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『万葉集』(読書メモ)

角川書店編『万葉集』角川ソフィア文庫

万葉集に収められている4500以上の歌の中から、約140首を選んで解説してくれているのが本書である。

さまざまな歌がある中で、心に迫ってくるのは、やはり人の死を悼む「挽歌」。旅人と憶良の歌を紹介したい。

若ければ 道行き知らじ 賄はせむ 黄泉の使 負ひて通らせ」(九〇五 山上憶良)
(まだ幼いから、道がわからないだろう、贈り物をいたしますから、黄泉(=地下の、死者の世界)の使者よ、どうぞこの子をおぶってやってください)(p.159)

世間は 空しきものと 知る時し いよよますます 悲しかりけり」(七九三 大伴旅人)
(世の中は空しいものだと知る時こそ、いよいよますます悲しいのだった)(p.143)

このとき旅人は、自分の赴任先である九州で妻を亡くし、その後、妹の夫の訃報を聞いたらしい。

さらに、次のような酒の歌も詠んでいる。

なかなかに 人とあらずは 酒壺に なりにてしかも 酒に染みなむ」(三四三 大伴旅人)
(中途半端に人間であるよりも酒壺になってしまいたいよ。そうすれば、たっぷりと酒に浸ることができるだろう)(p.121-122)

旅人のやりきれなさが伝わってきた。



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