リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

緑のシャコンヌ

2013年04月28日 14時41分37秒 | 音楽系
この曲が久保摩耶子さんに作曲してもらった「緑のシャコンヌ」です。音が少なくいかにもリュートの曲って感じの譜ヅラです。(笑)こんな二段譜7行くらいで6ページになります。演奏時間が大体19分くらいです。



緑の・・・とあるので、なんかエコな感じでほのぼのとした印象も受けますが、実際の曲はそういうのではなくなかなか手強いです。

この「緑」ということばはシューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の乙女」の「休息 Pause」と「緑のリボンで Mit dem gruenen Lautenbande」に出てくる緑です。「休息 Pause」にはラウテ(リュート)が出てくるんですよね。ですから、「緑のシャコンヌ」は、緑色をしているシャコンヌではなくて「緑のイメージによるシャコンヌ」ということです。

ちなみにシューベルトのこの歌曲が書かれた時代のラウテはもう既に過去のイメージがする楽器でしたが、でもそんなに遠い過去ではありませんでした。実際、最後のリュート奏者であったG・シャイトラーがなくなったのがちょうどその頃でありました。現代でいうとSLみたいなイメージでしょうか。もうすでに使われることはほとんどなくなったけど、まだ知っている人も何人かいるみたいな・・・

昨年末に楽譜を頂き、長い間この曲と「格闘」してやっと演奏可能な指使いをつけることができました。久保さんには一度ウチに来て頂きまして、和音の形を変更したり(させてもらったり)バスを上げたり下げたりする相談をいたしました。その後も少し「改訂」箇所が出てきましたので、また連絡を取らないといけません。でも、概ね書いて頂いた通りいけてると思います。久保さんはかつてユングヘーネルのためにリュート曲を書かれていますし、ギターの曲も何曲か書かれているので、撥弦楽器のソロ曲についてはよくご存じです。

いまシベリウスで右手と左手の指づかいを書いた版を清書しているところです。久保さんによるとこの曲を出版する予定だということですので、指使いをわかりやすく詳細に書き入れています。一般的にはタブラチュアで書いた方がすっきりと書けるのですが、この曲の場合はリズムが複雑ですし音域の幅があるので五線譜の方がすっきりと書けました。最初、タブに直し始めましたが、一般のタブラチュアセッテッティングアプリでは表現できない部分が多すぎるし、なんか見通しも悪いので断念した次第。シベリウスで指や弦の記号を入れても意外とスッキリしています。