goo

『こころの旅』(読書メモ)

神谷美恵子『こころの旅』みすず書房

ハンセン病治療に尽力した精神科医・神谷美恵子さんの書。

人間が生まれてから死ぬまでの過程において、「こころ」のあり方がどのように変遷していくかについて述べている。

初めは少し教科書っぽいな、と思ったが、徐々に「心にしみいるような文章」に引き込まれた。特に「病について」という章が印象に残った。

一番ハッとさせられたのは、痛覚が鈍くなり、怪我をしても気づかないことが多いハンセン病患者さんの言葉。

<痛い>ということは生を意味し、<痛くない>ということは死を意味する」(p. 174)

つらいことや苦しいことがあるのが人生だが、それがゆえに私たちは「生きている」といえる。

最終章「旅の終わり」に書かれている次の言葉もよかった。

「生命の流れの上に浮かぶ「うたかた」にすぎなくても、ちょうど大海原を航海する船と船とがすれちがうとき、互いに挨拶のしらべを交わすように、人間も生きているあいだ、さまざまな人と出会い、互いにこころのよろこびをわかち合い、しかもあとから来る者にこれを伝えて行くようにできているのではなかろうか」(p. 207)

こころのよろこび」を味わい、分かち合い、伝えることの大切さがわかった。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )