goo blog サービス終了のお知らせ 

ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

フィードバックのタイミング

2014年08月22日 | 組織・職場の学習
自分の仕事を振り返るとき、上司や先輩から適切なフィードバックがあると、学びが深くなる。

しかし、上司や先輩の側からすると、どのタイミングでフィードバックしたらよいのか迷うことが多いのではないか。よく耳にするのは「その場でフィードバックすべき」という考え方だ。

先日、看護管理者を対象とした研修の中で、興味深い事例を聞くことができた。ある方が、会議でプレゼンテーションをするように依頼されたときのこと。いろいろな人が集まる会合であったため緊張したが無事終了し、手応えもあった。

そして、翌日、上司から良かった点、改善すべき点を指摘され、良い振り返りにつながったという。

この方に「もし、当日にフィードバックをもらっていたらどうでしたか?」と聞いたところ、「当日は興奮状態にあったので、自分の中で振り返ったり、充実感に浸っていたので、あまり響かなかったかもしれない」という答えが返ってきた。

必ずしも、直後のフィードバックが良いとは限らないということだ。

「では、フィードバックが3日後だったらどうでしょうか?」と聞いたところ、「3日後は遅すぎますね。自分も落ち着きをとりもどし、記憶の鮮明な翌日くらいが一番良いかもしれません」という回答だった。

仕事の内容にもよるが、フィードバックは「直後~翌日」くらいのタイミングで提供することがよいのかもしれない、と思った。


仕事の任せ方

2014年08月05日 | 組織・職場の学習
先日、企業の部長さんたちと「仕事の任せ方」について議論する機会があった。

いわゆる「丸投げ」は避けたいし、干渉しすぎると、「任せられていない」「チェックされている」と思われてしまい、部下も成長しない。しかし、任せたのはいいが、実は仕事が進んでいなかったり、トラブっていた、というのも怖い。

では、良い任せ方の条件は何だろうか?

議論で出て来たキーワードは、「しっかり伝える」ことと「しっかり聞く」こと。

まず第1に、仕事を任せるとき、その背景、目的、方向性を「しっかりと伝える」ことが大事である。往々にして、任せた意図が伝わっていないことから、問題が生じることが多い。

次に大切なのは、部下がどのように仕事をしたいのかを「しっかり聞く」ことだ。しっかり聞くことができていれば、部下のアプローチに問題がないかどうかがわかるはずである。仕事の途中でも、「何かサポートが必要ではないか?」と親身になって話を聞けば、たとえトラブっていても何とかなる。

しっかり伝える+しっかり聞く=よい仕事の任せ方」といえそうだ。


相手の変化度を見る

2014年07月28日 | 組織・職場の学習
先日、某省庁の係長さん達を対象とした研修で、「どのようにしたら若手職員にポジティブなフィードバックを返せるか」という問いが出た。

そのとき、参加者からは「思ってもいない褒め言葉は言えない」という声もあった。ここで「思ってもいない」と感じてしまうのはなぜか?

それはたぶん、「自分を基準にしている」「他の若手職員と比べている」ために、「まだまだ不十分」と思ってしまうからである。

では、どういう基準で評価したらいいのか?

一つの視点は「本人の変化を見る」ということだろう。つまり、その若手の半年前、1年前の状態と比べて「前はできなかったのに、出来るようになったね」「前にくらべると早くなったね」とフィードバックする、というやり方である。

指導する相手の「変化度」を見てあげると、適切なフィードバックができるように感じた。


場のプロデューサー

2014年07月18日 | 組織・職場の学習
『人材マネジメント入門』の中で、守島先生は、経験と人材マネジメントの関係について次のように述べている。

「人材マネジメントの役割は、リーダー人材を育成するためのキャリアと経験の重要性を認識し、どうしたらリーダーとしての発達課題をリーダー候補が越えていけるのかを考え、そのための場を準備し、現場を説得して、必要な経験ができるようにお膳立てをしていくプロデューサーなのです」(p.26-27)

人事部=場のプロデューサー、という考えがしっくりきた。

出所:守島基博『人材マネジメント入門』日経文庫

連携、変革、育成

2014年07月01日 | 組織・職場の学習
最近の研究にて、「他部門と連携した経験」「変革した経験」「育成した経験」が、マネジャーの成長を促す、ということがわかった。つまり、「連携」「変革」「育成」の経験を積むほど、マネジャーは成長する、といえる。

某セミナーで、この「連携」「変革」「育成」の要素を結びつけた興味深い事例を聞くことができた。

ある企業の営業部門では、自分の所属とは異なる部署の若手社員が抱えている営業上の問題に対して、革新的な営業提案をするためのアドバイスしているらしい。

つまり、他部署のメンバーという点において「連携」の要素が、革新的な提案という点で「変革」の要素が、さらに、若手を指導するという意味で「育成」の要素が組み込まれている。

