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『ティファニーで朝食を』(読書メモ)

トルーマン・カポーティ(村上春樹訳)『ティファニーで朝食を』新潮文庫

表題作の他に、「花盛りの家」「ダイアモンドのギター」「クリスマスの思い出」が収められているが、どの小説も雰囲気が異なり、同じ作者が書いたとは思えないほどのバリエーションである。

「ティファニーで朝食を」のヒロインであるホリー・ゴライトリーは、いろいろな男に貢がせて生活している新人女優(映画の仕事はほとんどしていない)。同じアパートに住む作家志望の「僕」はホリーに憧れるが、まともに相手にはされていない様子。

カポーティが若い頃の経験をベースに書かれている本作は、軽妙な語りの中にも味がある作品である。ちなみに、訳者の村上春樹さんも指摘しているように、ホリーのイメージはオードリー・ヘップバーンとはかなり異なる。

本書の中で最も良かった作品は、6歳の僕と60歳の従妹の交流を描いた「クリスマスの思い出」。以前読んだときにも感動したが、今回もジーンときた。親戚をたらいまわしにされて育ったカポーティの少年時代の経験に基づいているだけあって、年齢を超えた友情が伝わってきた。

なお、カポーティファンである村上春樹さんの「訳者あとがき」も面白かった。



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