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『汚れっちまった悲しみに・・・』(読書メモ)

中原中也『汚れちまった悲しみに・・・』童話屋

中原中也の詩は初めて読むが、言われているほど悲しみや絶望を感じることはなく、むしろ自然体でマインドフルな詩が多いような気がした。

有名な「汚れっちまった悲しみに・・・」もかっこいいけれども、『嬰児』という詩がよかった。さわりの部分だけ紹介したい。

カワイラチイネ、
おまえさんの鼻は、人間の鼻の模型だよ、
ホ、笑ってら、てんでこっちが笑うと、
いよいよ尤(もっと)もらしく笑いだす、おまえは
俺の心を和らげてくれるよ、ほんにさ、無精に和らげてくれる、

(p. 144)

自分の子どもだろうか。その場の情景が浮かんでくるようだ。

『頑是ない歌』も心にしみた。以下は、途中の部分。

今では女房子供持ち
思えば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであろうけど

生きてゆくのであろうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこいしゅては
なんだか自信が持てないよ

(p156-157)

自分の気持ちを正直に綴った日記を読んでいるようだ。

30歳で亡くなった中也の晩年は悲しいことばかり続いたようだが、詩が彼を支えていたのだろう。そして、中也の詩が、多くの人を支えていくのだろう。






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