のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

安いより美味しいことが正義なのだ

2014年01月03日 | 農のあれこれ
与えられたものを食べるのか
好きなものを食べたければ自分で作るかあるいは作ってもらうか
あなたの食べ方が将来の農業を決めるのだ
と問題提起している新書を紹介したのはちょうど一年前でした
永田照喜治 
『それでも食料自給率100%は可能だ 天才農業研究者のシナリオ』
小学館101新書

今度は選ぶ食べ物によって政治思想がわかり
それが国のあり方まで決めることになるという意欲的な新書です
速水健朗
『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』
朝日新書439

以前のコメの輸入問題で大騒ぎなったように
食で結びついていたはずの国民性が
安全への意識、環境保全への意識、グローバリズムへの価値の置き方などから
分断されつつあるという仮説です

食の世界を「地域主義かグローバリズムか」という軸と
「健康志向かジャンク志向(安さ・量重視)か」という軸による
マトリクスで評価します
地産地消、スローフード運動、マクロビオテック
有機農業、道の駅、ファーマーズマーケットなどを
「地域主義で健康志向」に位置づけ
それを支持する人たちを“フード左翼”と呼びます
対して、コンビニ、冷凍食品、栄養ドリンク、ファストフード
メガフードなどは「グローバリズムでジャンク志向」に位置づけ
それを支持する人たちを“フード右翼”と呼んでいます

フード左翼とは工業製品となった食を農業の側に取り戻し
安全で安心なものに引き寄せようとする人たちで
環境、エネルギー、テクノロジーの課題に対して
身の丈に合ったシンプルで本質的な生活を選択するのですが
たとえば有機農業は土地効率が悪く自然環境保護、持続可能性が劣っていて
都市生活者一人当たりのエネルギー消費量や
集積して居住し公共交通機関を使う都市生活の方がエコだと指摘します

放射能や狂牛病、遺伝子組み換えなどは心配する人はとことん心配し
気にしない人はまったく気にしない
現代においては宗教よりも食生活が信仰の対象になりつつある
恐怖は売り物になるが科学データは売れないと
著者はどちらかといえばフード左翼に批判的です

確かにフード左翼は多様性を持つ都市のごく一部のものであり
画一的な地方をはじめとしてフード右翼が
圧倒的多数を占めているのが現実でしょう

しかし著者は、フード左翼が現実的な左翼になるためには
協力(オープンソース)と競争(バザール)を取り入れ
有機農業を否定しない選択として遺伝子組み換えの技術を認めよと
提案もしています
実はと、著者は最後に告白します
実は右翼から左翼に転向しそうなのだそうです
なぜならフード左翼の方が単純に「おいしいし楽しいから」
おいしいは正義だとも言っています


昨日の午後
年始休みということで近くのコスとこまで行ってみました
コスとこは倉庫店と称する米国型の会員制マーケットで
大ロットの商品を安価で提供しています
会員登録も行列を作るほどの人出でしたが
いつもこんなに新会員がいるのかと担当者に聞いたところ
今日はいつもよりは少ないとのこと
開店半年たってもまだまだ増えているようです

量は多いけれど安いからとついつい買ってしまいそうです
米国製冷蔵庫や大型の冷凍ストッカーまで売っていますので
こちらもお求めいただければ買い過ぎても大丈夫って感じです
まさにフード右翼を象徴するような店舗です

コスとこの規模と物量に精神的にも肉体的にも圧倒され途中棄権
隣接したコメだ珈琲店で一息入れました
こちらは豪勢なモーニングセットで有名な名古屋発の喫茶店
コーヒー一杯400円ながら入り待ち行列ができているほどの盛況
近くのMドーナツやMドナルドにはあまり人影がなかったような

MドーナツやMドナルドは日常のお店であって
正月だからという事情もあるかもしれませんが
コメだ珈琲店の手作り感が評価されたのでしょうか
チェーン店にはちがいないのですが
とすれば、こちらはフード左翼?
どっこい、フード左翼も頑張っています


新書に戻ります

左翼だ右翼だといっても
30年後のあなたの食事を想像してみてください
と著者は問題提起しています
高齢者の食事は工場設備と見まがう製品によって作られていて
それがわれわれの未来食かもしれません
とちょっと怖い予想をしているのも気になりました