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私たちも注目していました。今年の議長国として、どういう意気込みでそれに取り組むのかを、ぜひ聞いてみたかったというのが最大の理由です。

2024-01-01 | 東アジアの文化と歴史を学ぶ会

ラオス――東アジアの平和、核廃絶で協力、不発弾問題で連携

初訪問で温かい歓迎――AOIP成功、核兵器禁止条約推進で協力を合意

 次の訪問国はラオスでした。日本共産党の委員長としては初めて訪問となりました。

 志位 今回ラオスを訪問した理由は二つあります。一つは、ラオスは今年、ASEAN議長国になります。これまでラオスはASEANの議長国を2回務めています。前回は2016年で、南シナ海の問題など難しい問題がありましたが、見事に会議を成功に導いたことに私たちも注目していました。今年の議長国として、どういう意気込みでそれに取り組むのかを、ぜひ聞いてみたかったというのが最大の理由です。同時に、この訪問はラオス人民革命党からの公式の招待にもとづくものでした。同党から繰り返し招待があったのですが、なかなか行く機会がつくれなかった。今回こそぜひ訪問してみたいと考えました。

 最初にラオス人民革命党のトンルン・シスリット書記長・国家主席と党首会談を行いました。先方からは、日本共産党の100年を超える歴史へのお祝いがのべられ、私の訪問に対して歴史的だとの評価をいただきました。非常に温かい歓迎を受けました。

 初対面ということもあり、両党関係の今後について話し合いをしました。日本共産党とラオス人民革命党との関係は、両党の指導者レベルとしては、宮本顕治書記長とカイソン書記長が1966年に会談を行っています。以来、アメリカに対するラオス独立戦争への連帯のたたかいなど交流の歴史があります。

 そうした経過を踏まえつつ、私は、両党の伝統的な友好と協力の関係を「21世紀にふさわしい新たな高みに引き上げたい」とし、いくつかの提案を行いました。双方は、▽両党関係の発展によって日本・ラオスの両国・両国民の友好関係をより豊かにしていく、▽世界と地域の平和のためにAOIPの成功や「核兵器のない世界」など一致点での協力を進めていく、▽国際問題での意見交換や党活動の交流のために両党間に効果的な対話のメカニズムをつくっていく――などの点で一致しました。

 私が、AOIPを成功に導くために「両党の協力をいっそう強化したい」と提案しますと、トンルン書記長は、AOIPについて、「ラオスは常に紛争の平和的解決を望み、包摂的に対話し協力することを望んでいます。来年(2024年)1月1日から議長国を務めるけれども、ASEANの中心性と団結を強化するイニシアチブを継続して諸問題に対処し、力強く、粘り強く平和を維持していきたい」とのべました。

 AOIPを協力して推進していくことが、党首レベルで合意になったことは、とても重要だと思います。私たちが事前に渡した資料などもよく読んでくれていて、日本共産党が日本政府に対して行った提言(外交ビジョン)を評価するともいわれました。

 核兵器については、ラオスは常に平和を望んでおり、核兵器禁止を進めることが重要だと、これも協力して進めることで一致しました。

 これが全体の流れです。会談は終始、和やかで、本当に心が通い合う温かい会談となりました。

 ラオスの政権党と、党首レベルで、AOIPの推進、核兵器禁止条約の推進――この二つの大きな課題での協力を合意したのは、非常に重要だと思います。

不発弾問題での対話で信頼がぐっと深まった

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(写真)ラオス人民革命党のトンルン・シスリット書記長(ラオス国家主席)と会談する志位委員長=2023年12月23日、ビエンチャンのラオス人民革命党中央委員会

 不発弾問題でも連携が確認されました。

 志位 はい。トンルン書記長との会談では、不発弾処理の問題が重要な話題になりました。あらためて調べてみますと、ラオスにとってこの問題は非常に深刻です。ラオスは1人当たり世界で最大の爆弾が投下された国と言われています。たいへんに心が痛むのは「戦後」――アメリカとの独立戦争に勝利した1975年以降も2万人もの被害者が出ていることです。

