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『それから』(読書メモ)

夏目漱石『それから』新潮文庫

『こころ』も凄い本だったが、『それから』はあらゆる意味で「揺さぶられる本」である。

すこし前に『三四郎』を読んだけれども「ふーん」という感じで終わった。消化不良になったので、漱石の三部作(三四郎→それから→門)の第二弾を読もうと思い、あまり期待せずに手に取った。

『こころ』と同様、前半は少し退屈である。しかし、後半三分の一になるとスパートがかかる。「不倫」というテーマは嫌いなはずなのだが、そんなことは吹っ飛ばすくらいにグイグイと心に迫ってきた。

はじめは、「論理」の世界に生き、頭でっかちで行動を起こさない主人公・代助だが、徐々に「自然」や「感情」の力に飲み込まれていく。

人は論理と感情の二つのバランスを保ちながら生きているが、それが崩れたとき道をふみはずしたり、一皮むけて成長したりする。

本書を読み進めるうち「人は何のために働くのか?」「結婚とは何か?」「人生とは何なのか?」を真剣に考えている自分に気づいた。

自分の中の常識や価値観が揺り動かされたのは久しぶりの体験である。

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