、経営しているような小農にはなかなかできないことだと思っていました。今回、近接地で遊休農地をお借りできるようなチャンスを得ました。チャレンジをしてチャーミングな事業経営にしたいと思います。
農業関係の新聞を見ていましたら、日本の土地利用型作物の生産性が停滞していて、世界各国との間で格差が広がっているという記事に目が留まりました。「面積は小さいながらも高い技術力と集約的な栽培管理で、高い収量を保持する日本農業」というイメージがひるがえされる研究成果があったという記事です。
水稲は東南アジアやエジプトで単収を増加させている中で収量増加率が低位に推移。小麦の単収は欧州諸国より低く、中国よりも増加率が少ない。大豆は80年代以降、収量水準が変わらない……。その理由として、アジア諸国や南米では経済成長に伴い農業への資本投下を拡充し、高温や日射量の多さなど有利な気象条件が生かされるようになったのではないか。
一方、日本は“世界でも特異的に”農地面積も労働力が減少し、農業投資、生産資材の投入も減少傾向にある。増産意欲が働く構造になっていない……。また、日本の食料自給率の低下要因が質的に変化していると指摘。90年代までは米からパンに変わったなど「消費構造の変化」だったが、2000年以降は「国内の供給力の低下」にあったといいます。
国内の食料は消費量が減少し供給量が上回っているから、農産物価格が低迷していると思っていました。ところがこう指摘されると、増産意欲も技術向上意欲もなくなっているのかも、と現場でしばしば思い当たることがあります。こういう現場では、当然、後継者が育つはずはありません。やっぱり農政が問題なんじゃない?

(2015年2月)

たかが五年されど五年 敬うべきは野の営みか人の生業か(のらやま通信242/1501)

2016年04月28日 | グリーンオイルプロジェクト
なにやら異様な光景です。地面には葉が落ち重なり、頭上には弦が絡んだような線が張り巡らされています。前方には雑木のような細い幹が見られます。5年ほど放置されたナシ畑のなかを“探検している”様子です。
わが家のナシ畑に隣接したところで担い手のいなくなったナシ畑50aがあり、そこを借用することになりました。。棚はまだ十分使えそうです。井戸もあります。活用してやらないのはいかにももったいない。
周辺にもまだ放置された畑があって、ナシ棚のないところなら大きな機械が入れます。ついでに周りの農地約70aも回復しましょうということに。ところが、そこは20年も30年も耕作放棄されていたところ。雑木はあるし、篠竹も繁茂しています。自前の機械では歯が立ちません。ハンマーモアを腕の先に取り付けた重機をレンタルしての作業となりました。


何十年も放棄されていた畑を借りなくとももっと条件のいい畑はいくらでもあるだろうにという声もありますが…。
理由の一つは、既存のわが家のナシ畑を守るために、周辺の環境も自ら管理したいということ。いや、しなければならないということ。近接地に廃棄物処理場ができて、その排煙で農業ができなくなった友人がいます。2haもまとまって屋敷畑があったのに、です。 
二つ目の理由は、後継者君(四代目)に開墾のようなことを体験させたかったこと。
わが家のナシ畑の半分は山林を開墾したところ。最初は三代目が高校生のころ、二代目が普通畑作からナシ作りに業態を変えようと奮闘していました。初代もまだ元気で木を伐りせっせと薪にしていました。三代目も休みになれば当然手伝うことになり、そのときに木の伐り方や薪の作り方などの基本を覚えた気がします。その後も10年ぐらいまえにナシ畑を拡張しようと山林を切り開いたことがあります。そのときは三代目が主体でやっていました。初代は新たに家を興し農家になるのに、木を伐り根を堀り出したそうです(当時はパワーシャベルなんてありません)。こう考えると、わが家は代々農地造成の土木事業をしてきています。
もっとカッコいいこというと、いま農地流動化といって中核農家に農地を集積しようという政策が進められています。農家として生き残るためには不可欠な政策のひとつですが、農業への企業参入の開放と連係します。と、ひとつ間違うと農家から農地を取り上げ、企業、大資本、場合によっては海外資本が保有することに。刀狩りならぬ農地狩り。命をつなぐ場の喪失、なんてことにもなりかねません。
70aもまとまった平坦な農地です。実際、不動産屋さんらしいひとがこの農地を見に来ていたそうです。守るか取られるか、競走です。まあ、そんなカッコいいこといったって、どうやって農地を守るの?ってことがついて回るのですが。
手間もお金もかけずにできるだけ少ない資本投下で最大の成果をあげたい。いま考えられることは景観作物か機械化の進んだ穀物生産か。景観作物に補助金でも出してもらえませんかねえ。それとも、いま農地に復元しているところは、ゴルフ場に隣接しているので春と秋に彩りある空間をつくるから、ゴルフ場からいくらか協力金を期待できないでしょうか。最近、元気な農家が大豆やソバなどを刈り取る汎用コンバインを購入して畑で穀物生産に取り組もうとしています。大豆なら豆腐屋さんとか、ソバなら蕎麦屋さんとか、菜種油、ヒマワリ油なら一般消費者の皆さんも買い支えてくれるような風潮や仕組みができると理想的なんですが。

(2015年1月)