 私が不発弾処理の問題について、ラオスは1人当たり最大の爆弾が投下された国と言われていますというと、トンルン書記長は、身を乗り出してきて、「その通りです」という。当時ラオスは人口が300万人だったが、そこに300万トンもの爆弾が投下され、1人当たり1トンだと。その3分の1は不発弾となり、今でも埋まっている。戦争は終わっているのに子どもたちが犠牲になっているというのです。

 ラオスは、クラスター爆弾禁止条約(2010年発効)に、ノルウェーの次に署名しており、同条約第1回締約国会議はビエンチャン(ラオスの首都)で開かれています。この条約では、クラスター爆弾の禁止とともに、被害者を支援することが明記され、核兵器禁止条約のモデルになった条約ともいわれます。日本もクラスター爆弾禁止条約には参加しています。私は、こうした事実をのべて、クラスター爆弾の不発弾処理問題を解決して、被害者を支援することを、両国の共同事業として取り組んでいきたいと話すとともに、日本共産党としてこの問題を重視して、「しんぶん赤旗」でも継続的に記事を載せてきたと伝えました。

 そうしますとトンルン書記長は、自身が労働大臣を務めていた時期に、不発弾処理の機関をつくって、この問題に取り組んできたというのです。さらにラオスがクラスター爆弾禁止条約の第1回締約国会議を開催したさいに、自身が外務大臣として締約国会議の議長を務めたということでした。この問題に一貫して取り組んでこられた方が、書記長をやっているのです。トンルン書記長は、自身が副首相だった2000年代初頭に日本を訪問する機会があった、そのときに日本共産党の議員が「実のある支援を」と提起した、日本共産党の支援に感謝したいとのべました。

 この対話で、トンルン書記長との信頼関係がぐっと深まり、連携して解決をということを確認しました。この問題での協力の強化という約束を果たしたいと思います。

ASEANは「平等と相互尊重の精神」で運営されている

 ラオスでも外務省と意見交換をされました。

 志位 外務省を訪ねたのは、ASEANとAOIPについてのラオス政府の取り組みについて、さらに聞きたいと考えたからです。そのことを先方に伝えたら、外務省の会合をセットしてくれました。私たちは、トンファン外務副大臣と会談しました。

 今年の議長国としての意気込みが伝わってくる会談でしたが、この会談で、私が、「インドネシアの元外務大臣のハッサンさんとジャカルタで会談した際に、『ASEANでは上下関係はなくコンセンサスでやっています。それは強みです』と言われました。この点についてラオスから見てどうでしょうか」と率直に尋ねました。

 そうしましたらトンファンさんからは、ASEANは、政治、経済、宗教など多様であり、インドネシアは2億人以上の大国、ブルネイは100万人に満たない小さな国だ、経済力もシンガポール、ブルネイは発展しているが、ラオス、カンボジア、ミャンマーは後発途上国だ、しかしASEANには平等と相互尊重の精神がある、重要課題では常に対話しているという答えが返ってきました。

 「平等と相互尊重の精神」で運営されている。インドネシアのハッサン元外相が言ったことと同じことがラオスからも言われたということは、とても大事なことです。インドネシアは大国の側ですが、インドネシアの側だけが言っているのではなくて、小さな国であるラオスもそれをよく理解し、評価しているということがよく分かりました。

 ここにASEANの強みの一つがあるということですね。

 志位 その通りです。インドネシアとラオスでこの強みが共有されていることが、よく分かりました。

闘いをへて勝ち取った独立、美しい自然と文化遺産、優しい穏やかな歓迎

 初訪問でのラオスの印象はどうでしたか。

 志位 ラオスでは、二つの歴史博物館を訪問しました。その展示物を見ていくと、やはり大変な闘いを経て独立を勝ち取ったことがよく分かります。フランス植民地主義者のひどい残虐行為があった。その次に来たのが、「ジャパニーズ・ファシスト(日本の独裁主義者)」だったと展示してありました。日本軍国主義が去った後も、フランス植民地主義者が戻ってきて、残虐行為があって、それを打ち破ったあとにアメリカ帝国主義者がやってきた。それらをすべて打ち破って独立と自由を勝ち取った。こういう点では、ベトナムと同じ歴史を持つわけです。

