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『自分を知るための哲学入門』(読書メモ)

竹田青嗣『自分を知るための哲学入門』ちくま学芸文庫

いままで哲学入門なるものを何冊か読んだが、わかったようなわからないようなものが多かった。本書を読んで、はじめて哲学の意味が腹に落ちた気がする。

著者の竹田氏いわく、「哲学とは、要するに、自分で自分を深く知るためのひとつの技術(アート)である。あるいは、自分と世界(他人や社会を含む)との”関係”を深く知るための技術である」(p.38)

「哲学=自分を知るための技術」と言われると、「そうだったのか」と納得できるし、俄然、哲学に興味が湧いてくる

ちなみに、哲学には次の二つの大きな問いがあるという。

1)世界はいかにあるか、という世界認識の問題
2)「ほんとう」や「よいこと」とは何であるか、という真・善・美の問題

ソクラテス・プラトンによれば、「世界はいかにあるか」という問いを支えているのは、人間の精神の秩序の問題、つまり「いかに、善く、美しく、ほんとうにあるか」という問いであり、ここに哲学が探求すべき唯一の問題があるという。なぜなら、世界はそれ自体としての秩序を持っているわけではなく、心という原理がその秩序を作るからである。

細かい違いはるものの、カント、ニーチェ、フッサールも、「世界がそれ自体として何であるか」ということより、「人間(主観)にとって世界はどういう意味や価値として現われてくるか」という問いを重視しているらしい。

しかし、「何がほんとうで、何がよいことなのか」という問いは人々の間で一致するだろうか?

それは無理である。我々の日常生活や、世界の紛争の歴史を見ればよくわかる。では、どうすればよいのか?ここで登場するのが「現象学」だ。

現象学によれば、「ほんとう」や「よいこと」は、それ自体として存在するのではなく、主観(人間)の間で、「妥当、納得、相互了解」の努力によって導かれるという。つまり、「ほんとう」や「よいこと」は、人間同士の関係によって創り出されるのだ(p.70-71)。

具体的には、つぎの二つの条件が存在するとき、「妥当」が成立する。

1)何度確かめても、たしかに自分にはそのように感じられること(内在的確証)
2)それを他者が承認してくれること(共同的確証)

「大事なことはむしろ、自分と他人との関係のありようを知るということであり、それを通してしか、自分を深く知るということはできないと考えたほうがいい」(p.202)という言葉が響いた。

本書は、あくまでも竹田氏の解釈である。しかし、哲学を大つかみに解説してくれたことで、哲学が持つ意味がわかったような気がした。









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