goo blog サービス終了のお知らせ 

ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

PDCAと経験学習

2013年11月19日 | 組織・職場の学習
先日、QC活動が盛んなIT企業の改善発表会を見学する機会に恵まれた。

QCの7つ道具を駆使した改善活動は大変有効だなと感じた。

と同時に、やはりPDCAサイクルと経験学習サイクルは違うこともわかった。PDCAの場合には、計画(P)に対する評価(C)が行われるわけだが、発表を聞いていると、「目標値と実績値の差」や「改善点」のみに着目した「狭い振り返り」になっていたからだ。

スキルには「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3種類があるが、QCの場合には、テクニカルスキルの改善にばかり焦点が当てられ、ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルの学びが引き出されていない傾向が見られた。

QC活動は定量的に物事を捉えるという利点があるがゆえに、定量的に捉えられない側面に目が行かないという問題も含んでいるようである。

PDCAサイクルを活性化するためには、評価(C)のステップにおける「振り返りの幅」を広げる必要がある、と思った。




忙しいから振り返る

2013年11月13日 | 組織・職場の学習
職場学習を促すために「振り返り」は欠かせない。

しかし、現場からは「忙しくて振り返っている時間がない」という声を聞くことが多い。

先日、「忙しい中で、いかに業務を振り返るか」というテーマで企業の方々と議論していたとき、「いかに忙しさを解消すべきか、というテーマで振り返ればよいのではないか」という意見があった。

これは素晴らしい発想の転換である。

忙しい現場というのは、仕事の仕方が非効率だったり、仕事の配分が悪かったりするために、個々人が疲弊し、悪循環に陥るケースが多いように思う。

どっぷりと仕事に埋没していると「忙しくて振り返る時間なんかないよ」という考えになりがちだが、「なんでこんなに忙しいのだろう」と一歩引いて振り返ることで、悪循環から抜け出せるきっかけが見つかるかもしれない。

忙しいからこそ振り返り、仕事の仕方を見つめ直す必要がある、と感じた。

PDCAサイクルと経験学習サイクル

2013年11月05日 | 組織・職場の学習
先日、QC活動が盛んなIT企業のマネジャーの方々とお話する機会があった。そのとき、次のような質問をしてみた。

「PDCAサイクルと経験学習サイクルは、どこが違うと思いますか?」

ご存じの通り、PDCAとはP(計画)→D(実行)→C(評価)→A(改善)であり、経験学習サイクルとは、経験→振り返り→教訓の引き出し→次回への応用である。まったく同じではないが、Dと経験、Cと振り返り、Aと教訓の引き出し、Pと次回への応用が対応する形になっている。

マネジャーさんから返ってきた答えは次の通り。

「PDCAサイクルだと、P(計画)にこだわり過ぎて、振り返りのときに、計画と実績のギャップのみに目がいきがちです。仕事ではさまざまなことが起きていて、いろいろな学びがあるにもかかわらず、それらを無視してしまうことが多いですね」

PDCAの利点は、計画を意識することだが、それゆえに振り返りが浅くなることがある、ということらしい。これは貴重な知見である。

PDCAサイクルと経験学習サイクルをミックスすると職場の学習が促進される、といえるかもしれない。


東洋流の教育と「守・破・離」

2013年10月10日 | 組織・職場の学習
谷崎潤一郎さんは、『陰翳礼讃』の中で、東洋の教育について次のように述べている。

「一般に東洋流の教育の方針と云うものは、西洋流とは反対に、出来るだけ個性を殺すことにあったのではないか。たとえば文学藝術にしても、われわれの理想とするところは前人未踏踏の新しき美を独創することにあるのでなく、古えの詩聖や歌聖が至り得た境地へ、自分も到達することにあった」(p.135-136)

確かに、日本人の好きな「守・破・離」の考え方においても、まず先人の教えを学び「守」が重視されているような気がする。

しかし、変化の激しい現在、先人の教えを打ち破り、自分なりの色を出す「破」や「離」が求められている。難しいのは、一生懸命「守」をしているうちに、「破」や「離」ができなくなってしまうのではないか、ということ。

そうならないためには、先生や先輩や上司から学ぶ「守」の段階においても、「破」や「離」を意識させることが大切な気がする。

五嶋みどりさんを育てた五嶋節さんは、バイオリンの稽古について次のように述べている。

「大事なことは、「サル真似」を通して自分で疑問を持つこと、「サル真似」の結果、自分で考えるようになることだと思います。(中略)練習を繰り返しやることも大切ではあるのですが、なぜここはどうしてもうまく弾けないのか、こうしたほうがいいのか、ああしたほうがいいのか、どうしたらいいのかと、自分で疑問を持ち、考え、試行錯誤して練習し、わからないときは先生に質問すべきです」(五嶋節『「天才」の育て方』講談社現代新書、p.84-85)

要は、疑問を持ち、考えながら先人の教えを吸収する姿勢を持っていれば、「破」や「離」の段階になっても困らないといえるのかもしれない。

「優しさ」や「技術志向」を定義する

2013年09月10日 | 組織・職場の学習
大手エンジニアリング会社・千代田化工建設会長の久保田隆氏は、今後成長していくにあたり、社内における「ものの考え方」を変えていく必要がなあると述べている。

「例えば、当社には「社員に優しい」という文化があり、なかなか厳格な成果主義の導入に踏み切れないままだ。社員にとって居心地のよい状態が、”甘さ”を生んでいるのではないか。それが、業績に反映されているのではないか。また、「技術を重視するプロフェッショナル集団である」という伝統がある故に、プラントの建設現場ではついオーバースペック(過剰仕様)になってしまいがちだ。よかれとおもってコストをかければ、そのぶん、もうけが減る」

つまり、「社員に優しい」が「甘さ」につながり、「技術重視」が「過剰仕様」につながっているという指摘である。これは、日本企業全体について言えることではないだろうか。

ただし、久保田氏も指摘するように、下手に変革して社員のモチベーションが下がってしまっては元も子もない。良いところを残しながら、いかに企業文化を進化させていくか。ここが難しいところである。

一つの方法は、「社員に優しい」や「技術重視」を明確に定義することではないか。定義の中から、「甘さ」や「過剰仕様」を排除することが大切である。その上で、企業成長や個人成長に必要な「優しさ」や「技術志向」を残すような制度設計をする必要があると感じた。

出所:週刊ダイヤモンド2013年8月31日号p.109

伝え方の工夫

2013年09月04日 | 組織・職場の学習
元中日ドラゴンズ監督の落合博満氏は、スポーツ界における体罰と暴力の根底にあるのは、指導者のコミュニケーションについての考え方にあると指摘している。

一生懸命教えているのに伝わらない。そんなとき「教わる側に問題がある」と考えている指導者が多いことに問題があるという。落合氏は「選手が一定の結果を残すまで根気よく伝え続ける努力をしなければ、指導者が責任を果たしたことにならない」と述べている。

では、どうすればいいのか?

「そこで私は、監督時代にこんな方法を用いた。選手に何か話をしたら、直後にこう言ってみる。「俺が今、何を話したかオウム返しでもいいから言ってみてくれ。俺が何を言おうとしたのか、今度は俺に伝えてみてくれ」

この方法には二つの効果があるらしい。一つは、監督と話すときには必ずこう言われるので、選手が集中して話を聞くようになること。もう一つは、選手の理解度を把握でき、伝わっていないときにはもう一度話すことができること。

落合氏がすごいのは、こうしたコミュニケーションを繰り返すことで、「選手別に伝え方リスト」を作ったことだ。伝えることにこれだけこだわったからこそ、優れた成績を上げることができたのだろう。

日本は以心伝心を重んじるハイコンテクストカルチャーであるため、どうしても伝え方が下手である。落合氏の伝え方の工夫は、育成の際に役に立つように思った。

出所:週刊ダイヤモンド2013年8月31日号、p.69.



琴線に触れるコミュニケーション

2013年08月27日 | 組織・職場の学習
元キリンビール社長の加藤壹康氏は、現場の人たちの心を動かし、共感してもらえるように語りかけることこそ、リーダーの仕事であると述べている。

「高い目標や厳しい計画を掲げることは必要です。しかし、考え方や夢といったものを現場と共有できなければ、厳しい計画は単に厳しいだけに終わり、絵に描いた餅になりかねません。大きなことを達成するには、現場の人たちの琴線に触れるようなコミュニケーションが不可欠です」

現場の人たちの琴線、という言葉が響いた。

もちろん、語る力だけあっても、リーダーに実行力が伴っていないとすぐにメッキが剥がれてしまうだろう。しかし、現場を動かす力がないと、組織は動かない。

そのためには、組織のリーダーが、現場の人たちと本音で議論する機会が必要になるように思った。

出所:日経ビジネス2013年7月15日号、p.78.




短時間正社員制度

2013年07月24日 | 組織・職場の学習
正規と非正規社員の格差を是正し、女性の就業率をアップさせるための切り札として「短時間正社員」がある。

短時間正社員とは、1日あるいは1週間当たりの労働時間は短いものの、正社員と同じ責任や役割を負い、同じ処遇や評価の方法が適用される社員のことである。

しかし、この制度を導入すると、短時間正社員が帰った後に、その仕事を肩代わりする正社員にしわ寄せが来て、人間関係がぎくしゃくすることがあるという。

こうした問題を解消するためには、「上司の仕事量管理の能力」を高めることと、チームで仕事を共有する「ワークシェアリングのノウハウ」が必要になる。

やり方次第では、短時間正社員制度の導入によって、日本企業の職場の生産性を高めることができるように思った。

出所:日経ビジネス2013年7月15日号、p.78-81.


なくてはならない存在

2013年07月17日 | 組織・職場の学習
温度調節用ポンプで世界70%、日本で100%のシェアを持つ日本オイルポンプは、高シェアを握っているがゆえに、ぬるま湯的な雰囲気があったという。

そんな中、2009年に社長となった中尾真人氏が打ち出したビジョンは「顧客にとって、この会社でなければならない存在になる」ということだった。

2010年2月には、世の中にまったくない製品の開発がスタートし、2011年5月には、体積が従来の100分の2、フィルターのメンテナンスが不用な「ボルテックス」という商品が完成する。

このケースを読み、聖隷浜松病院の元総看護婦長の高嶋妙子氏が次のようにおっしゃっていたのを思い出した。

「人材育成のエキスは「自分をなくてはならない存在にする」という考えを、その人のなかに響くようにすることです」(松尾睦『学習する病院組織』同文舘出版、p.111)

個人が成長する上でも「自分でなければならない存在になっているか?」「自分しかできないことをしているか?」という問いが大切になるな、と感じた。

出所:日経ビジネス2013年5月27日号p.78-82.