 ラオスもまた多様な国です。そのことを私たちが案内されたタート・ルアン寺院でも感じました。タート・ルアンという金色の仏塔があって、回廊で囲んである。その寺院に訪問し、「宗教は何ですか」と聞いたら「基本は仏教です」と。2000年前からあるお寺で、仏教が基本で、キリスト教も加わって、そこにヒンドゥー教も加わっているというのです。一つの寺院でも、三つの宗教が共存した寺院というのが、とても印象深かった。

 バンビエンという、ビエンチャン郊外にある観光地にも案内されました。石灰岩でできたラオス特有のとても美しい山と川の風景です。たいへんに美しい自然がたくさんあって、2000年前からの寺院も含めて文化遺産もたくさんあって、ラオスの人々の優しい穏やかな歓迎を受けたというのが印象です。党代表団のみんなが「心があらわれるようだね」という感想を言い合いました。これが初訪問の印象です。

ベトナム――両党が協力して東アジアの平和構築を

外交学院での講演と質疑――東アジアの平和構築のための「二重の努力」

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(写真)ベトナム外交学院で志位委員長の講演をきく学生たち=2023年12月25日、ハノイ

 最後の訪問国は、長い友好関係をもつベトナムです。志位委員長にとっては、5年ぶり4度目の訪問となりましたが、今回はどうでしたか。

 志位 最初に行ったのがベトナム外交学院での講演と質疑でした。外交官などを養成している学院ですが、女性が非常に多かったのが印象的でした。「日本語を勉強している方は何人ですか」と聞いたら、第1外国語にしている人が80人、第2外国語が100人と言っていましたから、相当日本語熱は高いと感じました。私の講演も身近に受け止めてもらったと思います。

 講演は、(1)半世紀以上に及ぶ日本共産党とベトナム共産党の友好と連帯の歴史、(2)東南アジアでの平和の激動と「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)、(3)AOIP成功のために――日本共産党としての取り組み、(4)世界の構造変化が生きた力を発揮――平和と社会進歩のために手を携え前にすすもう――という柱で行いました(詳報、本紙12月27日付)。

 ここでは、「AOIP実現のために日本がASEANと協力してできることは」という質問がありました。この質問への回答では、私たちの考え方を発展させた点がありました。

 私は、日本ができることは二つあるとして、その一つは、日本は東アジアサミット(EAS)の公式の参加国の一つだから、このEASを対話の場として活用・強化して発展させることが大事だとのべました。同時にもう一つあるとして、北東アジアの固有の諸懸案の解決に積極的に取り組むことだと答えました。ハッサンさんから指摘があったように、北東アジアには“対話の習慣”が不足している、“対話の習慣”が当たり前になるようにしたいとのべ、そのための試みとして、(1)「日中両国関係の前向きの打開のための提言」を紹介するとともに、(2)朝鮮半島問題の外交的解決、(3)歴史問題の理性的解決、これらの課題に取り組み、さらに前進のためのアイデアを探求する必要があるとのべました。

 つまり日本は東アジアの平和構築のために「二重の努力」を行うべきだということを強調しました。すなわちASEANとともにEASを発展させ、AOIPを成功させるための努力を続けることと同時に、北東アジアの固有の諸懸案を外交によって解決する――これらの両面で“対話の習慣”をつくっていく努力を払うことが必要だ、東南アジアで発展している“対話の習慣”を北東アジアにも広げたい、こういう新しい整理をしたのです。

 インドネシアでの一連の対話を生かして考えてみますと、わが党の「外交ビジョン」では、「二重の努力」のうちの最初の側面をのべたものです。ASEANと協力してAOIPを成功させる、そして、東アジアの全体を平和の地域にしていく、これが基本なのですが、北東アジアには独自の諸懸案があります。その諸懸案について「ASEANまかせ」というわけにはいきません。北東アジアの諸懸案は、北東アジアで解決する努力をやりながら、AOIPを成功させる。EASの場もそういう諸懸案の解決のために役立てていくというような姿勢がいると思うのです。「ASEAN頼み」で東アジアの平和がつくれるわけではなく、北東アジアでは北東アジアの独自の努力がいる――「二重の努力」が必要だと思います。