シンプルな試みではあるが、マネジャーを育成する上で有効な手法であるように感じた。

この事例は営業部門内に限定したものだが、さまざまな部門のメンバーを集めて似たような試みをすることも可能である。

「守」と「破・離」の同時並行

2014年05月29日 | 組織・職場の学習
書家で現代アーティストでもある柿沼康二さんが作品を生み出す方法が面白い。

ます、自分を極限に追い込むために10kmのランニングに臨む。その走り方が半端ではなく、めちゃくちゃに走るらしい。走っている間に、何度も頭のなかで書をイメージする。これを「空書」という。そしてアトリエに戻ると、爆音で流すロックをBGMに、走りながら繰り返した「空書」を実践するのだ。

ここまでは現代アーティストらしい作品の作り方である。

しかし、柿沼さんは同時に、空海に代表される書聖たちが残した古典をひたすら書き写す「臨書」を、一日平均5時間、長いときには10時間以上毎日繰り返す。

先人に学びながら、自身のオリジナルな作品づくりに励む姿は、まさに「守・破・離」である。しかし、普通は「守」の段階が終わって「破・離」に移ると、「守」の修行はしないものなのに、「守」と「破・離」を同時並行しているところが一味違うと思った。

最近、この「臨書」のあり方も「字として残る”形”ではなく、その形を生み出した”動き”を、より追求するようになった」という。

先人が残した作品の背後にある「思い」を学び、それを自分の作品づくりのエネルギーにしている柿沼さんの姿に、伝統芸術と現代芸術の融合者を見た。

出所:Partner 2014 June,p11-12.


自分を殺して仕える人々

2014年05月16日 | 組織・職場の学習
引き続き『華岡青洲の妻』より。

世界初の全身麻酔による手術を成功させた青洲の業績は、シカゴにある国際外科学会でも讃えられているという。

この業績をサポートしたのが、妻・加恵と母・於継であることはすでに述べたとおりである。

しかし、本書を読むと、嫁にも行かずに華岡家に仕えた小姑の「於勝」と「小陸」の働きが大きいことがわかる。

京都で修行している青洲の学費を稼ぐために二人は機織りをし、青洲が帰ってきてからは家事を一手に引き受けた。そして、二人とも若くして癌のため亡くなってしまう。まさに「滅私」の精神で兄を支えたのだ。

大きな業績を上げる人の背後には、自分を殺して仕える人々が存在する、と感じた。

出所:有吉佐和子『華岡青洲の妻』新潮文庫

人を生き生きとさせる組織

2014年05月09日 | 組織・職場の学習
神戸工業高校の教師であった南悟先生によれば、夜間定時制高校には、不登校やひきこもりの生徒を立ち直させる力があるという。

なぜか?

それは、次のような特色があるからだ。

働きながら学ぶ学校であること
多様な生徒が学んでいること
③一人ひとりの個性が尊重されていること
④生徒たちによる励ましや支えあう関係があること

これらは、良い職場の条件でもあることがわかる。

学校でも会社でも、人を生き生きとさせる組織の特徴は同じなのだな、と感じた。

出所:南悟『生きていくための短歌』岩波ジュニア新書

ヘゲモニー国家の3条件

2014年05月02日 | 組織・職場の学習
川北稔さんの『イギリス 繁栄のあとさき』によれば、ヘゲモニー国家の条件は3つある。それは、

生産(農業と鉱工業)
商業(流通)
金融

である。これらすべての次元で圧倒的優位を確立した状態が本当のヘゲモニー国家といえるそうだ。そして、それぞれの優位は、この順に成立し、この順に崩れていくらしい。

これら3つの条件のうち、日本は生産に強みがあるものの、商業や金融面では強いとはいえない。国の成長を考えたとき、「ものづくり」だけにこだわっていてよいのか、と少し不安になった。日本流ものづくりを進化させて、流通や金融と融合していく必要性を感じた。


目鼻のない人形

2014年04月23日 | 組織・職場の学習
堤純子さんの『アーミッシュ』を読んでいて、少し驚いたことがある。

それは、アーミッシュが作る人形には、目鼻がつけられていないこと

なぜか?

「これは、神の前で特定の個人の存在を際立たせることを避けるものであるだけでなく、偶像礼拝を戒める聖書の記述に沿ったものである」(p.198-199)

個性を発揮することは神様の御心でもあると思うので、少し違和感を感じたが、よく考えてみると、特定の個人が際立ちすぎることの弊害もある。アーミッシュの生活を見ると、「支え合い」をとても重視しているのだが、個人が際立ち過ぎることで、この支え合いが崩れていくのかもしれない。

この本を読み、自分の価値観の根底がゆさぶられた。

出所:堤純子『アーミッシュ』未知谷