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『マルティン・ルター』(読書メモ)

徳善義和『マルティン・ルター:ことばに生きた改革者』岩波新書

宗教改革の主導者であるマルティン・ルターの評伝である。

あのような大きな改革なので、かなり強引な手法を使ったのかと思ったが、どうも違うらしい。

「革命がともすると社会基盤の破壊につながるのと違い、ルターの改革は破壊を呼び起こすことなく、社会の再形成をめざすものであったといえる」(p.138)

それまでのカトリック教会では、聖書はラテン語で書かれており、礼拝もラテン語で行われるため、一般民衆には何のことかさっぱりわからない状態だった。このような状況で、ルターは何をしたのか?

けっこう地味な改革である。

第1に、民衆がわかるドイツ語で説教をした。
第2に、キリスト教のエッセンスを平易な言葉で解説した本(パンフレット)をたくさん作った。
第3に、聖書をドイツ語に翻訳した。

つまり、それまで一般人に閉ざされてきたキリストの教えを、言葉によって解放したのである。これに加えて教会の慣習も変えようとしたのだが、決して急がなかった。

「「そうあらねばならない」という指示命令としてではなく、自分はこのように改革の一例を示すが、もっと良い策があれば各自試みてほしいという、おおらかなものだった」(p.138)

組織においてもさまざまな改革が行われているが、ルターのやり方は参考になるのではないと思う。本書を読み、「ことば」を大事にして「伝え・語るアプローチ」の大切さがわかった。



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