 講演について、「しんぶん赤旗」ハノイ支局が取材した感想が届いていますので、紹介します。

 日本語学科の1年生――「日本共産党とベトナム共産党の過去、現在、未来をよく知る機会となり、私にとって外交学院で今後4年間勉強する上で記憶に残る、また大きな意味を持つ契機となりました」

 日本語学科2年生――「参加できてとても良かった。志位委員長が話されたオリエンテーション、考え方、政策、さらに政治外交用語も含めて、とても実践的かつ有益でした。また日本共産党とベトナム共産党との関係の歴史と連帯、協力の関係を知ることができたこともたいへんに勉強になりました」

 若いみなさんからのこうした感想はとてもうれしいものでした。

東アジアの平和構築のための「模索と探求」を率直に伝えた

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(写真)ベトナム共産党のチュオン・ティ・マイ書記局常務(右から3人目)と会談する志位委員長(左から3人目)=2023年12月25日、ハノイ

 ベトナムではどのような意見交換が行われたのですか。

 志位 ベトナムでは、2日目(26日)のグエン・フー・チョン書記長との党首会談がもちろん最も重要な会談でした。その前の1日目(25日)にチュオン・ティ・マイ書記局常務との会談を行い、2日目にグエン・フー・チョン書記長との会談の前に、レ・ホアイ・チュン対外委員長との会談を行いました。この三つの会談は連動していて、二つの会談の報告は、グエン・フー・チョン書記長に伝えられていました。ですから一連の会談で私たちが行った発言と、ベトナム側の発言について、まとめて話します。

 ベトナムでは、インドネシアとラオス訪問を通じて、私たちが得た認識の発展も踏まえて、私たちの行っている模索と探求について率直に話しました。私は、日本共産党として東アジアの平和構築について、模索と探求の途上にあります――「模索と探求」という言葉を率直に言って、私たちの考えを伝え、意見交換を行いました。

 私は、要旨、次のような発言を行いました。

 ――5年前にベトナムを訪問した際には、日本共産党として「北東アジア平和協力構想」を提唱しているということを話しました。ASEANのような平和の地域協力の枠組みを北東アジアにもつくりたいという構想です。この構想は、当時、関係国から評価をいただきました。5年前の会談のさいに、ベトナムからも評価をいただきました。しかし、その後の情勢の展開は、北東アジアにそうした平和の新しい枠組みをすぐにつくることは難しいということを示しました。

 ――そういうもとで2019年にASEAN首脳会議でAOIPが採択されました。こういう新しい動きも受けて、わが党として、新しい枠組みをつくるのではなくて、東アジアサミット(EAS)という現にある枠組みを活用し発展させることが現実的だと考えました。そして「外交ビジョン」を2022年1月に提唱しました。いま日本政府がやるべきは、軍事的対応の強化でなく、ASEANと手を携えて、AOIPを共通の目標に据え、東アジアサミットを活用・強化して、東アジアを戦争の心配のない平和の地域にしていくための憲法9条を生かした平和外交にこそある――これがわが党が提唱している「外交ビジョン」です。

 ――今回の3カ国訪問をつうじて、北東アジアと東南アジアの違いは何だろうかと考えました。ASEANでは“対話の習慣”が当たり前のように根付いているが、北東アジアにはそれが欠如している。それはなぜかと考えてみると、北東アジアには東南アジアと比較して次のような困難があると思います。第一に、日米・米韓という軍事同盟、米軍基地が存在している。第二に、米中の覇権争いの最前線に立たされている。第三に、朝鮮半島で戦争状態が終結していない。第四に、日本の過去の侵略戦争と植民地支配に対する反省の欠如という問題があります。

 ――そういう状況にくわえてもう一つ問題があります。北東アジアにはそれだけの難しい問題があるもとで日本政府がどうなっているのかという問題です。グエン・フー・チョン書記長は、この3カ月の間に、バイデン米大統領と習近平中国主席の両方をハノイに迎えて首脳会談を行っています。そのさいにチョン書記長が、バイデン大統領、習近平主席の双方に対して、自主独立と全方位外交というベトナム外交の基本方針とともに「四つのノー」(軍事同盟を結ばず、第三国に対抗するために他国と結託せず、外国軍基地の設置を認めず、武力行使・威嚇をせず)を表明したことに注目しています。そういうベトナムがASEANで重要な地位を占めていることは、ASEANの中心性を保障する重要な柱となっていると思います。ところが日本政府がどうなっているかと考えた場合に、「四つのノー」ではなくて、「四つのイエス」になっている。軍事同盟イエス、ブロック政治イエス、軍事基地イエス、武力の行使・威嚇イエス――「専守防衛」を投げ捨てた大軍拡をやっています。

