goo

『黒い雨』(読書メモ)

井伏鱒二『黒い雨』新潮文庫

井伏さんといえば、教科書に載っていた『山椒魚』のイメージがあるが、なんだか作品が暗そうなので敬遠していた。

しかし、『あの人に会いたい』(「NHKあの人に会いたい」刊行委員会 )に登場していた井伏鱒二さんの明るい人柄が印象に残ったので、思い切って『黒い雨』を読むことにした。

工場に勤務していた主人公は広島で被爆し、戦後も後遺症に悩まされ続ける。比較的元気だった姪も、黒い雨(放射能を含んだ雨)に打たれたために、徐々に衰えていく。

本書の大部分は、主人公が記した「原爆日記」から成り、「原爆で即死した人、苦しみながら亡くなる人、当初は元気だが徐々に後遺症が出てくる人々」の様子が生々しく描かれている。

やるせないのは、被ばく患者を診察する医師や看護する方々が、患者に付着した放射能のため亡くなっていくこと。

「戦争を終結させるためという理由で、何の罪もない民間人を、ここまで残虐な方法で殺してもよいのか」「なぜ、広島と長崎の人々が酷い目に会わなくてはいけないのか。」

なかなか答えの出ない疑問が湧いてくるなかで、「とにかくこの事実を知ることの大切さ」「伝えていくことの重要さ」を感じた。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )