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ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

革命と情念

2014年04月11日 | 組織・職場の学習
フランス革命の中には3タイプのプレイヤーがいた。

貴族
ブルジョア(商人、弁護士等)
大衆


である。

貴族が既得権益を持っている人たちで、ブルジョアと大衆は既得権がない非貴族である。ブルジョアと大衆が手を組んで貴族を倒し、民主主義の社会を実現するのがフランス革命なのだが、その鍵を握るのがお金と教養のあるブルジョアだったようだ。

ただし、ブルジョアにも「貴族よりのブルジョア」「大衆よりのブルジョア」がいて、両者の駆け引きがあり、革命の方向性も揺れていたという。

なお、日本の明治維新のキープレーヤーは武士である。

『フランス革命』の著者である遅塚氏によれば、「フランス革命というのは、偉大と悲惨をともにそなえた人間の情念の巨大な噴出であった」(p.188)という。

鍵となるプレーヤーの「情念」「情熱」の大きさが、革命や変革のあり方を左右するのだろう。組織における変革も同じであるような気がした。

出所:遅塚忠躬『フランス革命:歴史における劇薬』岩波ジュニア新書



没頭させる雰囲気

2014年03月27日 | 組織・職場の学習
福沢諭吉が、大阪の適塾(緒方洪庵の塾)で書生をしていたときのエピソード。

塾はバンカラの気風だったため、塾生はいろいろと暴れまくっていたようだが、勉強はとことんしていたという

あるとき諭吉が自分の枕を探していたのだが、見つからない。

なぜか?

「これまで倉屋敷に一年ばかりいたがついぞ枕をしたことがない、というのは時は何時でも構わぬ、ほとんど昼夜の区別はない、日が暮れたからといって寝ようとも思わずしきりに書を読んでいる。読書にくたびれ眠くなって来れば、机の上に突っ伏して眠るか、あるいは床の間の床側を枕にして眠るか、ついぞ本当に蒲団を敷いて夜具を掛けて枕して寝るなどということはただの一度もしたことがない。その時に初めて自分で気がついて、「なるほど枕はないはずだ、これまで枕をして寝たことがなかったから」と始めて気がつきました。これでもたいてい趣が分かりましょう。これは私一人が別段に勉強生でも何でもない、同窓生はたいてい皆そんなもので、およそ勉強ということについては実にこの上にしようはないという程に勉強していました」(p.88-89)

勉強が面白くてしょうがなく、没頭していたのだろう。優れた人やる気のある人が集まると、塾全体がそうした雰囲気になることがわかる。これは優れた企業にも当てはまるような気がする。

人材を輩出する組織というのは、仕事や勉強に没頭させ、夢中にさせる雰囲気を持っているように感じた。

出所:福沢諭吉(土橋俊一・校訂校注)『福翁自伝』講談社学術文庫


30分の法則

2014年03月11日 | 組織・職場の学習
昨日、聞き上手の方と話していたときのこと。

相手が本音を語り出すのは、どのくらい経ってからですか?」

と質問したところ

30分くらい経ってからですね

という答えが返ってきた。

以前、別の育て上手の方に同じ質問をしたところ「30分」という回答だった。人の話を本気で聞こうと思ったら「最低30分は聞きき切らないといけない」ということだろう。

なかなか難しいことである。


悩みもがきながら進むこと

2014年02月25日 | 組織・職場の学習
1919年に、ドイツで生まれたバウハウスは、美術や建築を教える教育機関である。そこで生まれたデザインは、その後のモダニズムデザインの基盤となっていったという。

面白いのは、バウハウスが主義主張やイズムをもたず、矛盾を抱えたまま活動していたこと。その特徴を建築家の坂口恭平氏は、次のように述べている。

「教師と学生が、共々悩みもがきながら突き進んでいくという独自の教育」

確かに、スタイルや主義は大切だけれども、それが確立されてしまうと成長や進化も止まってしまうのかもしれない。

矛盾や不安や葛藤を抱えて「悩みもがきながら進むこと」は、何かを生み出し、創造するためには必要な要素なのだろう。

出所:坂口恭平「BAUをめぐる冒険:バウハウス・デッサウ編」『翼の王国』, 2014, No.536, p.100-109.

『茶の本』(読書メモ)

2014年02月14日 | 組織・職場の学習
岡倉覚三(村岡博訳)『茶の本』岩波文庫

本書は、岡倉覚三(天心)が、英語で書いた「The Book of Tea」の邦訳である。欧米に茶道の考えを広めるため、1906年に出版されたものだ。

冒頭に書かれた次の一文が、茶道の歴史を簡潔に説明している。

「茶は薬用として始まり後飲料となる。シナにおいては八世紀に高雅な遊びの一つとして詩歌の域に達した。十五世紀に至り日本はこれを高めて一種の審美的宗教、すなわち茶道にまで進めた」(p.21)

では、茶道とはどんな性質を持つのか?

「茶道は日常生活の俗事の中に存する美しきものを崇拝することに基づく一種の儀式であって、純粋と調和、相互愛の神秘、社会秩序のローマン主義を諄々と教えるものである」(p.21)

日常生活のつまらないものに美しさを見いだす、という説明がわかりやすい。では、なぜ日本は茶道を生み出すことができたのか?

そこには鎖国が関係している。

「日本が長い間世界から孤立していたのは、自省をする一助となって茶道の発達に非常に好都合であった」(p.22)

戦国から江戸時代にかけて、自国に閉じこもっていた日本人は「自省」つまり「内省」することで、独自の文化を造り上げたという。

なお、茶道は禅とも深い関係にある。

「茶道いっさいの理想は、人生の些事の中にでも偉大を考えるというこの禅の教えから出たものである」(p.53)

禅にしろ、茶道にしろ、武士道にしろ、「日本らしい文化」が生まれたのは、鎖国していた徳川時代のおかげ、ということになる。この本を読んで、自分のオリジナリティを醸成する上で「引きこもること」も大事かもしれない、と思った。


経験学習とPDCA(2)

2014年02月05日 | 組織・職場の学習
以前、改善活動に熱心に取り組んでいるIT企業のマネジャーさんから「PDCAを意識しすぎると経験学習が阻害される」という話を聞いたことがある。なぜなら、P(計画)を意識しすぎて、振り返りが狭くなってしまうからだ。

昨日、カイゼンで世界的に有名な企業のマネジャーさんが研究室に来られたので、この話を振ってみたところ、次のようにおっしゃっていた(だいたい以下のような内容だったと思う)。

「仕事で失敗したことがあるのですが、よく考えると、その時は、「目先の目標」のみを追っていました。もう少し「大きな目的」を意識していれば、業務の振り返りも適切になっていたと思います」

つまり、目標にもレベルがあって、短期的目標もあれば、ビジョンや理念のような長期的目標もある。P(計画)のときに、短期的目標だけでなく、長期的目標も意識することで、経験学習が豊かになるのだ。

少し見方を変えると、成果を上げる「業績目標」だけでなく、新しいことを生みだしたり学んだりする「学習目標」を立てることで、PDCAサイクルと経験学習サイクルが同期化するようになるのではないか。

ゴールの持ち方ひとつで学習の深さが変わってくる、といえるだろう。






粘着力

2014年01月22日 | 組織・職場の学習
『義経』を読んでいて感じたのが、現在の日本人の特色となっているものが、まだ平安~鎌倉時代には芽生えていなかったということ。

例えば「粘着力」。

「義経のこの当時、武士というものは勝ちに乗じたいくさでこそつよい。しかし、いったん浮き足だてば、いのちあっての物種ということばどおりわれさきにと逃げ散ってしまう。粘着力がなく、粘着力が日本の戦士の徳目にされるのははるか後生の、中世末期になってからである」(p.284)

歴史ものを読んでいて興味深いのは、国の文化の形成プロセスがわかる点である(もちろん、日本人の祖先の大半は農民や商人であり、武士の文化がどの程度日本の文化に影響を与えているかわからないが)。

逆に考えると、日本人の特徴である「粘着力」が、将来、失われる恐れもあるわけだ。日本人の強みを大切にしないといけない、と感じた。

出所:司馬遼太郎『義経(下)』文春文庫


生活をエンジョイするために働く

2014年01月08日 | 組織・職場の学習
またまた本田さんの本から。

本田さんは、会社のために働くのではなく「自分のために働け」「エンジョイせよ」と言う。

「君たちは企業のために犠牲になるな。自分の生活をエンジョイするために働きに来るべきだ。いかにエンジョイすべきかということの大きな課題を背負っておれば、互いに愉快に工場で働けるのじゃないか」(p.149)

経営者に対しても、次のようにクギをさしている。

「経営者に一番大事なことは、もちろん企業を大事にしなければならないけれども、それ以上に大事なことは、そこに働きに来る人たちは、それぞれ自分の生活をエンジョイするための一つの手段として来ているのだ、という意識に徹することである」(p.149)

今の若者は「仕事よりも自分の生活を大事にする」と非難されたりしているが、本田さんからすると「そんなことは当たり前」なのだろう。今から50年前に書かれたエッセイであるが、時代を超えて大切なことをおっしゃっていると感じた。

出所:本田宗一郎『俺の考え』新潮文庫


理論に裏付けされた夢としての「思想」

2014年01月03日 | 組織・職場の学習
昨日に引き続き、本田宗一郎さんの著書から。

本田さんは、技術よりも思想が大事だという。

「現在は技術革新の時代だとか技術者優遇ということで、技術が最高のもののようにいわれているが、私たちの会社が一番大事にしているのは技術ではない。技術よりまず第一に大事にしなければならないのは、人間の思想だと思う。金とか技術とかいうものは、あくまでも人間に奉仕する一つの手段なのである」(p.61)

ここでいう思想とは、ビジョンや理念のようなものらしいのだが、もう少し具体的である。

「いい経営とは、そうした若い人に夢をもたせることだ。漠然とした「少年よ、大志を抱け」といったものでなく、いわんや「勲章をつけて剣さげてお馬に乗ってハイドードー」なんかからは、全然正反対なのである。したがって「夢」はその背後に世界的視野に立った理論が裏付けになっていなければならない。どこの国にいっても通用する理論、それが若い人の夢を生む。さらにその夢が、世界市場どこに出してもひけをとらない製品をうんでいく」(p.175-176)

「理論に裏付けされた夢」としての思想が、人を成長させるのだろう。

出所:本田宗一郎『俺の考え』新潮文庫


まず30分聞くことに徹する

2013年11月27日 | 組織・職場の学習
先日、OJTのワークショップに参加したときのこと。困った若手社員を育てたマネジャーの事例を聞いていて「なるほど」と思ったことがあった。

困った若手の問題行動の背景には、それなりに理由があるのだが、その理由をしっかりと聞くことの大切さである。

そのマネジャーは、若手の話をじっくり聞いたところ、問題を起こす原因がわかり、それ以降は適切な指導方法をとることができたという。

ここで問題となるのは、若手はなかなか本音を語ってくれないという点だ。

「話をしてから何分くらいで本音を語り出しましたか?」と質問したところ、

30分すぎですね」という答えが返ってきた。

もちろん個人差はあるだろうし、聞き方にもよる。しかし、「まずは30分聞くことに徹する」というのは、わかりやすい「教え」である。

30分聞き続けることができるか。そこに育成の鍵があるように思った。