 ――そういう状況を変えるためにわが党は闘っていますが、日本政府がそういう状況にあるもとで、日本共産党としての独自の努力が必要だと考え、この間、努力をしてきました。「日中両国関係の前向きの打開のための提言」、朝鮮半島問題の外交的解決、歴史問題の理性的解決のために独自の努力をしてきました。

 日中関係については、日中両国政府には両国関係の前向きの打開にむけた三つの「共通の土台」――(1)2008年に交わされた「互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」という首脳合意、(2)2014年に交わされた尖閣諸島等東シナ海問題の緊張状態を「対話と協議」によって解決するという合意、(3)東アジアの平和の枠組みとしてAOIPを日中両国政府が支持している――があることに着目して、これらの「共通の土台」を生かして対話によって前に進もうという提案を行い、日中双方から肯定的な受け止めが寄せられました。

 北朝鮮問題については、弾道ミサイル発射には厳しく反対しますが、解決方法は対話しかありません。2002年の日朝平壌宣言に基づいて、核、ミサイル、拉致、過去の清算を包括的解決して国交正常化をはかることが唯一の理性的な解決の道です。その点で、最近、日朝間で接触があったということが報じられており、そういう機会も捉えて、対話のルートの確立することが大事だと主張しています。

 歴史問題については、日本政府が過去の植民地支配に対する真剣な反省と誠実な姿勢を欠いていることが、徴用工問題、日本軍「慰安婦」の問題などの解決の妨げとなっており、友好関係を築く障害となっており、解決していく必要があります。

 ――AOIPを成功させるために両党が協力していきたい。同時に、北東アジアに“対話の習慣”をつくっていくために、わが党として独自の努力をしていくつもりなので、この点でも協力していきたい。

 これが私がベトナム側に伝えた東アジアの平和構築についてのわが党の考えです。

東アジアの平和構築のために国民的・市民的運動を

 ベトナム側の発言はどうでしたか。

 志位 AOIPについてはその成功のために両党で協力していこうということが合意になりました。グエン・フー・チョン書記長との党首会談でも合意になりました。両党で協力してAOIPの成功のための取り組みを推進しようということをベトナム共産党とも党首レベルで合意したというのは、非常に重要だと思います。

 それからベトナム側から、北東アジアと東南アジアの比較はとても興味深く、深みがあるものだが、同時に共通点もあるということが強調されました。それは北東アジアでも東南アジアでも、それぞれの地域の諸民族は、みんな平和を望んでいるということだ、民衆の力は最も重要であり、民衆は平和を望んでいるんだから、民衆が協力して平和をつくることが重要だ――こういう反応がベトナム側から返ってきました。

 これは、私たちが今回の訪問で一貫して強調してきたこととも共通する提起です。すなわち、AOIP成功のためには、各国の政府、政党、市民社会が協力してやっていこうということと共鳴してくる、とても私たちと響き合う反応が返ってきました。

 もう一つベトナム側から返ってきたのは、日本共産党の「日中両国関係の前向きの打開のための提言」について、日中関係の改善に対する努力を高く評価する、ベトナムも日中の友好を支持しているということでした。わが党の「日中提言」は、ASEANの事務局次長にも歓迎されましたが、ベトナムからも歓迎の声が寄せられたことはうれしいことでした。

 とくに、東アジアの平和構築のために、政府と政党と市民社会が協力して取り組んでいくという方向で一致したことは、重要だと思います。核兵器禁止条約も各国政府と被爆者を先頭とする市民社会の共同の産物でした。東アジアに平和をつくろうと思ったら、国民的運動、市民的運動が必要になります。時間がかかったとしてもそれをやる必要はあるのではないかと話したら、賛意を得られました。

