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日本のランドマークは原爆ドームと原発の廃炉

2012-08-12 00:03:55 | Weblog
8月6日、広島の「原爆の日」を迎えた。
日本は、広島の「原爆」に引き続き、
福島の「原発」にさいなまされている。

日本のランドマークは「原爆ドーム」と「原発の廃炉」。
原爆ドーム」。世界遺産。

1945年10月、林 重男氏撮影から。

メルトダウンした福島第1原発。2011年3月。

NY Timesから。

福島第1原発がメルトダウンする前の、
日本のランドマークは「富士山新幹線」だった。

外国人観光客用の絵はがき。TUTTLE POSTCARDSから。

2009年9月に、名古屋のデパートメントで買った絵はがき。
日本を表す写真というと、「富士山と新幹線」になる。
「新幹線」は、日本の先端技術であり、
「富士山」は、日本の自然の美しさである。

絵はがきは、ほかに「金閣寺」、「松本城」、「すしとさしみ」があった。
いずれの絵はがきにも、鳥居(とりい)のマークが上部についていた。
鳥居は日本のマークのようだ。

1945年の「原爆」から半世紀以上たって、
世界第二位の経済大国に成長した日本に、世界は目を見張った。
ヨーロッパ人やアメリカ人は不思議に思いながら聞いてきた。
「日本は第二次世界大戦に負けて、壊滅的な打撃を受けた」
「廃墟の中から、急激に経済復興できたのは、なぜなのか?」
「ドイツの復興は、ヨーロッパ人だからわかるが、日本はアジア人なのに?」

そして、廃墟の中から復興した日本への関心は、
「日本へ行ったら、新幹線に乗って、富士山を見たい!」

「日本へ行ったら『東京タワー』を見たい」
と言って、日本に来る外国人はみたことがない。
「東京タワー」は、日本の独自文化とは思っていない。1958年建設。

「エッフェル塔」のマネだと思っている。

パリで本物を見ればいい。1889年建設。
日本まで、わざわざ来る必要がない。
「エッフェル塔」はパリのランドマークである。


2011年3月の福島第1原発の事故で、
日本といえば「福島の原発」に、
広島の原爆」がよみがえってきた。
日本を紹介するテレビ番組の絵として、
「広島の原爆」、「福島の原発」が使われる。

「原発」は人知でコントロールできるものではない、
ことを、福島は世界に示した。
汚染された故郷にもどりたいが、ムリだろうか?
福島に、嬉しいことがあるのは、いつだろうか?

「戦争」を起こすには、もうけた人がいるはずだ。
だから、戦争を起こした。軍需産業や財閥。
これらは、戦後解体された。

「原発」でもうけている人がいるはずだ。
電力会社や電機メーカー、土木・建設関係、
商社、自治体、研究開発機関(2,481億円)ほか。
「原発」はこれらの人のためにある。
これらは、原発事故後解体されていない。
税金をむしばむ巨大な利権構造になっている。

自治体には、多額の交付金や固定資産税が入り、
歳入に「原発マネー」は欠かせなくなっている。
「村おこし」のために、原発を導入したわけだが、
村の存続を賭けて、苦渋の選択で原発を選んで、
「交付金」にすがりついた。

1号機、2号機、3号機と原子炉ができるごとに、自治体に交付金が入り、
再処理の核燃料を使うと、また交付金が入る仕組みを作って、
自治体を潤してきた。
福島第一原発の3号機にMOX(Mixed Oxide、混合酸化物)燃料を、
使用するにあたっては、福島県知事の合意が得られていた。
なお、MOX(Mixed Oxide)燃料は輸入品を使用。

村には巨大な「箱物」ができるようになった。
立派な村役場、立派な小・中学校のほかに、
巨大な総合体育館、国体が開催できるじゃないか?
と思うような総合運動公園にはテニスコートやサッカー場、
野球場、多目的グラウンド、プール、観客席のついた陸上競技場。
ほかに、立派な図書館、福祉会館、博物館、歴史館、郷土館、
情報交流センター、生涯学習センター・・・。

一時期いいように見えた原発の交付金も、
原発災害で故郷を失うはめになると、
原発を導入した村の村長や議員は、
原発の導入を後悔している。
原発の「安全神話」は崩れた。
住民の生命や生活が脅かされ、
箱物どころではない。

「国策」だったからというのは、「満蒙開拓団」に似ている。
村の財政が立ち行かなくなり、満州に「分村移民」をして、
交付金をもらって、村の存続、建て直しをはかった。
そして、村人が犠牲となった。命と財産を失った。

研究開発機関の2,481億円とは、
大半は文部科学省所管の、
高速増殖原型炉「もんじゅ」や核燃料サイクル関連、
残りは経済産業省の新型原子炉開発への補助金である。
毎日新聞、2012年1月22日から。

「原発」でもうけている電力会社や電機メーカー、
土木・建設関係、商社、自治体、研究開発機関ほかは、
電力の中で、原発は0%か、20%か、35%にするか、
と仕組みを作って、原発の生き残りにやっきである。

