そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない



タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)
カート・ヴォネガット・ジュニア
早川書房


爆笑問題の太田さんがもっとも愛する小説だと公言し、自身の事務所の名前「タイタン」の由来にもなったというSF小説。
太田さんが村上春樹の著作を酷評する際「ヴォネガットやフィッツジェラルドの表層を舐めただけ」と論じているという噂を聞きつけ、フィッツジェラルドはともかくとしてヴォネガットという小説家の本は一冊も読んだことのなかった僕は、彼の代表作だというこの「タイタンの妖女」を購入し読んでみた。
その感想。

読み終わったとき、ものすごく悲しくなる小説だった。
中身はハチャメチャだし、滑稽だし、ときとして爆笑を誘うのだが、なにかもの悲しい読後感。
村上春樹が「表層を舐めただけ」かどうかは分からないというかそれには異論があるのだが(村上春樹は十分に偉大な作家だと僕は思うから)フィッツジェラルドの小説と似た根源的なテーマは認めるし、それをこんな荒唐無稽なSF小説の中に落とし込んでいる点は素晴らしいと思った。
ひとことで言えば、愛される小説なんだろう。
こんな独創性と想像力に富んだ物語は、あとにも先にもなかなかないと思う。

とにかく、悲しい。
登場人物たちがみんな幸せであり同時に不幸だというこの世の有り様というものを示している。
人生とは、幸せでもあり、同時に不幸せでもあるのだ。
そして人1人の過去や未来にそれほどの意味はないのだ。

名作。

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