そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない



夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです
村上 春樹
文藝春秋


村上春樹氏に対して行われたインタビューを1冊にまとめた書籍。

ここで村上春樹氏が一貫して述べていることが非常に興味深い。
彼は小説を「結末など自分でも分からずに書き進める」というのだ(いくつか例外的な作品もあるが)
とくにこの書籍前半に収められたインタビューの多くが行われた「ねじ巻き鳥クロニクル」~「海辺のカフカ」の時期の作品は、結末がはっきりしないことが多いが、その理由を彼はそのように説明しているのだろう。
けだしなるほど、である。
それが本当だとしたら(まぁ本当なのだろうが)すごいことだ。
氏曰く「意識の奥底に自分でも認識出来ない暗闇があり、そこに勇気を持って降りていって、人間皆が共有しているなにか根源的な『物語』をすくい取ってきて文章化するのが自分の仕事」とのこと。
そのようにして書かれた小説だからこそ、理屈では説明出来ない「なにか」が全世界の人々の心を打つのだろう。
理屈でこしらえたストーリーではなく、人々が無意識下で共有している物語。
……うーむ、勉強になる。

そんな村上春樹氏。
インタビューの中で、将来的にはドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」のような総合小説が書きたいと述べている。
で、実際総合小説に挑んだのが、昨今話題の「1Q84 1~3」ではないかと推察するのだが、果たして成功しているのかどうかというと甚だ疑問だ。
だがとにかくこのインタビュー集の中で、村上春樹氏が述べているひとことひとことが、等身大で分かりやすいようでいて、同時に到底凡人には到達出来ない天才の境地に達しているようで、たいへん興味深かった。

ノーベル文学賞、いつ獲るのだろうか。
欧米での評価の高さを考えれば獲るのは100%確実なのだが、出来れば存命中に受賞して欲しい。
ノーベル賞は往々にして遅すぎるきらいがあるのだ。

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