核燃料サイクルの前提となる再処理の方が、
高コスト」であるということがわかっていても。
それに、「再処理技術」は確立されていない、
安全性」の確認がとれていない、
ということがわかっていても。

高速増殖原型炉「もんじゅ」は、
技術の確立と安全性から、
運転再開の見通しが立っていない。
「もんじゅ」は大きな事故をおこし、事故の隠蔽もした。
試験は何度も中断された、再開の見通しはない。
安全性の問題、技術的な問題が解決していないから、
「2050年代に高速増殖炉を実用化」するめどは立っていない。
核燃料サイクル」の見通しは立っていない。

原子力に偏重した予算配分が長年続いてきた原因について、
元経産官僚の衆議院での証言がある。
「原子力を何が何でも造るというのが自民党の政策だった。
その政策に公益法人や関連企業、役所と族議員による
利権構造がくっつき、一度できると壊せない」
毎日新聞、2012年01月22日から。

この原発の利権構造を、
現政権は壊すことができるのか? 注目している。
それに、被爆国であり、原発災害国である日本の決断は、
世界からも注目されている。

原発の「安全神話」は崩れた。
それに、「核燃料サイクル」の見通しはたっていない。
使用済み核燃料は処分する場所がなく、
「原発はトイレなきマンション」のまま。

日本人はあやまちを繰り返す。
東山魁夷画伯は、「ある美しかった国の物語」を書いた。

「東山魁夷画文集5」、新潮社発行、1969年。

「昔、美しい風景の島国が東方の海上にあった」
と、物語がはじまる。

「人々は、遠い昔から自然を愛し、
自然とともに暮らしてきた」

「こまやかな感覚を持つ女性の美意識が磨き上げられて、
今でも世界の宝といわれる優れた文芸作品が書かれた」

「ある日、西洋から黒い船がやって来た。
西洋の文明が押し寄せ、西洋におくれまいとして、
自国の優れたものを見失いがちなことが多かった」

「その小さな国と、ある大きな国との間に戦争が起こった。
空から降ってくるで、町という町は灰になってしまった」

「さて、それから後が問題である。
昔、中国の詩人が、国が敗れても山河はあると歌ったように、
はじめのうちは美しい自然はちゃんと残っていた」

「もう戦争はやめて、経済を発展させ、平和に暮らそうとした。
経済の発展に、前後のわきまえもなく、熱中した。
エコノミックアニマルと名前をつけられ、
その国の美しい自然をも食い尽してしまった」

「自然の開発とか観光ということも、
ただ目先きだけの利益で、
かんじんの自然美を護る心が見棄てられた」

泥海のそばの砂漠のような乾ききった土地に、
ただ四角な高い建築ばかりが建っていた」

「そこには、意味のない叫び声を挙げながら、
ただやたらに忙しく動き廻っている群集があるだけだった」

「昔、美しい風景の島国があったと、
今ではものの本に書いてあるだけである」
と、「ある美しかった国の物語」を閉じている。

それから、半世紀たった。
「ある美しかった国の物語」の続編はつぎにようになるだろう。
「経済のすさまじい膨張は、バブルがはじけると、しぼんでしまった。
世界のヒノキ舞台で、主役を演じてきたが、その座からすべり落ちた。
『日いずる国』と、もてはやされた主役の座は、30年だった」

「つぎの主役は、中国が演じるようだ。
アメリカやEUを訪れた中国の要人は、世界の発展のためには、
互いの協調が必要であると、大いに歓迎され、もてはやされている」

「島国の決定的打撃は、2011年3月11日に起きた。
東日本大震災原発事故である。
トヨタ、ホンダ、キャノンでもうけた金は、
箱物、道路、ダム、そして原発に注いできた。
それでも物足らずに、赤字国債を発行して、
ムダな箱物を造り続けてきた。国力は低下した」

「赤字国債のツケは、つぎの世代にバトンタッチされる。
膨大な赤字国債は、つぎの世代では返済しきれない。
さらに、つぎの世代までかかりそうだ。
原発の廃炉には、半世紀かかる。
廃炉には、国民の税金を使う」

「昔、美しい風景の島国があったと、
ものの本に書いてあったが、
原爆ドーム」と「原発の廃炉」が、
記念碑のように残されていた。
人々は、汚染された土地で、
汚染された空気にさらされて、
健康障害におびえながら暮らしていた」

これは、笑えない。
日本人がやってきたことだ。
日本は、どこぞの大国の植民地で、
宗主国の命令に従って、やってきたのではない。

東山魁夷の叫び、警告を無視してきた。
「日本には美しい自然があった」
「女性の美意識は世界の宝物だった」
「経済の発展に、前後のわきまえもなく、熱中した」
「そして、美しい自然をも食い尽してしまった」
「日本人は、なにをしているのだ!」
「早く眼を覚ませ!」

ポスト2011年3月11日は、変革するのか?
日本人は、試されている。
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