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『うらおもて人生録』(読書メモ)

色川武大『うらおもて人生録』新潮文庫

まちがいなく、人生論の名著だ。

色川さんの持論は、「人生には全勝はありえず、せいぜい頑張って9勝6敗。いかに負けるかが重要」という考え方。プロのギャンブラーだった自身の経験から紡ぎ出された教訓である。

では、どうしたら9勝6敗の成績をおさめることができるのか?

その秘訣は「フォーム」にある。

「フォームといいうのは、これだけをきちんと守っていれば、いつも六分四分で有利な条件を自分のものにできる、そう自分で信じることができるもの、それをいうんだな」(p.98)

「これだけ守っていればなんとか生きていかれる原理原則、それがフォームなんだな。だから、プロは、六分四分のうち、四分の不利が現われたときも平気なんだ。四分はわるくても、六分は必ずいいはずだ、と確信しているんだね」(p.98-99)

「わるいときも、いいときも、動揺しないで同じフォームを守っている。だから六分勝てるんだからね」(p.99)

このフォームについて、王選手の話が印象に残った。

昔、王選手が最高潮の頃、広島の白石監督が「王シフト」を考えた。守備を右翼方面にずらすのが王シフトなのだが、左に流し打ちすれば簡単にヒットになる。その狙いは、王選手のフォームを崩すことだったという。

「ところが王は、流さずに、いつものとおりライトへがんがん引っ張ってきた。それで王シフトのもくろみは失敗でした、と白石はいってたな。どの道でもそうだけども、プロはフォームが最重要なんだ。フォームというのはね、今日まで自分が、これを守ってきたからこそメシが食えてきた、そのどうしても守らなければならない核のことだな。気力、反射神経、技、それ等の根底に、このフォームがある。まず、自分流のフォームをつくらねければならないんだがね」(p.94)

この部分を読み、確かに自分にもフォームがあることに気づいた。しかし、同時に、フォームを改良しなければならないことにも気づいた。







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