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『ライ麦畑でつかまえて』(読書メモ)

サリンジャー(野崎孝訳)『ライ麦畑でつかまえて』白水ブックス

大学時代に読んだ本だが、もう一度読みたくなったので、正月に読んだ。
(村上春樹訳ではなく、あえて野崎孝訳にした)

サリンジャーの語りかけるような文体に感銘を受けた大学時代と違い、やや「しつこい」と感じてしまったのは歳をとったせいかもしれない。

本作はペンシー高校を退学になったホールデン・コールフィールド(退学はこれで3回目)が、寮を出て家に帰るまでの数日間を描いたもの。自分の周りの生徒、教師、大人を「インチキ野郎」「低能野郎」とののしる一方で、すぐ憂鬱になってしまうホールデン。

そんなホールデンにも信頼できる人間がいる。まだ10歳くらいの妹フィービーである。

「兄さんは、将来なにになりたいの?」と問うフィービーに対し、「ライ麦畑のつかまえ役」と答えるホールデン(あまり書くとネタバレになるのでやめておく)。

心理学者のエリクソンによれば、青年期の発達課題は「「自分は何なのか?」「何のために生きているのか?」というアイデンティティの混乱を乗り越えることだが、ホールデンはまさにこの危機の真っただ中にいる。

しかし、本書のラストを読むと、ホールデンがこの危機を乗り越えつつあることがわかる。

中だるみ感があったものの、ラストに向けての展開は「さすが」だった。








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