 日本共産党とベトナム共産党との両党関係については、ハイレベルの交流、理論交流、国際フォーラムでの協力、国際部門間での協力――これらの4分野で関係を発展させてきたし、今後ももっと発展させようということで合意しました。

枯葉剤被害者支援、ベトナム人労働者の権利の問題について

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(写真)ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長(右)と握手する志位和夫委員長=2023年12月26日、ハノイ(VNA=ベトナム通信社提供)

 代表団は、枯葉剤被害者支援センターを訪問しました。ベトナム人労働者の問題も話し合われたと聞きます。

 志位 枯葉剤被害者支援と在日ベトナム人労働者の問題でも話し合いました。

 ベトナム人労働者の問題では、実は5年前のベトナム訪問のときに、グエン・フー・チョン書記長に、この問題に取り組んでいくという約束をしました。その後、日本共産党国会議員団がこの問題を重視して取り組んでおり、調べてみたら2019年以降で37回も国会質問で取り上げているんです。不当な大企業による雇い止めの是正を指導させたり、コロナ危機のもとで実習生への給付金支給など、生活支援が行き渡るよう要求するなど、わが党の国会議員団は頑張っています。そういう話を先方に伝えました。これには強い感謝がのべられました。

 そもそも技能実習制度の「国際貢献」という建前が成り立たなくなっており、実態は、低賃金と重労働などで人手不足が深刻な分野への外国人労働者の活用が意図されており、技能実習制度は廃止し、日本で働くことを希望する外国人に労働者としての権利を保障する制度へと、抜本的な見直しを求めていることをチョン書記長にも直接伝えました。

 またマイ書記局常務との会談では、田村副委員長が、外個人労働者の権利を守る自身の国会質問の話もくわしく紹介し、たいへんに気持ちが通じ合う会談となりました。田村さんとマイさんの間では、歓迎夕食会の席で、ジェンダー問題が真剣に議論されました。ベトナムでは男女間の賃金格差がほとんどないわけですが、それを解消していった過程をマイさんが詳しく話し、日本ではこういう遅れがあると田村さんが話し、ジェンダー平等に対するベトナムの努力が伝わってきました。

 枯葉剤の被害者の問題では、私たちは、ハノイの郊外にある枯葉剤被害者支援センターを訪問しました。この被害が今なお続いているという深刻な実態があります。枯葉剤の被害者は現在300万人いるとのことでした。直接浴びた人(1世)とともに、被害者2世、3世、4世まで問題になっているとのことでした。4世だけで3万人いるとのことでした。2世、3世はと聞くと、実態をつかめていないという話です。

 支援センターではリハビリをやったり、重度の人は特別のケアをしたりしています。私たちはセンターに贈り物を届けたいと思い、何が不足していますかと聞いたら、扇風機が不足しているという話だったので、ささやかなものですが24台を買ってお持ちしました。そうしましたら、「贈呈式」をしていただいて、みなさんが集まってくれました。一人ひとりと握手しました。そこで私は、あいさつを求められて、「いまだに世代を超えて、被害が続いていることに胸がつぶれる思いです。日本の原水爆禁止世界大会では枯葉剤被害者への支援を呼びかけて募金などに取り組み、加害国と加害企業に謝罪と補償を求める運動を行っています。ベトナムで『ヒバクシャ国際署名』を100万近く集めてくれたことも忘れません。両国民が力をあわせて、『核兵器のない世界』、大量破壊兵器、残虐兵器のない世界をつくりましょう」と話しました。

 ラオスでは不発弾という形で、ベトナムでは枯葉剤という形で、なお戦争の被害が続いていることを私たちは決して忘れてはなりません。

グエン・フー・チョン書記長との会談――「桜の花と共産主義者の心」が話題に

 代表団の最後の日程は、グエン・フー・チョン書記長との会談でした。

 志位 グエン・フー・チョン書記長との党首会談は、いまのべたことの全体が確認された会談となりました。チョン書記長は、「日本共産党代表団の活動が素晴らしい成果を上げたことを、私はもう報告を受けています」と語り、国の発展と国民の幸福のために平和と自主独立の旗をベトナムは掲げているとのべ、東アジアと世界の平和のための両党の協力を促進することに賛成の意を示しました。AOIPを両党が協力して成功に導く、「核兵器のない世界」をつくる――この二つの大きな問題での両党の協力が確認されました。両党関係については、さきほど紹介したいくつかの点での発展が確認されました。

