2025年5月27日(火)
国外で戦死想定の協定
遺体修復などで協力
陸自と葬儀業界 本紙入手
米軍がかかわる戦争に自衛隊が参戦する「存立危機事態」の際に出動を命じられた陸上自衛隊員が戦死した場合に備えて、葬祭業の業界団体と陸自が2月に結んだ協定書を26日、本紙は入手しました。協定は、遺体の安置・保存や棺(ひつぎ)などの確保のほか遺体の修復や防腐処理に関する講義などで協力する内容で、海外での戦死者を想定したものとなっています。(矢野昌弘)
![]() (写真)全日本葬祭業協同組合連合会と陸上自衛隊が締結した「連携・協力に関する協定書」 |
本紙の情報公開請求で防衛省が協定の内容を開示しました。陸自と全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)の「連携・協力に関する協定」。2月20日に締結していました。「各種災害」「武力攻撃事態」「存立危機事態が発生した場合に備え」るとしています。
具体的には、「必要な資材(納体袋、棺、保冷資材等)の確保」「遺族対応」「殉職隊員の葬儀に関する相談」「遺体の安置・保管」「還送」で協力するとなっています。「遺体・遺品の引き渡し」「遺体の修復における遺族対応」「エンバーミング(遺体の防腐処理)」に関する「講義の実施」を全葬連に協力してもらう条項もあります。
協定の内容からは、隊員が戦死・殉職した際に陸自内で対応できるよう態勢づくりを進める意図がうかがわれます。協定には「(陸自が行う)訓練等における専門的知見からの助言等について協力」という条項もあり、「訓練等」で戦死者に備えるものとなっています。
東京都内の葬儀業者は「エンバーミングとは、ご遺体の血液を抜いて、防腐剤を注入し、ご遺体が腐敗しないようにする処置です。海外の旅行先で亡くなった方を飛行機で運ぶ際、必ずと言っていいほど行われています。エンバーミングには解剖室のような設備が必要だ」と言います。
協定について、この業者は「業者に頼まず陸自が自前でエンバーミングを行うと読めます。国外で死者が出ることに備えたものではないか」と指摘します。
本紙の取材に、防衛省は全葬連と協定を結んでいるのは陸自だけで、海上自衛隊や航空自衛隊は協定を結んでいないとしています。