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世代継承性

高田渡さんの父・豊さんは、戦前、大学を出た後、就職せずに文学に傾倒していたらしい。

そして、出版社に勤めた後、内閣情報局関連の新聞に引き抜かれ終戦を迎える。戦後は、共産党員になったが脱党。奥さんが病死したのをきっかけに、田舎の屋敷を売り払ったお金で作った保育園を町に寄付し、上京する。東京では、肉体労働をしながら子供たちを養い、62歳で亡くなる。

そのお父さんが亡くなる2年前、『詭妄性詩集』という詩集を発行したという。

「この詩はみな今から約四十年まえ、私が十九かはたちのころに書いたものばかりです。それを今ごろになって、なぜ活字にしたか?実は私自身もいささかてれくさい気持もします。そして、それでいて私は、こういうみすぼらしい姿ながらも、これらの詩が活字になって一冊にまとまったことを喜んでいます。この詩集の一篇一篇には、私にはいろいろな思い出がまつわりついています」(p.36)

「自衛隊に入ろう」という反戦歌でデビューした高田渡さんは、思いっきりお父さんの影響を受けていることがわかった。

豊さんの思いは、息子・渡さんに受け継がれ、さまざまな歌(詩)となって世に出た、といえる。

高田親子の姿に、「世代継承性」の強さを感じた。

出所:高田渡『バーボン・ストリート・ブルース』ちくま文庫

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