 1994年にグエン・フー・チョンさんがベトナム共産党代表団の一員として来日し、私が団長をつとめた日本共産党代表団と数日間にわたる長時間の会談をしたことが話題になりました。ソ連崩壊直後の困難な時期で、主に国際問題で意見交換を行いました。そのときに、チョンさんは「しんぶん赤旗」の早朝配達にも参加しました。チョンさんは、帰国して、「桜の花と共産主義者の心」というたいへん文学的なエッセーを、党の機関紙である「ニャンザン」に寄稿しました。とても感動的な文章だったので、翻訳して全文「しんぶん赤旗」に載せたことがありました。そんな話題にもチョン書記長はふれて、ほんとうに心が通い合う、温かい会談となりました。

 こうしてベトナム訪問は、今回の訪問の集大成になりました。私たちの「外交ビジョン」のイメージが豊かに膨らみ、それを先方も受け止めてくれたという訪問になりました。

訪問の成果、これをどう生かしていくか

 本当に大きな成果があった訪問でしたが、これをどう生かしていくのですか。

 志位 ASEANの国ぐにの立場から考えてみますと、ASEANの域外の政党で、これだけASEANが提唱しているAOIPについて熱心に推進を訴えている党は他にないと思います。そういう点では、ASEANの側が行っている努力と探求にも響き、会談した方がた、党との関係で、強い絆がつくれた、また絆が豊かになったのではないかと思います。

 党の方針との関係でいえば、2020年の党大会で党の綱領にASEANの重要性を位置付けたこと、この間、「外交ビジョン」や「日中提言」を発表してきたこと、そういう一連の外交方針が、その中心になっているASEANの国ぐにに行って、深く響き合い、さらに、響くだけではなくて私たちの認識が豊かに発展する、方針も発展するという訪問になりました。それは非常に大きな成果と言えると思いますし、今後の日本の闘いにも生かしたいと思います。

 それから、私が、日本共産党代表団の団長として、ベトナムとラオスで政権党の党首と会談し、党首間で、東アジアの平和構築に協力して取り組もう、協力してAOIPを推進しようということを確認したことは、現実の国際政治を前に動かすことに貢献するものであり、非常に重要な出来事となったと思います。

 これを、日本国民の中でいかに世論にしていくかという課題に、ぜひ取り組みたいと思います。東アジアの平和構築というテーマは、ともすると難しくとられがちですが、今回の訪問をつうじて、うんとやさしい言葉で、「“対話の習慣”を東南アジアから北東アジアにも広げよう」というように一言で言えるようになったのではないでしょうか。このことも今後のいろいろな取り組みに生かしていきたいと思っています。

 お話ししてきたように、北東アジアは、東南アジアに比べて、“対話の習慣”という点で不足があり、それを阻む難しい問題もあります。しかし考えてみれば、東南アジアも、ベトナム侵略戦争のときには、「敵対と対立」の地域だったわけです。それが長い期間をかけての対話の積み重ねで平和の共同体に変わっていったのです。ですから、北東アジアでも、平和を願う各国国民の力に依拠するならば現状を変えることはできると確信します。ASEANと協力しつつ、北東アジアにも“対話の習慣”を根付かせ、平和な地域にしていくための努力を、ステップ・バイ・ステップで――一歩一歩進めたいと決意しています。

 最後に、3カ国の歴訪をつうじて、日本共産党の外交方針への評価と期待、日本共産党そのものの発展と成功への期待が、それぞれの立場から寄せられました。これらの期待にこたえて、今年、目前に迫った第29回党大会を成功させ、つよく大きな党をつくり、総選挙での躍進に道を開く年にしていくために力をつくす決意です。

 長時間、ありがとうございました。

代表団の構成

 志位和夫委員長・衆院議員(団長)/田村智子副委員長・参院議員(副団長)/緒方靖夫副委員長・国際委員会責任者/小林俊哉国際委員会事務局次長/井上歩国際委員会局員

 

 


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