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徒弟制 vs 短期育成

一人前の寿司職人になるには「飯炊き3年、握り8年」と、10年以上の修行が必要となるらしい。

そのすし職人を2ヶ月で養成してしまおうというのが「東京すしアカデミー」である。ちなみに受講料は83万円(1年コースは150万円)。日本だけでなく世界から生徒が集まっているようだ。

代表の福江誠氏は、経営コンサルタントとして寿司店を支援しているうちに、「今の徒弟制度だけでは、寿司職人がいなくなってしまう」と感じ、10年前このアカデミーを立ち上げた。

筋金入りのすし職人に「1ヶ月で誰でも寿司を握れるようにできませんか」と問うたところ「握るだけならできるでしょう。基本だけ集中して教えれば」という答えがあり、設立の決意を固めた福江さん。

従来の徒弟制度は「職人世界を身体で感じさせ、職人としての心構えや姿勢を教育してから握らせる」というアプローチであるのに対し、すしアカデミーは「とりあえず握れるようになってから、現場において、職人として一人前になる」というアプローチなのだろう。とりあえず握れるようになってから、そのレベルで止まるか、もっと上のレベルになるかは、本人の意欲や職場の指導次第である。

短期間に人を育成するプログラムを作るには、人が育つためのエッセンスを考え抜かねばならない。暗黙的だった知識やスキルは、わかりやすく言葉で説明することが求められる。

そういう意味では、短期育成に取り組むことは、教える力を高めるし、自分たちのノウハウを明示化して、技術を保存し伝承する体制を整えることにもつながる。

日本では「短期育成」をバカにする風潮があるが、やり方次第では徒弟制を超えることもできるかもしれない、と感じた。

出所:日経ビジネス2013年1月7日号p.78-81.


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