goo

『シクスティーズの日々』(読書メモ)

久田恵『シクスティーズの日々:それぞれの定年後』朝日文庫

定年後の男女44人の生きざまを追ったルポルタージュである。

旦那が定年になったとたんに奥さんが離婚を言い渡す「定年離婚」の話はよく聞く。この本でも似たような夫婦が登場するが、そのほかにもさまざまなバリエーションがある。

たとえば、「もうあなたの食事は作りません」と宣言する奥さんや、夫は二階、自分は一階で別居し、食事・洗濯するかわりに月8万円の報酬を受け取る妻。

また、若い女性に食事をおごることに喜びを見出す男や、年老いた母親を介護するために、東京に妻を残し、故郷の東北で生活する夫。

けっこう多かったのは、勉強ができて一流大学、一流会社に入った子供が引きこもりになってしまうパターン。

しかし、救われる例もある。

娘の子育てにアドバイスしたところ逆ギレされ、息子も家に寄りつかずに悩んでいた妻が「あっ、いたんだ、この人が」と夫の存在に気づいたケースには、ほっとした。

また、定年前には仲が良かったのに再就職問題で関係がこじれてしまった夫婦のところに、「ここに貯金の一千万円あるから中古マンションでも購入したら」と29歳の息子が申し出たケースなどは、子育ての大切さを感じた。

良い人生だったかどうかを判断する基準は、勤めている会社の知名度、出世、こどもの受験よりも、「夫婦関係や子育ての質で決まる」と感じた。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )