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没頭させる雰囲気

福沢諭吉が、大阪の適塾(緒方洪庵の塾)で書生をしていたときのエピソード。

塾はバンカラの気風だったため、塾生はいろいろと暴れまくっていたようだが、勉強はとことんしていたという

あるとき諭吉が自分の枕を探していたのだが、見つからない。

なぜか?

「これまで倉屋敷に一年ばかりいたがついぞ枕をしたことがない、というのは時は何時でも構わぬ、ほとんど昼夜の区別はない、日が暮れたからといって寝ようとも思わずしきりに書を読んでいる。読書にくたびれ眠くなって来れば、机の上に突っ伏して眠るか、あるいは床の間の床側を枕にして眠るか、ついぞ本当に蒲団を敷いて夜具を掛けて枕して寝るなどということはただの一度もしたことがない。その時に初めて自分で気がついて、「なるほど枕はないはずだ、これまで枕をして寝たことがなかったから」と始めて気がつきました。これでもたいてい趣が分かりましょう。これは私一人が別段に勉強生でも何でもない、同窓生はたいてい皆そんなもので、およそ勉強ということについては実にこの上にしようはないという程に勉強していました」(p.88-89)

勉強が面白くてしょうがなく、没頭していたのだろう。優れた人やる気のある人が集まると、塾全体がそうした雰囲気になることがわかる。これは優れた企業にも当てはまるような気がする。

人材を輩出する組織というのは、仕事や勉強に没頭させ、夢中にさせる雰囲気を持っているように感じた。

出所:福沢諭吉(土橋俊一・校訂校注)『福翁自伝』講談社学術文庫

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