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『人を見捨てない国、スウェーデン』(読書メモ)

三瓶恵子『人を見捨てない国、スウェーデン』岩波ジュニア文庫

なんとなく福祉が充実している国というイメージしかもっていなかったが、本書を読んでスウェーデンの基本思想が理解できた。

著者は、現地の人と結婚して、長年スウェーデンに住んでいる三瓶さん。

本のタイトルにもあるように、スウェーデンでは福祉が充実していて、人を見捨てることはないという。ただし、条件がある。それは、ひとり一人が自立していること。

「自立とはなんでしょう?他からの支配や助力を受けずに、存在することです。言い換えれば、自分で自分の生活、生き方を決められることです。そのために大切なのは経済的自立です。(中略)税金と年金が一緒になっているので、ちゃんと働かないと年をとったときに支給される年金が少なくなってしまい、豊かな老後が過ごせなくなる、という仕組みをスウェーデンの若者は早いうちから理解しています」(p.4-5)

つまり、しっかり働いて税金を納めている限り、見捨てられることはない。

ちなみに、スウェーデンの所得税率は28~62%(日本は5~40%)、消費税は25%であるらしい。それでも、スウェーデン人は、減税のために福祉水準が下がるようり、福祉水準を保つために増税するほうがよいと考えるという。

なぜか?

「高い税金を支払っても、子育て支援制度をはじめ教育、年金、医療、高齢者福祉などのところで、きちんとした見返りが目に見えるので、納得した上で税金を納めています。言い換えればスウェーデンの人は老後やもしものときに備えて「国に貯金している」わけです」(p.91)

「国に貯金している」というところを読んで、なるほどと思った。

日本の場合には、貯金していると思ってもお金が戻ってこない危険性がある、と感じた。

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どうか今、あなたの道をお示しください

どうか今、あなたの道をお示しください
(出エジプト記33章13節)


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死の接近

老年になると気になるのは「死」である。キケローはいう。

「わしらの年齢を最も苦しめ不安なものにしているように見える第四の理由が残っている。死の接近だ。(中略)死というものは、もし魂をすっかり消滅させるものならば無視してよいし、魂が永遠にあり続ける所へと導いてくれるものならば、待ち望みさえすべきだ。第三の道は見つけようがないのだ」(p.63-64)

とてもシンプルな考え方である。

このような考え方で生きていきたい、と思った。

出所:キケロー(中務哲郎訳)『老年について』岩波文庫
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『老年について』(読書メモ)

キケロー(中務哲郎訳)『老年について』岩波文庫

最近、老いを感じ始めているので読んでみた。

古代ローマの政治家であり哲学者でもあったキケローが、老後の生活について書いたもの。出版はなんと紀元前44年である。

ちなみに、本書は、政治家の大カトーが若者に語りかけるという設定になっている。

「人生の行程は定まっている。自然の道は一本で、しかも折り返しがない。そして人生の各部分にはそれぞれの時にふさわしい性質が与えられている。少年のひ弱さ、若者の覇気、早安定期にある者の重厚さ、老年期の円熟、いずれもその時に取り入れなければならない自然の恵みのようなものを持っているのだ」(p.37)

この箇所を読み、「それぞれの年代に、それぞれの四季がある」という吉田松陰の言葉を思いだした(『留魂録』)。

では、老年期の円熟とは何か。

「老年にとって、いわば肉欲や野望や争いや敵意やあらゆる欲望への服役期間が満了して、心が自足している、いわゆる心が自分自身と共に生きる、というのは何と価値あることか。まことに、研究や学問という糧のようなものが幾らかでもあれば、暇のある老年ほど喜ばしいものはないのだ」(p.49-50)

野心から解放されて自分自身と共に生きることができれば、素晴らしいことだと思った。ただし、何らかの「糧」が必要となる。それを持っているかどうかがポイントかもしれない。

さらにキケローはいう。

「もしどなたか神様が、この歳から赤子に返り、揺り籠で泣くことを許してくださるとしても、きっぱりと断るだろう。言うならば、折角コースを走り終えたのに、ゴールから出発点へと呼び戻されるようなことはまっぴらだ」(p.76)

この考えには共感できた。ただし、人生というコースをどのように走ってきたかによるだろう。

本書を読み、充実した老年を生きるには、世間から解放されて自分を生きることができるかどうかが鍵となると思った。
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