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『スケアクロウ』(読書メモ)

マイクル・コナリー(古沢嘉通訳)『スケアクロウ(上・下)』講談社文庫

ひさしぶりにミステリ小説を読んだ。ハラハラドキドキで、グイグイのめりこめるところが、ミステリの良いところだ。

しかし、本書が一味違うのは、新聞記者の世界を実感できるところだろう。リストラ宣告を受けた記者が、最後に一発スクープをかましてやろうという気迫がすごい。それもそのはず、作者のマイクル・コナリーが記者出身だからだ。

えげつない殺人事件がテーマであるが、その記述が最小限に抑えられているところもよい。

なお、スケアクロウとは「案山子」のこと。ITを駆使して犯罪を犯す殺人鬼のあだ名であるが、この憎たらしい悪役が、この小説を盛り上げている。

ちなみに、主人公のマカヴォイは十数年前に大事件をスクープし、出した本がベストセラーになったのに加え、ラリー・キング・ライブにも出演した元有名人なのだが、その後たいした活躍がなかったためにリストラ対象になってしまった。このあたりは、一寸先は闇のメジャー・リーガーのようで、アメリカらしい。

本書で最も感銘を受けたのは、あと2週間でリストラという立場で、一発逆転のスクープを「俺が書く!」という執念でのたうち回るマカヴォイの姿である。単なるハラハラドキドキ小説と違うのは、その点にある。

こだわりと執念を持って仕事をすることの大切さを感じた。







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