リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガイアの夜明けのBGM

2010年01月23日 15時39分35秒 | 音楽系
ガイアの夜明けのリュートBGMの詳細がわかりました。ガイアの夜明けの録画が一つだけ残っていましたので、楽譜を見て確認しました。昨夜ねらいをつけたとおり、間違いなく、No.17 Jeloymors. M.C.C.b. と同じディミニューションです。

曲の背景を書くと次の様になります。まず、一番元の曲は、Binchoisが作曲した三声の声楽曲、Je loe Amours です。この曲は当時とても人気があった曲でいろんな人が「編曲」(ディミニューション)を書いています。私が調べたのは、GhiselinとSpinaccinoでした。Ghiselinの「編曲」した曲名は、Juli amourとなっています。15世紀の声楽曲の「編曲」は、16世紀以降の音楽と概念が異なっていて、テナー旋律に対して別の声部を書くということを意味します。(テナー以外の声部に対して書くこともありますが)BinchoisのJe loe AmoursのテナーとGhiselinのJuli amourのテナーは同じなので、同一曲(元曲がBinchoisでテナー旋律に基づく編曲がGhiselinの曲です)と言えます。

Spinaccino(1507)のJuli amourは、Ghiselinをもとにしていますので、孫引きになります。だまっていれば後世の人からは、Binchoisのオリジナルから直接作ったと思われたでしょうが、正直に書いてあります。と言うか、SpinaccinoはひょっとしてGhiselinのJuli amourとBinchoisのJe loe Amoursの関係を知らなかったのかも。彼は結構いいかげんな造りのディミニューションを作っているので・・・(笑)

で、そういう編曲の一つが、das Buxheimer Orgelbuch(15世紀後半の成立かな?)と呼ばれている写本にある、作者不詳の「編曲」であるJeloymors. M.C.C.b.です。もちろんこの曲のテナーもBinchoisのテナーと同一です。この曲が日経スペシャルガイアの夜明けのBGMに使われていたわけです。この曲はオルガン用に書かれていて、五線譜とオルガンタブで書かれています。この曲をリュート二重奏で演奏しているのが、ガイアのBGMです。このM.C.C.b. というのが気になりますが、何なんでしょうねぇ。とはいえ、曲の出自が明らかになり、すっきりしました。森さん、岡田さん、いろいろ教えて頂きありがとうございました。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
スピナチーノ (balanso.k)
2010-01-24 15:39:56
こんにちは。
スピナチーノといえば、ぺトルッチの一巻と二巻があり時々弾いておりますが、リチェルカーレの曲想が一巻と二巻ではかなり違うように感じられます。一巻の方が断然内容豊かで好きなのですが、やはり一巻のリチェルカーレは詠み人知らずの作品なのでしょうか。
返信する
re (nakagawa)
2010-01-24 21:53:43
第1巻でSpinacinoの名前が入っていない曲は、彼の作品ではないのでしょうね。第2巻は全部彼の名前が入っていますから、書き忘れではないのでしょう。
返信する

コメントを投稿