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『心星ひとつ みをつくし料理帖』(読書メモ)

高田郁『心星ひとつ みをつくし料理帖』ハルキ文庫

先日紹介した「みをつくし料理帖」シリーズの第6弾である。

これまでのあらすじを手短に説明しよう。

主人公・澪(みお)は、小さな料理屋で、さまざまな工夫を重ねて料理を作り、お客さんが喜ぶ顔を見ることに生きがいを感じる娘である。いつかは、つぶれてしまった奉公先の料理屋を再興して、女郎となっている幼友達を身請けしたいという希望も持っている。

一方、彼女は、店に来る浪人風の侍に恋をしてしまう。実は、この侍は、将軍に料理を出す御膳奉行という旗本。けっこう相思相愛なのだが、身分が違うためになかなか恋は進展せず。

しかし、この巻では状況が一変し、澪がこの旗本と結婚できる道が開かれる。ただし、料理の道を諦めなければならない。料理をとるか、恋をとるか悩む澪は、信頼できるお医者さんに相談する。このお医者さんのアドバイスが本巻のキモである。

「悩み、迷い、思考が堂々巡りしている時でも、きっと自身の中には揺るぎないものが潜んでいるはずです。これだけは譲れない、というものが。それこそが、そのひとの生きる標(しるべ)となる心星でしょう」(p.281-282)

ちなみに、心星(しんぼし)とは、天の中心にある星で、すべての星がそれを軸に廻っているとのこと。

「これだけはゆずれない」という生きる標は、キャリア論でいう「キャリア・アンカー」なのだろうが、「心星」の方がグッとくる表現である。

この本を読み「自分の心星とは何だろうか」と考えてしまった。


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