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読書メモ「仕事で一皮むける」(金井壽宏)

神戸大学金井先生が書かれた「仕事で一皮むける」(光文社新書)を読み返した。

この本は、関西経済連合会に所属する企業19社の経営幹部20名の「一皮むけた経験」(44ケース)を紹介し、それを金井先生がキャリア論やリーダーシップ論から解説したものである。20名の経験談を通して、日本企業の特質や、日本企業(大企業)における管理職のありかたが見えてくる。

「一皮むけた経験」という概念には、「人の成長は、漫然と漸進的にゆっくりと進むのではなく、ここぞというときに大きなジャンプがある」という意味が込められている。個人的には、じっくり型の経験(自分では気付かないが重要な経験)と、イベント型の経験(印象に残る経験)の2タイプがあるのではないかと思うが、イベント型の経験が重要であることは確かだろう。

面白いなと思ったのは「日本では、非管理職と管理職の関係が曖昧で、かなり上級の管理職になってからマネジメントを意識的に学ぶ必要を痛感することが多い(65ページ)」という点。早い時期に明確な権限を持つ管理職を経験する欧米と違うところだ。学校の管理職(校長)や政治家もそうだが、年長になってからマネジメントを経験する傾向にあるように思える。センスがある人に対しては、早期にマネジメントを経験させることも大事かもしれない。

この本ではいくつもの「修羅場体験」が語られているが、そこに共通するのは、「真剣に誠実に相手と向き合えば、何とかなる」ということ。また、「何のためにこの仕事をしているのか」「今、何をすべきなのか」という仕事の本質を考えることが問題の解決につながっているようだ。つまり、しっかりと相手と向き合い、やるべきことを実行すれば、修羅場を乗り越えて成長することができるのだろう。

経営トップのリーダーシップと聞くと、いろいろと複雑なことをやらなければならないというイメージがあるが、金井先生によれば「①大きな絵を描いて、②人々を巻き込むこと」が大事になる。このとき難しいのは「トップダウンとボトムアップの摺りあわせ」だ。トップダウンばかりだと、指示待ちメンバーばかりになってしまうし、ボトムアップを待っていたら会社は変わらない。

と、いろいろと考える材料を提供してくれる本である。
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