リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュート奏者の悩み

2006年09月13日 11時21分09秒 | 音楽系
現代のリュート奏者は大抵2つ3つはリュート属の楽器を弾きます。(7コースルネサンス、10コースルネサンス、バロック、テオルボみたいに)でも仕事となると使う楽器をしぼっている人が多いみたいです。こういうのはある意味でオーセンティックなんでしょうね。昔のリュート奏者は基本的には一種類の楽器を弾いていたわけですから。ロバート・バルトはルネサンスも結構上手ですが、コンサートではバロックオンリーです。(以前会ったときは、ヴィウエラの録音をしようかな、なんて言ってましたけど)パスカル・モンテイユはフレンチ・テオルボばっかだし。今村さんも通奏低音はフレンチテオルボ、あとソロではバロックを使うようですが、彼のフレンチテオルボはニ短調調弦になっています。ま、要するにバロックリュートです。

ホピーはものすごく沢山の種類の楽器でそれぞれ録音していますが、実際のコンサートでは一定の時期は同じ楽器をずっと使っています。一つのコンサートで、バロックとルネサンスを弾くというのはやりません。彼はバロックはサムアウト(右手親指を他の指の外側に出して弾く奏法、ギターの奏法が一種のサムアウト)、ルネサンスはサムアンダー(右手親指を他の指の内側に入れて弾く奏法)なので、一つのコンサートでの切り替えは難しいんでしょう。ここ2,3年ルネサンスでサムアンダーばっかしてコンサートをしている彼は、レッスンの時私のバロックを取って見本を示そうとするんですが、「うーん、今指がルネサンスになっているので、うまく弾けん」なんて言うときがときどきありました。

最近の私はなんかすごく効率の悪いことをしています。この前のコンサートではルネサンスを弾いて、今度はルネサンスとアーチリュート、その次はバロックとアーチリュートでプログラムもみんな違う。特にルネサンスとアーチリュートの混在は右手の関係で大変です。バロックとアーチリュートの場合は、同じサムアウトで弾くのでその点はいいんですが、実は私が持っているこの2本の楽器、弦の幅が異なるのでバスを弾くときよく間違えるんです。(約1コース分の幅が異なりますから)それに弦長も差があるし。このあたりはなんとかせんといかんです。さすがにリサイタルでは1本の楽器しか使いませんけど。ま、慣れの問題もあるけど、負担が少ないにこしたことはありません。友人の中国人琵琶奏者なんか、使う楽器は1種類、ほとんど同じプログラムでコンサートをしています。ちょっとおもしろみはないけど、こういうのって効率的ですよね。こういう方向を目指したいですねぇ。